- 著者インタビュー
- 学級経営
(上條) 私の学級経営について、「マジック」と言われることがあるとお伝えしました。マジックには、種やしかけがあります。それが、特別支援教育の視点でした。読んでいただくと、これらの種やしかけが「特別」ではないことにお気づきになると思います。ご自身の学級経営と重なる部分は学級経営の根拠として、重ならない部分は個性として捉えていただき、ご自身の学級経営にアレンジしていただけるとうれしいです。
(赤坂) 前著では、学習とは本来、人とのかかわりの中で起こってくるという学術知見に基づき、個の学びと集団での学びの連動のあり方をそれぞれの実践家に語っていただきました。本書では、前著では述べられなかった1年間の流れが示されました。4月から1年間、その時々に応じて活用していただけます。
(上條) 子どもたちに良質な学びを提供することを考えたとき、他者の存在が不可欠だと思います。他者と一緒に学ぶことで、教え合ったり、学び合ったりしながら学びを深化させていくからです。そこには良好な人間関係があることが前提条件になります。それを整えてくれるのが「学級経営」なのだと思っています。
(赤坂) 個の学びは、環境との相互作用です。他者との関係性の質と量に応じて子どもの学びは変わります。上條先生が、個の力を引き出すために環境としての学級をどうつくっているのかを読み取っていただければと思います。
(上條) それは、「We canの体験」をイメージしながら「I canの発見」をコーディネートしていき、「I canの“再”発見」をイメージしながら「We canの体験」を充実させていくことだと思います。このように、少し先の学びを見通し、さらには社会に出たときに求められる資質・能力をイメージして実践していくことがポイントです。
(赤坂) Q2で述べた「個の学びは環境との相互作用」の具体的な姿が、「I canの発見」「We canの体験」です。わたしたちの中で学習することを見据えながら、自分の可能性を見つけていくという上條実践の基本的な姿勢が、これらの言葉に込められています。それぞれの学びを別々な営みと捉えないことがポイントといえるでしょう。
(上條) 4つのカードは、独立して使うこともあれば、重ねて使うこともあります。その場に応じて使っていくのがよいと考えます。大切なのは、教師が意図を持って戦略的にカードを切っていくことだと考えています。「意図」の中には子どもの成長を願う教師の思いがあり、「戦略」には教師の専門性が必要です。要するに、教師が教育のプロとして主体的に子どもたちに関わっていくことが重要なのだと思います。
(赤坂) 4枚のカードの話は、上條実践の本質を示す重要な部分だと捉えています。皆さんもトランプをするときに「カードを切る」と思いますが、その時は、判断力や主体性、そして何よりもチャレンジ精神が問われることでしょう。教室で起こることには筋書きがありませんから、100%大丈夫ということはありません。実践をするということは、リスクを踏まえて決断し行動する、正に「カードを切る」ような行為だと思います。
(上條) ズバリ「つながり」と「安心」だと思います。教師が子どもとつながり、子ども同士をつなげていくことが良い学級づくりの条件になると思います。その条件の下、子どもたちの安心が創造されていくのです。本書でも、4枚のカードを切りながら、そして「個別最適な学び=I canの発見」「協働的な学び=We canの体験」を往還しながら、子ども同士のつながりを創造していくストーリーが描かれています。
(赤坂) 対談部分は、対談のメンバーの一人として議論に参加するような感覚で読んでいただければと思います。結局、自分で納得したことしか継続できません。教育の成果は、一貫して取り組んだことの先に見えてきます。良い学級経営は、適切な目的をもちそこに向かって一貫して継続できるかどうかにかかっています。
(上條) 私たち教師は、教育の専門家です。自信を持って学級経営をしていきましょう。さまざまな手法的How toを使うことを目的にするのではなく、教育の目的達成のために意図的・戦略的に最適な手法的How toを使っていくようにしたいと考えています。本書をきっかけに読者の先生方の学級経営が充実したものになることを願っています。
(赤坂) 実践に一貫性をもたらすのは、教師の考え方です。本書は、実践を生み出しそれを支える上條先生の考え方も書かれています。ご自身の教育観のアップデートにご活用いただけたらと思います。