大野桂の算数熱中授業づくり
わかった! 楽しい! そんな子どもの声が教室に響く算数の授業をつくりたい。 発問、板書から子どもの意見の取り上げ方まで、学級全員を熱中させる工夫やアイデアを大公開!!
大野桂の算数熱中授業づくり(8)
●はいくつあるかな?(4年「小数×整数」)
自然な流れの授業をつくる【発問】と【課題提示】
筑波大学附属小学校教諭大野 桂
2014/1/25 掲載

熱中授業づくりのポイント

  1. 自然と本時のねらいに向かうことができる発問
  2. 子どもの思考を切らない課題提示

 小数×整数の導入場面では、筆算形式の獲得につながるように指導を行うのが通常です。しかし、いったん形式を教えると、思考パターンが固定化され、子どもは「かけ算は筆算すればよい」と機械的に判断するようになってしまいます。これでは、発想豊かに計算の仕方を工夫する力は育たず、さらには、計算の仕方を工夫するうえで必要な数感覚もはぐくまれません。
 そこで、多様な発想をしやすい数値の計算「2.5×12」で小数×整数の乗法の導入をすることにしました。その中で、いきなり計算の仕方を問うのではなく、自然な流れの中で形式を自ら獲得できるように、発問や課題提示を工夫しました。

1 自然と本時のねらいに向かうことができる発問

 計算の仕方を獲得させる授業では、当然のように「計算の仕方を考えよう」という発問されることが少なくありません。しかし、この「計算の仕方を考えよう」という投げかけは、子どもにとってやるべきことが明確でない発問で、見通しの立たない子は何もできないということにもなりかねません。
 そこでこの授業では、自然と本時のねらいに向かうことができるように、まず「はいくつあるかな?」と操作活動を促す発問を行い、そこから本時のめあてに直結する「工夫しての個数を求めてみよう」という発問につなげました。

図

はいくつあるかな?
一番下の列のが欠けてる…
そうなんです。実は一番下の列は半分になっています。
2つで1つになるということだね。
じゃあ、工夫しての個数を求めてみよう。図は線を引いたり、切ったりしても構いません。

○筆算形式につながる方法

図

 2.5×12
=2.5×10+2.5×2
=25+5

○整数化を目的とした方法(上3つは等積変形、一番下は倍積変形)

図

 2.5×12
=(2.5×2)×6
=5×6

図

 2.5×12
=(2.5×4)×3
=10×3

図

 2.5×12
=(2.5×2)×12÷2
=5×6

図

 2.5×12
=(2.5×2)×12÷2
=5×12÷2

すばらしい! どれも計算が整数でできるようになりました。

2 子どもの思考を切らない課題提示

 続いて、がさらに欠け、0.3を表現しているものを提示します。先のアイデアを活用することで個数を求めることができないかを問う中で、筆算形式へとつながる新たなアイデアを引き出していきます。

図

この場合はいくつになるかな?
一番下の列のがさっきより欠けてる。
そうなんです。実は一番下の列のは0.3になっています。さっき考えた計算のアイデアを使って、個数を求める方法を考えよう。
分けられた2の方に小数が出てくるけど、10と2に分けるアイデアはやっぱり使える。

図

 2.3×12
=2.3×10+2.3×2
=23+4.6

倍のアイデアも使える。10倍しちゃえばいい。

図

 2.3×12
=(2.3×10)×12÷10
=23×12÷10
=276÷10

 前回も述べたとおり、私はどの子も思考が切れず、自然な流れの中で形式を自ら獲得できる授業をつくりたいと考えています。「教師が教えやすい」ではなく、「子どもが学びやすい」、そんな授業づくりを始めてみませんか?

大野 桂おおの けい

1976年東京都生まれ。東京学芸大学卒業。私立高等学校、東京都公立中学校、東京学芸大学附属世田谷小学校を経て、2010年より筑波大学附属小学校教諭。
日本数学教育学会編集部幹事、教育出版教科書『小学算数』編集委員、全国算数授業研究会常任理事、使える授業ベーシック研究会常任理事、『算数授業研究』編集委員。
筑波大学附属小学校算数部ブログ

(構成:矢口)
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