著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
理科室が充実すればするほど、理科の学力は伸びていく!
東京都品川区立八潮学園校長山口 晃弘
2016/7/19 掲載
 今回は山口晃弘先生に、新刊『ビジュアル解説でよくわかる! 中学校 理科室マネジメントBOOK』について伺いました。

山口 晃弘やまぐち あきひろ

東京都品川区立八潮学園校長
1961年福岡県生まれ。
1984年東京学芸大学教育学部初等教育学科理科専修卒業。
1984年理科担当教諭として、都内の公立学校に勤務。
1993年東京都教育研究員(中学校理科)。
1995年都立教育研究所教員研究生。
2005年中央教育審議会理科専門部会の専門委員を兼務。
2015年東京都中学校理科教育研究会事務局長。

―本書の冒頭では、「生徒が実験でよく使う器具は、生徒自ら用意したり、片づけたりできるようにします」と述べられています。そのためには、理科室の環境をどのように整備すればよいのでしょうか。

 単純に言えば、どこに何があるかを可視化することです。
 引き出しにラベルをつける、顕微鏡を箱から出しておく、実験器具の収納容器が透明で中に何がいくつぐらいあるのか見える…といったようなことだけでも、見違えるような理科室になります。

―理科室に生徒の作品を掲示するときのポイントを教えてください。

 まず、よいもの、つまり手本や見本となる作品を掲示する場合ですが、この場合は、今の生徒に限らず、卒業生した生徒の作品(あらかじめ生徒の許諾は得ておきます)を示すのもよいでしょう。
 また、よいものもそうでないものも含め、すべての生徒の作品を掲示するのも1つの手です。全員分そろえば、集団で目標を達成したことをほめる材料になります。

―山口先生は、理科の学力を保障するために、生徒による実験が不可欠とのお考えです。この生徒実験をうまく取り入れるポイントを教えてください。

 教師の指導ではなく、生徒の活動を意識します。
 例えば、いわゆる演示実験は、教師が行い、生徒はそれを見るだけ、ととらえがちです。しかし、この演示実験も生徒(の代表)にやらせ、教師はその支援に回る、という方法があります。
 また実験を、レシピ通りに進めるだけのお菓子づくりのようなものにせず、生徒が工夫する場面や試行錯誤する場面を必ずつくるようにしたいものです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 毎年4月の授業開きで1年生に「成績には関係しないので、正直な気持ちを聞かせてほしい」として、「理科の授業に望むこと」を書かせてきました。
 それを集約すると、生徒が望む授業のモデルは、「講義は少ないが、実験器具及び時間が十分にある状態での実験の機会が数多くあり、しかも、先生はわかりやすく解説をしてくれる」というものです。生徒が望まない授業は、この反対を考えればよいわけです。「大部分が先生の説明だけで、実験といっても先生が演示して見せるだけ、たまに行う生徒実験は途中で中止させられ、先生の不十分な解説でよく意味もわからないまま終わってしまう」という授業です。
 本書を参考に、充実した理科室をつくり上げ、ぜひ前者のような授業を実現していただければ幸いです。

(構成:矢口)
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