- 著者インタビュー
- 特別支援教育
平成19年度にLD、ADHDが通級の対象になって以降、発達障害を対象とする通級指導教室の開設が急増しています。担当者の専門性を確保するために、現職の内地留学等で大学で学ばれたり、大学院を修了されたりした教員を配置している自治体が多いようです。また、ことばの教室等の他の通級の経験者が新たに開設された発達障害等の通級の担当者になる場合もあります。
通級指導教室では、子どもの障害の特性に応じた自立活動の指導と教科の補充指導を、通常の学級における教育課程に追加したり、一部を変更したりするなど特別の教育課程による教育が行われます。指導時間の上限も8単位時間と決められており、通常の学級における教育とは、指導内容、方法、時間等が大きく異なります。
通級による指導を利用する子どもは、その障害特性のために通常の学級において何らかの適応上の困難さを抱えています。通級による指導の目的は、通級する子どもが在籍している学校、地域でうまく適応できるために必要な支援を行うことです。子どもの適応状態は、通級における指導の充実だけでは改善しません。必要な支援とは、子どもへの支援だけでなく、在籍している学校や担任への支援、保護者の子育てに関する支援なども大切です。
子どもの指導の専門性を身につけていくことはもちろんですが、担任や保護者の相談にのることができる力、児童生徒の特性や適切な指導の方法等をわかりやすく担任や保護者に伝えることができる力なども求められます。
特別な教育課程による通級による指導は、文部科学省で制度としてきちんと位置づけられています。まず、法的な位置づけ、文部科学省の考え方をおさえておく必要があります。ただし、通級による指導は個々の児童生徒のニーズに応じて指導計画を立案することから、柔軟性も必要です。その意味では教科書のない教育の難しさもあります。本書の通級のベテラン教員によるQ&Aは大変参考になると思います。また、教室経営も通常の学級や特別支援学級、特別支援学校とも異なる面があります。本書におおまかな年間計画を載せましたので参考にしていただければと思います。
教職経験の豊富なベテランの教員でも、はじめて通級の担当になるとそのシステムの違いに戸惑いがあるようです。初任で通級の担当になった場合の不安感はなおさらだと思います。本書はそのような先生に、通級指導教室の役割は、とても奥が深くてやりがいのある仕事であることを感じてほしいと思い本書をつくりました。はじめて担当された先生が戸惑いそうな課題をQ&A形式で、通級のベテラン教員に応えてもらいました。一つ一つがなるほどそう考えればいいのかと感じてもらえると思います。1巻は基礎編として、教室運営を中心にまとめました。2巻は指導編として、アセスメントから指導計画、指導実践など事例を通して学べる本を計画中です。
通級指導教室は増えているとはいえ、地域で孤軍奮闘している先生も多いと思います。子どもの笑顔、担任の笑顔、保護者の笑顔が通級の糧になります。日々悩みも多いかと思いますが、通級という仕事を楽しみながら取り組んでほしいと思います。
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