QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり
教科化時代が来た! 新しい道徳授業の創り方を解説します。
QA解説 「特別の教科 道徳」の授業づくり(13)
「特別の教科 道徳」の授業開発
―高学年の道徳科のポイントは何か―
筑波大学附属小学校教諭加藤 宣行
2016/6/17 掲載
  • 「特別の教科 道徳」の授業づくり
  • 道徳

A先生

 前回は低学年の道徳授業のポイントを教えていただきました。当然のことながら、高学年も気になります。私は6年生を担任していますが、どのような点が重要になってくるのでしょうか。

加藤先生からのアドバイス

 高学年になると、抽象的な思考が可能となり、話し合いが深まることも事実ですが、逆に抽象的な話し合いが可能だからこそ、空中戦に終始してしまうことも多くなります。高学年の特徴には、次のようなものがあります。
 ・抽象的な思考が可能となる
 ・みえないもの(書かれていないもの)をみることができるようになる
 ・いい意味でもそうでない意味でも「我慢強く」なる
 ・問題意識をもち、主体的に学習に臨むことができる
 ・「先読み」「建前トーク」が達者になる
 つまり、うまくハマれば面白い話し合いができる反面、へたをすると、つまらないと思っていても表面上はそれを出さずに1時間をやり過ごすことができてしまうので、教師も子どもも「消化試合」に陥ってしまう危険性があるということです。低学年だったら正直に「わからない」といったり、そぶりを見て「乗っていないな」と判断したりすることができます。しかし高学年の場合は、物わかりのよい子を演じて取り繕ってしまったり、それらしい「答え」を先読みして「本音と建前」を使い分けてしまったりできるということです。

解説

道徳科としての高学年授業ポイント
@本気にさせる
 「おや? どういうことだろう?」という疑問や思考のずれを意図的に生じさせ、考えたい、解き明かしたいと思わせる。
 例えば、導入で「友達だから」について考えさせます。子どもたちは、
 ・気が合う
 ・協力できる
 ・一緒にいて安心
 などと、いろいろなことをいうでしょう。
 頃合いを見て、次のように突っ込みます。
 「たしかに気が合うとうれしいですよね。では、気が合わない人とは友達になれませんか。そもそも、気が合う合わないって、どういうことでしょう。例えば、AさんとBさんは友達だとします。休み時間に、Aさんがドッジボールをしたいといいました。Bさんは鉄棒をしたかったので、別々に過ごすことにしました。これは気が合っていないですか。では、Bさんが自分の気持ちを我慢して、Aさんに合わせてドッジボールをしてあげたら、2人は気が合っていることになりますか。さて、どちらが友達としてレベルが高いでしょう」
 どうでしょうか? 即答できますか? 大人でも考え込んでしまいますよね。子どもたちは、ああでもない、こうでもないと侃々諤々になることでしょう。

A日頃の体験から抱えている問題意識を、授業場面で生かす
 年を重ねるにつれ、日常の中での悩みや葛藤が増えてくると思います。そのようなもやもやした思いを解明するために、道徳の授業を活用するという発想です。例えば、こんな子がいました。
 「この間、低学年の子と遊んだとき、わざと力を抜いて相手を勝たせてあげたことがありました。これって、相手に対してうそをついたことになるのかなあ。失礼だったのかなあ。先生、どう思いますか?」6年生のHさんの日記です。
 子どもたちは、正直ということはどういうことなのか、相手に対して礼儀正しくするとはどういうことなのかなど、内容項目にかかわる問題意識をたくさん抱えて生活しています。それらに応えてあげられるような授業ができれば、きっと道徳の授業を必要と感じ、これからも自らの生き方を考えるために、道徳の時間を活用しようと思うことでしょう。
 ここで重要なことは、子どもたちが抱えた問題意識を、何らかの形で「解き明かした」、「わかった、そういうことか」と思わせられるような着地点を見出すということです。それがあってこそ、子どもたちは道徳の授業に必要感ややりがいを抱くことでしょう。

  • 子どもたちが「おや? どういうことだかわからなくなった」「もっと考えたい」と思わせるような投げかけを教師がして、刺激を与える。
  • 子どもたち自身がもっている問題意識を把握しておき、それを授業場面で取り上げて、考える必然性や必要感を与える。

加藤 宣行かとう のぶゆき

東京生まれ。
神奈川県津久井地区公立小学校教諭を経て、現在、筑波大学附属小学校(道徳部)教諭。
筑波大学・淑徳大学講師。

(構成:茅野)
特集 「特別の教科 道徳」
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