大野桂の算数熱中授業づくり
わかった! 楽しい! そんな子どもの声が教室に響く算数の授業をつくりたい。 発問、板書から子どもの意見の取り上げ方まで、学級全員を熱中させる工夫やアイデアを大公開!!
大野桂の算数熱中授業づくり(9)
(分数)×(分数)はまだ習ってない…(6年「分数×分数」)
自然に既習のアイデアと関連付けられる【課題提示】と【発問】
筑波大学附属小学校教諭大野 桂
2014/2/25 掲載

熱中授業づくりのポイント

  1. 自然に既習のアイデアと関連付けられる課題提示発問
  2. 既習のアイデアと新たな問題の解決の関連付け

 この授業のねらいは、 (分数)×(分数)の計算の仕方を理解させることです。しかし、ここで言う「(分数)×(分数)の計算の仕方を理解させる」とは、式という計算方法を単に覚えさせることではなく,計算の仕方をつくり上げていくプロセスを重視しています。そこに「既習事項を活用して、筋道立てて考える」という算数の学習の重要な価値が存在するからです。
 そこでこの授業では、小数のかけ算の際に用いた「整数に直して計算する」というアイデアを引き出し、それを活用することで分数のかけ算の計算の仕方をつくり上げていきます。

1 自然に既習のアイデアと関連付けられる課題提示発問

 まず、あえて(分数)×(分数)の式だけを提示し、答えを尋ねます。そして、それが未習の計算であることを確認したうえで、分数を小数に変換できることに気付かせ、積を求めていきます。解決する際に用いる「整数に直して計算する」というアイデアが分数のかけ算でも活用できるため、ていねいに進めていきます。

式の答えはなんですか?
(分数)×(分数)はまだ習ってない…。
困りましたね。でも、分数で計算できないなら…?
あっ、この分数は小数に直せる!
本当ですね。では、小数のかけ算はどう計算するんでしたっけ?
まずは整数に直して…
式
そうでしたね。整数に直して計算するんでしたね。

2 既習のアイデアと新たな問題の解決の関連付け

 小数に直すことができる分数で導入したことで、その方法はすでに板書に示されています。そこで、次に分数を小数にできない場合にはどうするかを考えていきます。その中で、先に用いた「整数に直して計算する」というアイデアが活用できないかということに気付かせます。

でも、小数にできない分数だったら、分数のまま計算しないといけないよね?
小数と同じように、整数に直せばいいんじゃない?
なるほど。じゃあ、式はどうすれば整数にできるかな?
4をかければ整数になる。
式
そうか、だったら式5をかければいい。
式
そうすると…
式
あれっ…? 答えが9になっちゃった。

 
 ここからは、商分数式を活用することで積を求めるとともに、式の計算形式になることを明らかにしていきます。

かけて整数にしたから答えが大きくなっちゃんたんだよ。
かけた分の4×5は、わって元に戻さないといけない。
式
式を使って分数の形にするとこうなります。
式
あっ、分母同士、分子同士かける形になった!

 以上のように、小数と分数を関連付けることで、解決の見通しをもつことができ、演繹的に分数のかけ算公式を見いだすことができました。
直面した未知の問題に子どもが向き合えるかどうかは、“解決の見通し”がカギになります。この場面に限らず、「似たような問題はなかったか。そのときの解決方法が使えるのではないか」と考えられれば、未知の問題でも解決の見通しをもつことができます。
 このように、算数の授業を組み立てる際には、目の前の問題を解決させるだけでなく、「問題を解決する手段を手に入れさせ、それをいかに使えるようにするか」ということを念頭に置くことが重要です。

大野 桂おおの けい

1976年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。私立高等学校、東京都公立中学校、東京学芸大学附属世田谷小学校を経て、2010年より筑波大学附属小学校教諭。
日本数学教育学会編集部幹事、教育出版教科書『小学算数』編集委員、全国算数授業研究会常任理事、使える授業ベーシック研究会常任理事、『算数授業研究』編集委員。
筑波大学附属小学校算数部ブログ

(構成:矢口)
コメントの受付は終了しました。