著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
知識注入や活動主義を克服! 「活動あって学びある」社会科授業をめざして
兵庫教育大学副学長・大学院教授米田 豊
2016/7/20 掲載

米田 豊こめだ ゆたか

昭和30年12月生まれ。
小中学校教諭、奈良県教育委員会、橿原市教育委員会指導主事を経て、平成18年より兵庫教育大学大学院教授。平成28年より兵庫教育大学副学長。
主な著書に、『中学校社会科「新教材」授業設計プラン』『「言語力」をつける社会科授業モデル 小学校編』『「言語力」をつける社会科授業モデル 中学校編』『「習得・活用・探究」の社会科授業&評価問題プラン 小学校編』(以上、明治図書)などがある。

―本書は、書名に「活動あって学びあり!」とありますように、社会科授業をアクティブに、かつ学びの深いものにする授業プランが豊富に紹介されています。まず、本書の読み方について教えてください。

 本書は「理論編」と「実践編」により構成されています。まずは、アクティブ・ラーニング導入の背景や課題、社会科との関連をご理解いただけるよう、理論編から読んでいただくことをおすすめします。実践編は、ご自身の問題意識や興味・関心に近いものから読んでみてください。そして、ぜひ授業づくりにご活用いただけたらと思います。

―本書は大きく「資料」「体験」「調査」「表現」の4つの視点からまとめられています。このねらいについて教えてください。

 「資料の活用」「体験活動」「調査活動」「表現活動」は、これまでの社会科授業においても行われてきました。しかし、これらの活動そのものが目的となり、本来の目的である「社会認識形成」がおろそかになっていました。
 そこで、本書では、アクティブ・ラーニングを4つの視点で分類し、社会認識形成がともなった授業プランを提案することにいたしました。

―次期指導要領に向けた話し合いの中では、子どもの「学びの過程」「学習プロセス」の重要性についても指摘されています。本書の授業プランの中では、この習得・活用・探究の学習プロセス(学びの過程)について、特に丁寧に詳しく扱っています。見えにくいこの学びの過程をとらえるポイントは何でしょうか。

 本書では、「問題の発見・把握」「予想・仮説の設定」「資料の収集・選択」「検証」「まとめ・考察」という「探究」を中核とした授業プランを掲載しています。そして、探究を中核とした「学びの過程」をとらえるポイントとなるのが、本単元・本時の達成目標と授業仮説の設定です。本単元・本時の目標を設定し、目標の達成に向けた具体的な手立てを「授業仮説」として明示することで、「学びの過程」をとらえることができます。

―アクティブ・ラーニングにおいて3つの柱とされるものに「主体的な学び」「協働的な学び」「深い学び」がありますが、3つ目の「深い学び」については、より高次な学習であり、ある意味子供たちの内面的なところでもあるため、とらえにくい部分でもあるかと思います。この「深い学び=ディープ・ラーニング」を達成するポイントは何でしょうか。

 難しく考える必要はありません。社会科では、社会のしくみが分かることが、深い学びとなります。社会事象間の因果関係を示した知識を習得することで、社会のしくみは分かります。反対に、浅い学びというのは、歴史人物や都道府県の名称を丸暗記して知識を獲得することです。アクティブ・ラーニングとは、深い学びを達成するための手段であることを理解していただきたいと思います。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 「活動あって学びあり!」、これがアクティブ・ラーニングです。知識注入や活動主義の社会科授業を克服し、社会のしくみが分かる子供の育成をめざしていきましょう。

(構成:及川)

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