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1 担任プレゼンテーションが続く4月
勝負の4月になりました。よく「松森先生だったら余裕でしょう」と言われるのですが、とんでもありません。私は、4月が大好きです。しかし、苦しくて苦しくて、悩みっぱなしの4月でもあるのです。常に緊張状態にあるのです。
以前、訳あって、4月1日時点で教師をやめていた時がありました。4月1日の朝、起きると何とも言えない、悲しい気持ちになったことを覚えています。幸い、4月10日ごろから教師として復活し、担任としても再度着任できました。本当に幸せで、大変な状況だったのですが、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。その時は、以下のような状況でした。
・担任として引き継いだ次の日が初の参観日、保護者会(学級懇談会)
・その次の日が、家庭訪問
その時は、楽しさが苦しさを上回っていたので、そうは感じませんでしたが、よくよく考えると、担任としては非常に不利な条件でした。
不利な条件とは…
・他県から赴任して数日しかたっていない
・担任を引き継いで1日しかたっていない
・学級経営、授業経営として大切な「黄金の3日間」が終わっている
つまり、「よそ者」が来て、「訳の分からないことをしている」という状況に保護者の方々には映ったのだと思います。教室環境も前担任のままでした。「そのままでもいいよ」と周りのみんなは言ってくれました。しかし、担任として任された以上、妥協はしたくありませんでした。最初の参観授業、保護者会。これは、担任のプレゼンテーションの場です。担任を保護者に売り込むのです。とにかく4月は、全てのことに手が抜けません。
今回は、保護者会に向けての心構えとアイデアを紹介したいと思います。
2 保護者会に向けての心構え
まず、保護者会を、それ単独として考えてはいけません。始業式から全てがつながっているのです。始業式から、いろいろな布石を打っていると思います。ここで言う布石とは、連絡帳や電話でのやりとり、保護者が子どもから聞く担任の話、そして、学級経営、授業そのもの、宿題の出し方等です。保護者は全てを受け入れて、「今度の先生はどんな先生かしら?」と、まずは参観授業を見に来られるのです。そして、保護者会の担任の話で、「安心感」を得ようとするのです。「安心感」になるか「不安感」になるかは、担任の今までの努力によるものです。私は4月の最初の目標を「参観授業・保護者会で全ての保護者に安心感を得てもらう」としています。そうすることで、その日までに様々な布石が考えられ、実際に行動できるはずです。おそらく、持ち上がりでない限り、初の参観授業で担任と保護者は顔を合わせるはずです。初対面が「がっかり」だったら後の学級経営もうまくはいきません。「担任の先生に会うのが楽しみ」と思ってもらいながら、全員の保護者に会っていただけるようにすることが大切です。
もう少し分かりやすく言うと、始業式から伝えていた担任の考えを、参観授業で保護者全員に具体的に見せ、保護者会で「今までのまとめとして説明する」ということです。まとめとして、保護者会で担任のプレゼンテーションをするという感じです。
3 学級懇談会のアイデア
まずは教室環境を整える
まだまだ不完全かもしれませんが、教室の環境を整えて「小ぎれい」にしておきます。担任の机の上、机回りもです。担任の机の上には、何も無い方がよいです。それだけで、「デキるな」と思われます。しかし、机の上ではないけれど、子どもたちのノートを見ていて作業途中のものや、作品にコメントを入れようとした途中のものを棚の上などに、何気なく置いておきます。保護者は、見ていないようで見ています。「きちんと見ている」ということを、嫌みなくアピールするのです(笑)。掲示物などは、まだまだ全てではありませんが、担任の思いのあふれるものを1つは掲示します。
最初から全部出してしまうと、後が苦労します。少しずつアピールが鉄則です。
担任の思い、考えを伝える
始業式から、色々な方法で思いや考えを伝えてきました。同じ事になってもいいので、担任の考えを、簡単にレジュメ化しておきます。私は、イラスト化することもあります。それを保護者会の時に配り、授業参観の内容を例に取りながら、説明をします。今まで、伝えているのに、「まだ伝えるの?」と思われがちですが、そこが甘いのです。全員の保護者が学級通信などを読んでくれていると思ったら大間違いです。悪気はないのですが、いろいろなことがありご覧になれない方もたくさんいらっしゃいます。そして、詳しく説明してほしい方もいらっしゃいます。4月はとにかく「丁寧に」です。
学級懇談会の日が「初対面」ではない
前述しましたが、保護者会や授業参観の日に「初対面」は避けたいものです。気楽なうれしい気持ちで参観や保護者会に来ていただくと、懇談会も楽しい雰囲気になります。そのため、初の参観授業や保護者会の前の日までに、以下のことをします。
まずは、「はじめまして」「がんばっていましたよ」の電話をする
始業式の日を含め、3日〜4日で全員に電話をかけます。もちろん、苦情ではなく、「はじめまして」と「よいこと」を伝えるためです。今度の先生は、よいことも電話をするということを印象づけます。保護者はびっくりしますが、明るい声で、「先生でうれしいです。」「これから楽しみです」という声が返ってきます。
電話の後は、連絡帳に付箋攻撃
電話で終わりではありません。次は、小さな付箋に、以下のように書いて連絡帳に貼って、保護者に見ていただきます。
(例)「お世話になります。先日はお電話で失礼いたしました。○年生になって、まだわずかですが、やる気の勢いが衰えません。参観日、楽しみにしていてくださいね」
これを、放課後一人ずつ書いておいて、次の日に「お家の人に見せてね」と言いながら、連絡帳に貼らせます。これなら、学校で時間を裂いて作業しなくてすみます。もちろん一人一人ちがった「ほめ言葉」であることがベストです。
以上2つの実践は、子どもたちを毎日よく見ていないとできません。そして、「よいところを探そう」と思っていないと見えてきません。少々大変かとは思いますが、4月にはぜひやっておきたいことです。ここまでしても、まだ足りないくらいだと私は思っています。
さらに詳しくは、私の単著、『学級経営サポートブックス 子どもと保護者の心をわしづかむ!デキる教師の目配り・気配り・思いやり』をお読み下されば幸いです。