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数学B問題の出題傾向と指導改善のカギ―全国学力テスト
kyoikujin
2009/5/2 掲載

 去る4月21日に、第3回目となる、文科省による全国学力・学習状況調査が実施された。今回は、これまで国語や小学校算数に比べて結果が芳しくない数学B問題(主として「活用」に関する問題)について、その出題傾向や指導改善の方途を探った。

多岐にわたる実生活と関連させた問題

 数学B問題の作成理念は、“知識・技能等を実生活の様々な場面に活用する力や、様々な課題解決のための構想を立て実践し評価・改善する力などにかかわる内容”とされており、出題形式としては特に、“実生活の様々な場面”を意識したものが多い。
 “様々な場面”という言葉通り、実生活と関連させた問題の場面設定や内容は非常に多岐にわたっており、一定の傾向を見いだすことは難しい。中には、平成19年度(PDF)の大問1「セットメニュー」のように、1つの大問の中に複数の領域にまたがる問題が混在しているものもみられ、教科書の並びに沿って進められる授業だけでは、このような問題に対応し得る力を育てることは困難だろう。
 各領域の内容を総合したり日常の事象や他教科等での学習に関連付けたりするなどして見いだした課題を解決する「課題学習」をどのように指導の中に位置付けていくかが、改善のカギとなりそうだ。

文字式による証明と図形の証明は必出

 一方で、出題に一定の傾向が認められる問題もある。
 数学B問題は、平成19年度は6問、平成20年度(PDF)平成21年度(PDF)はともに5問の大問が出題されているが、いずれの年度も、数の性質にかかわる文字式による証明問題と、図形の証明問題が、それぞれ1問ずつ必ず出題されている。
 文字式による証明問題も図形の証明問題も、出題内容はオーソドックスなものが多いが、例えば、「連続する3つの自然数の和は3の倍数になる」ことに関する説明を基に、「連続する5つの自然数の和は5の倍数になる」ことを説明させる(平成19年度大問2「連続する自然数の和」)など、出題形式には「活用」を意識させるような工夫が施されているものもある。いずれにしても、出題内容がある程度特定されているため、実生活と関連させた問題と比べると、指導改善のポイントは焦点化しやすいと言えそうだ。
 国立教育政策研究所による、『平成21年度全国学力・学習状況調査解説資料 中学校数学』(PDF)では、新しい学習指導要領でも重視されている、「筋道立てて説明し伝え合う活動」の充実などの指導の方途が示唆されているが、実際にこのような問題に対して正確な解答を導き出せるようにするためには、ある程度問題練習を積ませ、問題形式のパターンに通じさせることなども重要なカギとなるだろう。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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