著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
英語力の土台をつくる!基本語指導で生徒の理解力・表現力を大幅UP!
常磐大学人間科学部コミュニケーション学科 助教森本 俊
2017/11/16 掲載
 今回は森本俊先生に、新刊『コア・イメージで英語感覚を磨く!基本語指導ガイド』について伺いました。

森本 俊もりもと しゅん

新潟県燕市生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業、The University of Auckland大学院修士課程修了(M. A. in Language Teaching and Learning)、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程単位取得退学(学術博士)。智学館中等教育学校英語科教員を経て、現在、常磐大学人間科学部コミュニケーション学科助教。専門は応用言語学、第二言語習得論(特に語彙習得)。文部科学省検定教科書『PRO-VISION English Communication』(桐原書店)編集委員。

―本書のトピックである「基本語」と「コア(・イメージ)」について簡単に教えてください。

 基本語は、takeやgetなどの基本動詞や前置詞、形容詞などから成る、英語力の基盤となる語です。日常会話をはじめとして、高頻度で幅広く用いられているのが特徴です。基本語の多くは複数の意味をもつ多義語ですが、全ての用例に共通する核となる意味を「コア」と呼び、それを図で表現したものを「コア・イメージ」と呼びます。両者をつかむことによって、訳語に縛られずに語を自在に使いこなす力が身につきます。本書では、田中茂範・慶應義塾大学教授の理論に基づいて基本語の意味を分かりやすく解説しています。

―森本先生は、実際に中学・高校・大学の通年授業で基本語指導を実践されてきました。生徒の反応はどうでしたか。

 基本語の指導をはじめた頃は、「何で今更こんな簡単な単語を学習するの?」という反応を示した生徒が多く見られました。しかし、コアという視点から様々な用例に触れることによって、語の意味世界を探究することの楽しさを感じてくれるようになりました。ある日、基本動詞runを扱った際は、授業後に「これってrunできるのかな? イメージ的にはできるけど、じゃあこれは?」といった会話が聞こえてきました。学習した例文に留まらず、積極的にrunを使おうとする生徒の姿を見て、手ごたえを感じました。

―はじめて基本語指導を行う際に、おススメの単語を教えてください。

 基本動詞breakはいちおしの単語です。多くの生徒はbreakを「こわす」という訳語を通して理解していますが、break bread(パンをちぎる)やbreak one’s concentration(集中力を削ぐ)といった用例をコアと合わせて提示することにより、「これもbreakできるんだ!」という新鮮な驚きを示します。その他にも、lookとseeやputとsetの違いなど、自分たちが当然知っていると思っている語ほど、「なるほど、そうだったんだ!」という納得感を得ることができるようです。生徒がもっている語の素朴な意味理解にいかに揺さぶりをかけ、鮮やかにその意味世界を紡ぎ出せるかが、教師の腕の見せ所です。

―新しい学習指導要領では、中学校・高校で扱う単語の数がグンと増えました。今後の語彙指導において、基本語の学習はどのように位置づけられるべきでしょうか。

 語彙力を捉える上で、「語彙のサイズ(数)」と「ある語をどれだけ幅広く使えるか(深さ)」という2つの視点が重要になります。新学習指導要領で扱う単語数が増えたことは歓迎すべきですが、それと同時に英語力の基盤となる基本語の学習をいかに日々の授業に組み込むかが、これからの英語教育における重要な課題であると思います。語のサイズを増やしつつ、基本語をフル活用できる力が身につけば、生徒の理解力・表現力は飛躍的に向上するはずです。

―最後に、本書を手に取られた全国の先生方にメッセージをお願いします!

 基本語と聞くと、英語学習の初期に学ぶ簡単な単語というイメージが強いですが、実は英語力の土台となるとても重要な語です。しかし、これまでの英語教育では体系的・継続的な指導がなされてきませんでした。基本語の指導に自信が無いという先生方も多くいらっしゃると思いますが、大切なことは第一歩を踏み出すことだと思います。私も長年基本語の指導を実践していますが、日々試行錯誤の連続です。本書が基本語の指導に興味をもたれた先生方の一助となれば幸いです。

(構成:広川)
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