- はじめに
- 1章 3つの視点で考える 理科室マネジメントの基礎・基本
- 1 環境の整備
- @観察・実験器具の管理
- A周辺の整備
- B準備室の管理
- C掲示板,展示コーナーづくり
- 2 カリキュラム・マネジメント
- @年間の指導計画作成
- A単元の指導計画作成
- B観察・実験の計画と準備
- C評価計画の作成
- DCAPDで行うカリキュラム・マネジメント
- Eカリキュラム・マネジメントを通しての協働
- Fその他の準備
- 3 危機管理
- @万一の事態への備え
- Aルールづくり
- B事前調査・予備実験の実施
- C器具の整備や薬品の整理整頓
- D廃棄物の処理
- 2章 これだけは徹底したい! 安全に配慮した理科室の管理
- @きまり―生徒の好奇心と危険はとなり合わせ
- A薬品の管理@―使用頻度や溶液の性質に合わせて管理しよう!
- B薬品の管理A―帳簿をつくって厳重に管理しよう!
- C薬品の管理B―危険物は類ごとに保管しよう!
- D溶液の調整@―保存の利便性まで考えて調整しよう!
- E溶液の調整A―溶液の性質をつかんで調整しよう!
- F器具の管理―生徒の自主性に任せつつ要所は教師がチェックしよう!
- G廃液の処理―再利用も視野に入れて回収,処理しよう!
- 3章 これだけは身につけさせたい! 基本的な器具操作の指導
- @ばねばかり―向きに注意して調整しよう!
- Aマッチ―生徒の実態を踏まえて指導を工夫しよう!
- B試験管―ポイントになることをしっかり指導しよう!
- Cガスバーナー―評価の仕方を工夫しよう!
- D電気分解装置―操作が簡単でも練習はしっかり!
- E電流計,電圧計,検流計―器具の破損を未然に防ごう!
- F記録タイマー―実験のコツを押さえよう!
- G天体望遠鏡―目的や扱いやすさを検討しよう!
- 4章 これだけは注意したい! 事故が起きやすい観察・実験の指導
- @レーザーポインタ―予期せぬ事態も考慮しよう!
- A誘導コイル―電気,磁気に注意しよう!
- B酸素の発生―定番の実験だからこそ注意しよう!
- C水素の発生―事故の原因をしっかり理解しよう!
- Dエタノールの沸点の測定―よく使う溶液だからこそ危険性をしっかり理解しよう!
- E動物の解剖―生命を大切に扱う姿勢を忘れずに!
- F野外観察―安全面への配慮も周到に!
- 5章 生徒をもっと理科好きに! 学習環境づくりのアイデア
- @動物の飼育―ちょっとした工夫で管理も楽々!
- A動物の解剖―実態に応じた教材選びをしよう!
- B百葉箱―身近な気象を実感させよう!
- C生徒の作品の掲示―選び方や掲示方法を工夫しよう!
- D展示物―生きた展示をつくろう!
- E机の配置―主体的・能動的な学びを促そう!
- Fグループ編成―生徒の学び合う力を引き出そう!
- G黒板―生徒に考えさせる板書を目指そう!
- H教卓―演示実験は安全かつ印象的に!
- I天体観望会―理科好きを増やす楽しいイベントに!
- 6章 これは使える! 観察・実験の便利アイテム
- @液体窒素―危険性を熟知して演示実験に活用しよう!
- Aドライアイス―安全に配慮して状態変化を調べよう!
- B加熱器具―目的や用途で使い分けよう!
- C簡易真空ポンプ―手軽に減圧状態を体感させよう!
- D点眼びん―リーズナブルなアイテムを活用しよう!
- E石灰水採水びん―コストを意識してアイテムを選ぼう!
- F火山灰―園芸用土を活用しよう!
- G教訓茶碗―本物で原理を体験させよう!
- Hポータブル・スピーカー―身の回りのもので音楽を奏でよう!
- I気泡緩衝材―プチプチで浮沈子をつくろう!
