著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
「アクティブ・ラーニング」でない「普通」の授業にはブラックペッパーをかけて
山口県岩国市立川下小学校教諭中村 健一
2017/1/20 掲載

中村 健一 なかむら けんいち

1970年、父・奉文、母・なつ枝の長男として生まれる。
名前の由来は、健康第一。名前負けして胃腸が弱い。
酒税における高額納税者である。
キャッチコピーは「日本一のお笑い教師」。「笑い」と「フォロー」をいかした教育実践を行っている。しかし、『策略―ブラック学級づくり 子どもの心を奪う!クラス担任術』でその真の姿、「腹黒」をカミングアウト。

―「年間ベストセラーランキング2015・2016 in明治図書」連覇おめでとうございます。すっかり黒一色ですね。先生はなぜ、こんなにも「ブラック」にこだわるのですか?

「ブラック」とタイトルにつければ、売れるからです(笑)。いやいや、正直に答えすぎました(笑)。

 私が「ブラック」をススメるのは、若い教師には「腹黒さ」が足りないと思うからです。
 教育は、全て教師の「策略」のもとに行われるべき。それなのに若手は「策略」も持たずに思いつきで行動します。「情熱」だけでなんとかなると思っている。だから、失敗するんです。

―先生の持論炸裂、いいですね♪ でもまた今回は「授業づくり」がテーマなのはなぜですか?

 今、「普通」の授業こそ充実させる必要があると思ったからです。
最近、授業といえば「アクティブ・ラーニング」一辺倒なのが面白くなくて…。 

 私は今のところ、年間1,000時間を超える授業が全て「アクティブ・ラーニング」でできると思っていません。
 それどころか、子どもが主体的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の授業はホンの一部で、ほとんどの授業は教師が「教える」普通の授業だと思っています。
「普通」の授業に子どもたちを乗せるには、「策略」が必要ですからね。

―「アクティブ・ラーニング」時代にあえて逆方向にいかれるとは…カエル改め、天邪鬼ですか?

 いやいや…「アクティブ・ラーニング」、大好きですよ。愛していると言ってもいい(笑)。
 私が一生懸命、実践や研究をしてきた「ディベート」や「ワークショップ型授業」は、「アクティブ・ラーニング」の1つと考えられます。
 それらの実践を行う「お墨付き」を文部科学省がくれたのですから、大歓迎です。
 本書にも書いたように、「子どもは、ジッと黙って座って話を聞くのが、嫌いで苦手」です。
 学習者が主体的に、仲間と協力しながら課題を解決する「アクティブ・ラーニング」の手法は、今どきの子どもたちに向いています。

 でも「教えない」授業ばかりする訳にはいかないでしょう?
 漢字、どうします? 九九、どうします?
 他にも教えないといけないことは、たくさんありますよ!

 だからこそ、本書は「普通」の授業なんです。

―納得です! ではそんな「普通」の授業をピリリとさせるブラックペッパー技をどうぞ一つ紹介ください。

 本書でがっつり紹介したように、そんなに難しい技は必要ありません。
 たとえば、教師の話し方を少し早口にするだけでも、子どもたちの乗り方は変わってきます。
 今どきの子どもたちは、テンポの速いものが好きですからね。逆にテンポのないものが苦手です。
 ゆっくりとした「え〜、いまから〜、授業を〜」なんて話し方は、子どもたちにとって退屈の極みです。

―そうですか。では、え〜、では最後になりますが…(てのがいけないのですね!笑)1度聞いてみたかったのですが…先生が策を弄しても続けられる「教師」という仕事。そんなにいいものなのですか?

 「策を弄しても」でないですよ。「策を弄さないと」生き抜けないんです(悲)。
 教師の仕事は大変厳しいものです。1年目の若手など苦しいことばかりで楽しさを感じることはないでしょう。

 でもね…、2年目は、少しだけ楽しくなります。
 そして、3年目、4年目、……と楽しさの割合が増えていくんです。40歳を過ぎると、教師という仕事は楽しくて仕方ないですよ。

 上手に「策略」を巡らせ、その「策略」が子どもたちにヒットする喜びは極上のものです。
 生き残ってこそ感じられる喜びです。
 だから、若手になんとか生き残ってほしい。

 あまり言いたくない台詞ですが、教師は良い商売です。
 全ての教師よ! 厳しい現場を生き抜くために、「黒くなれ!」

(構成:佐藤)

コメントの受付は終了しました。