近年、主にゲームなどのエンターテイメント分野で脚光を浴びているVR(バーチャルリアリティー)技術ですが、VRが持つ特性を教育の現場でも活用していこうという動きが世界中で見られます。
今回は具体的にどういった取り組みがあるのか、またそれらはどのような効果が望めるのかをご紹介していきます。
■立体物を自在に操る
アメリカのカリフォルニア州に本拠を置くzSpace社が製造、販売するzSpaceは、VRを映し出すディスプレイです。専用のペンとグラスを使うことで、目の前に映し出された立体物を自由自在に掴んだり回したりといった操作が行えます。ホームページではコンテンツの一例として人体の内臓や精密機器などが紹介されています。これらは実物を扱いたくても、その機会が中々なかったり取り扱いが難しかったりするものですが、VR上では壊す心配などもなく気兼ねなく動かせ、理解を深める手助けになります。
5月16日から18日に東京のビッグサイトで行われた教育ITソリューションEXPOでは、京都の花園中学高等学校と株式会社加藤文明社印刷が、zSpaceを使った学習コンテンツ の提案を行っていました。会場で実演されていたのは数学の立体に関するコンテンツで、目の前に浮き上がった立方体を動かし、任意の断面で図を切ったり展開したりといった作業が行えるものでした。数学では、紙面に描かれた立体の裏側や展開図を想像することを苦手とする生徒も多いですが、このコンテンツを使えば立体の構成がより実感を伴って理解できそうだと感じました。
■離れた場所にいる人々と机を並べる
アイルランドのImmersive VR Education社が提供するEngageというサービスもユニークです。このサービスは、仮想空間に設定された教室に、クラスの一員として参加することができます。実際には別々の場所にいる複数の先生や同級生が、CGで作られたアバターとして映し出され、あたかも同じ教室の中で大勢の学生と一緒に授業を受けているような感覚が持てます。
また、教室内に設定された黒板に、自分自身が手を動かして文字を書き込むといったこともできます。これまでも例えばパソコンで、授業をしている動画を見て勉強するということはできましたが、Engageは疑似的ではありますが「授業を受ける」という体感を得られることが大きな特徴です。
■世界の名所を社会科見学
Googleが提供する Google Expeditionsは、VR技術を利用し、先生の引率のもと、クラスのみんなで世界中の有名な場所を疑似的に社会科見学することができるサービスです。ホームページでは、ドバイの超高層ビルのブルジュ・ハリファへ行き、大興奮するアメリカの中学生たちが紹介されていますが、これは中学生でなくとも大人でも興奮してしまいそうです。
他にも南極や国際宇宙ステーションといった場所へ訪れることも可能で、今後もその数は増えていくそうです。疑似的にであっても実際に行ってみたことがあるという感覚は、その場所に対する印象や記憶をより強めてくれるのではないでしょうか。
■職業訓練もVRで
学校教育だけでなく、職業訓練の1つの手段としてVRを取り入れる取り組みも行われています。株式会社デジタルナレッジでは、接客や医療行為など、様々な職業に応じた訓練ができるコンテンツを提供しています。実際の職に就いている人々にとって効果的な訓練となるだけでなく、今後どういった職業につきたいかを悩む学生にとっても、各職種を経験することで将来の判断材料にできそうです。
VRを教育に活用する様々な取り組みをご紹介しました。実際にVRを教育に取り入れることは、これまでの教材では得ることの難しかった学習効果が得られる一方で、専用の設備や機器を整える必要があるといったハードルもあります。VRが今後どれだけ学校現場で浸透していくのかは未知数な部分もありますが、体感に訴えるVRは、効果的に組み込めれば大いに学習の手助けとなってくれるのではないでしょうか。
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- 任意
- 2018/10/12 13:51:17
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