- J凸レンズと厚紙―意外な結果で生徒にゆさぶりをかけよう!
- Kおもちゃのばね―縦波,横波の違いを視覚化しよう!
- Lコルクボーラー―必要なゴム栓を自前でつくろう!
- Mガラス管@―I字管やL字管を自作してみよう!
- Nガラス管A―I字管やL字管を自作してみよう!
- Oデジタル顕微鏡―長所を生かして協働学習を活性化しよう!
- P書画カメラ―機能を生かして授業の幅を広げよう!
- Q高速スキャナー―機能を生かして仕事を効率化しよう!
はじめに
本書の執筆者は,主に中学校現場で日々理科の授業を行う教師です。
その志は「理科の授業で自然事象のおもしろさや不思議さを伝えたい」ということに尽きます。
この背景には,近年,中学校の理科授業で観察・実験が敬遠されがちな雰囲気を肌で感じている,ということがあります。
例えば,教科書に掲載されている観察・実験は簡単なものに限られ,しかも安全な試薬のみで行われるようになってきています。また,若い教師の間では,デジタルコンテンツによる模擬的な観察・実験や,板書による図示・説明だけで済ます“お茶を濁す”ような授業も増えています。
こういった状況は,近年の学校事故の防止に対する危機意識の高まりが招いたのでしょうか。事故の発生を恐れるあまり,実物を用いた観察・実験がおろそかになっているようにも思えます。
あるいは,ICTの発達によって手軽に利用できるデジタルコンテンツが増え,やってもいない観察・実験を経験したような雰囲気にできてしまうことが原因なのでしょうか。
いずれにせよ,観察・実験から遠ざかるかのような理科授業では,確かな学力が身につかなくなってしまうのではないか,と私たちは危惧しています。
では,どうすれば観察・実験を授業にきちんと位置づけ,生徒に確かな学力を保障できるのでしょうか。その大きなポイントになるのが,本書で扱うテーマ,「理科室経営(マネジメント)」です。
私たち理科教師は,何よりも,理科室での業務や授業を大切にしなければなりません。普段から使いやすく理科室を整備し,生徒の興味・関心を高める観察・実験を位置づけた授業を行えば,着実に生徒の学力を高めることができるはずです。その具体的な方法やアイデアを紹介するのが本書です。
本書は,次のような6章で構成されています。
1章は,本書の理論に当たる部分です。「環境の整備」「カリキュラム・マネジメント」「危機管理」という3つの視点から,理科室をいかに管理・運営すればよいのかについて述べています。2章以下では,具体的な方法やアイデアを紹介していますが,それらの事例一つひとつの背景にある考え方を,この1章で理解していただきたいと思います。
次の2章では,安全に配慮した理科室管理の工夫やアイデアを具体的に示しています。
さらに3章では,生徒に必ず身につけさせたい基本的な器具操作の指導について,図解を交えながらわかりやすく示しています。
また4章では,事故が起きやすい観察・実験を取り上げ,私たちがこれまで実践を通して得た事故防止の方法を具体的に示しています。
5,6章は,ある意味で本書のハイライトとも言える部分です。生徒がもっと理科好きになるような理科室の学習環境づくりのアイデアや,あると必ず役に立つ観察・実験器具やその周辺の道具をたくさん紹介しています。
すでに教壇に立っている中学校理科の先生はもちろん,支援員や指導助手の役割を担う方々,これから教師を目指している方々にも参考にしていただければ幸いです。
最後になりましたが,この書を出版するにあたって,明治図書出版の矢口郁雄氏には絶大なるご尽力と励ましをいただきました。氏の助言があったからこそ本書が出版できたといっても過言ではありません。ここに改めて厚く御礼を申し上げる次第です。
2016年6月 /山口 晃弘
※本書で紹介されている観察,実験を行う際は,安全に十分配慮してください。
また本書では,その危険性を伝えるために,やってはならない実験の例を一部で紹介していますが,これらは絶対に真似しないでください。
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- 明治図書