著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
ここから始めよう!「深い学び」のある国語科授業をつくるための指導と評価のポイント
東京女子体育大学教授田中 洋一
2017/12/12 掲載

田中 洋一たなか よういち

東京女子体育大学教授。横浜国立大学大学院修了,専門は国語教育。東京都内公立中学校教諭を経た後,教育委員会で指導主事・指導室長を務め,平成16年より現職。この間,中央教育審議会国語専門委員,全国教育課程実施状況調査結果分析委員会副主査,評価規準・評価方法の改善に関する調査研究協力者会議主査などを歴任する。平成20年告示学習指導要領中学校国語作成協力者,光村図書小・中学校教科書編集委員,21世紀国語教育研究会会長。

―新学習指導要領の目玉でもある「主体的・対話的で深い学び」って、わかるような、わからないような……。とりわけ、「深い学び」とはどういうことなのでしょうか、教えてください。

 主体的、対話的、深い学びについては、いろいろな方が、それぞれのお考えを述べていますが、私たちは次のように考えています。

主体的な学び→児童や生徒が主体的に学ぶことですから具体的な姿として、課題に向かってしっかり考える学びだと考えます。
対話的な学び→これは中教審の答申にも述べられていますが、他者の知見を自分の考えの形成に取り入れる学びです。話し合い活動はもちろんその一つの形態になりますが、必ずしも話し合いが必要なわけではありません。複数の資料から多様な意見に触れて自分の考えを構築することなども有効な方法です。
深い学び→何回かの思考を経て、結論が変化したり、より確固たるものになったりする学びのことだと考えます。

 本書はこのような考えで編まれています。

―本書は、「主体的・対話的で深い学び」を実現するような授業と評価の在り方についてのご提案ですね。スタートガイド、と名前がついているように、移行期にまずは始めてみたい授業プランですが、どのような点に特徴がありますか。

 本書は、基本的に文部科学省の考えを踏まえて書いています。生徒にしっかり考えさせることが最も重要であることは、学習指導要領が変わらず言ってきていることです。今まで、手段である言語活動が主役であるかのごとく伝わっていたような傾向もありますが、学習指導要領自体はそんなことは言ってません。本書はその本質を受けてつくられています。また移行期における評価は現行の指導要領に基づいて行うのですが、学習指導要領における指導事項の示し方が変わったことを受けた授業改善においては、評価の観点も変わることが必要であろうと考え、本会独自の見解に基づきモデルを作成しました。

―実際に、授業改善を図る中で気を付けておきたいことなどはあるでしょうか。

 生徒の自由な発想を生かすために課題設定発問の仕方を工夫しました。
 できるだけ多様な意見がもてるような課題を設定します。特に説明的な文章を教材にした授業には、教科書に書かれていることをコピーするだけの授業が多いのですが、書かれている内容について、生徒が評価・吟味・選択・補足などをするような課題を設定します。そしてそれを生徒が考えやすいような発問にするのです。これにより活気のある授業が展開できます。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いします!

 国語教育には長い伝統があります。優れた先行研究や実践事例があるのも事実ですが、そのよい点は踏襲しつつも、新しい学力観に基づく授業を展開するために大胆な発想をもっていただきたいと思います。自分の考えをもたせることを中心にした授業は、自然に生徒を主体的にします。そこに他者の意見をもとに自分の意見を磨く活動を入れれば、深くて充実した達成感のある学びになります。義務教育国語科の最大の目標は国語好きをつくることです。本書のような展開の授業は国語好きを増やすことにつながると思います。
 

(構成:林)

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