大野桂の算数熱中授業づくり
わかった! 楽しい! そんな子どもの声が教室に響く算数の授業をつくりたい。 発問、板書から子どもの意見の取り上げ方まで、学級全員を熱中させる工夫やアイデアを大公開!!
大野桂の算数熱中授業づくり(10)
本当に1になるの?(4年「分数」)
【板書】でしかける授業づくり
筑波大学附属小学校教諭大野 桂
2014/3/25 掲載

熱中授業づくりのポイント

  1. 板書で子どもの視覚に訴える
  2. 視覚的効果をしかけとして、同値分数を発見・創造させる

 4年「分数」で扱う「大きさの等しい分数」は、これまで学習した整数や小数では扱うことのなかった、数が違っても同じ大きさを表すことができる数であり、その考えを活用することで、「異分母分数の加減」などの問題が解決できるというよさもあります。
 そんな魅力ある分数との出会いだからこそ、そのよさを子どもが感得できるように授業を構成したいものです。そのためには、授業に発見的・創造的学習を取り入れることが重要です。
図 そこで、この授業では、「ブロックを組み合わせて1をつくろう」という活動を仕組み、1となる理由を考えさせる中で、図から発見的に同値分数を見いだしたり、それを基に数値から同値分数をつくり出したりすることができるようにしました。扱うブロックは上のようなものです(赤は黄色を2等分したうちの1つ、青は黄色を3等分したうちの1つ)。

板書で子どもの視覚に訴える

 この授業の最大の特徴は、板書を通して子どもの視覚に訴えることです。普通は式で求めたものや、その理由の説明のために図で表現させますが、最初に黒板に図(ブロック)を提示し、それに基づいて式で説明させるのです。

図黄色い正六角形のブロックの大きさを1とします。さらに、ここに赤と青のブロックがあります。このブロックを使って、1にすることはできますか?
できる。赤は黄色のブロックの半分だから、2つ組み合わせればできます。
本当? じゃあ組み合わせてみてください。…確かに1になりましたね。ところで、「半分」ってどういうこと?
式
0.5
図なるほど。そのように数にすると、図ではなく式でも1になることを説明することができるかな?
式
0.5+0.5=1
すばらしい! 式でも1になることを説明することができましたね。では、青のブロックではどうですか?
図青のブロックは、黄色のブロックの式の大きさだから、たぶん3つ組み合わせればできます。
じゃあ組み合わせてみましょう。…確かに1になりましたね。これも式で説明することができますか?
式

視覚的効果をしかけとして、同値分数を発見・創造させる

 さて、赤と青のブロックを組み合わせると、「式足りない」か「式余る」ことを視覚にとらえさせることができます。それをしかけとして、同値分数を発見し、創造していく場を設定しました。

赤と青の2色の組み合わせでは1はつくれないのかな?
図できない。空洞ができちゃう。
じゃあ、もう1つ青をつければいいじゃん。
そうすると余っちゃう。
でも、青を半分に切ればできる。
本当? じゃあ切って貼ってみて。…本当だ1になった。ところで青の半分って数にすると何?
式
どうして?
黄色の1を6等分したものと同じ大きさだから。
なるほど。じゃあ、式にするとどうなる?
式
図えっ、式なの? 分母が違うのに、本当に1になることが説明できますか?
できるよ。さっき言った、“1を6等分すると式”を使えばいい。
どういうこと?

基準をつくるということ。
式式を基準にすると式になるでしょ。
式式を基準にすれば式になるということ。
そうすると式は、式になる。

一番小さい分数に基準をそろえればいいのか。
なるほど、「基準をそろえる」か。いいアイデアだね。

 この授業は、「板書で子どもの視覚に訴える」をテーマに行いました。
 板書は、子どもの発言をただ記録したり、教師が教えたいことをまとめたりするだけのものではありません。この授業のように、図などを効果的に用いて子どもの視覚に訴え、気付きを引き出すようなことも可能です。
 黒板をいかに使うか。授業をつくるうえで欠かせない視点の1つです。

図

大野 桂おおの けい

1976年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。私立高等学校、東京都公立中学校、東京学芸大学附属世田谷小学校を経て、2010年より筑波大学附属小学校教諭。
日本数学教育学会編集部幹事、教育出版教科書『小学算数』編集委員、全国算数授業研究会常任理事、使える授業ベーシック研究会常任理事、『算数授業研究』編集委員。
筑波大学附属小学校算数部ブログ

(構成:矢口)
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