著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
伝統音楽の授業がグッと身近になります!
国立音楽大学音楽学部教授横井 雅子
2014/1/24 掲載
 今回は著者を代表して横井雅子先生に、新刊『プロの演奏でつくる!「日本・アジアの伝統音楽」授業プラン』について伺いました。

横井 雅子よこい まさこ

東京藝術大学大学院音楽研究科修了。(旧)文部省交換留学生としてハンガリー国立科学アカデミー音楽学研究所でハンガリー音楽研究に従事。中・東欧、特にロマ音楽の研究に加え、近年は楽器製作の地域研究を行っている。
現在、国立音楽大学教授、同大学楽器学資料館館長、東京藝術大学、立教大学非常勤講師。著書に『音楽でめぐる中央ヨーロッパ』、『伝統芸能復興』、分担執筆に『民謡からみた世界音楽』などがある。

―伝統音楽の面白さは、ズバリどこにあるのでしょうか?

 日本のものなら日本人の、アジアのものならアジアという地域の歴史の中で積み重ねられて形作られた感性を確認できるところだと思います。
 現代社会に生きる人々にとっては縁遠いと思い込んでいる人が多いと思いますが、実際に見聞きする中で、今の自分にもつながる「なにか」を感じ取ることができるでしょう。

―音楽専科の先生でも、伝統音楽の演奏経験や聴く機会はなかなか少ないのが現状のようです。実際の演奏したり生演奏を聴く経験が少なくても授業はできるでしょうか。

 演奏経験の方は自ら機会を作るように心がけないと無理ですが、聴く機会はその気になって調べれば(クラシック音楽に劣らず)たくさんの演奏会や公演が組まれています。クラシック音楽と比べて多くの場合、料金が良心的でもありますし、意外に若い人も聴きにきていたりするので、思い切って出かけてみてください。私自身、大学に入ってから聴き始めましたが、西洋音楽との違いが新鮮に感じられました。

―付属DVDは、プロの演奏家による本書のための撮り下ろし演奏と、演奏者自身による解説が収録されているのが魅力ですね。授業での活用方法を教えてください。

 中学や高校で鑑賞教室に参加したことがある人に尋ねてみると、よく分からないのに長くて退屈だった、という声が多く聞かれます。ここでは鑑賞用の映像を思い切って短くし、演奏者自身による説明を充実させました。演奏者も比較的若い方がたにご協力をお願いしました。分かりやすい言葉で語ってくださっていますので、聴くだけでなく、学ぶ部分でも映像をうまく使っていただきたいですね。

―学習指導要領でも伝統音楽の授業を充実させる方向にあります。子どもたちに伝統音楽のどのようなところを一番伝えたいか、ぜひ教えてください。

 現代の日本人は西洋式の生活をしていますが、折節の行事を大事にし、季節感を生かした和食を楽しんでいただく感性を持ち合わせています。「伝統音楽」と最初から構えて聴かせるのでなく、自分たちの先祖から受け継いできた感性が自分にもどこかに残っていることを、こうした音楽を通して確認してもらえるといいと思います。

―最後に、読者の先生方へ向けメッセージをお願いします。

 日本やアジアの伝統音楽に苦手意識をお持ちの先生もいらっしゃるかもしれません。しかし、この映像の中で演奏してくださっている方々のように、若い演奏者が日本やアジアの音楽を「カッコイイ!」と思って取り組む例も増えてきました。生徒たちに特別なものとして教えるのでなく、自分たちのものとして取り上げてはいかがでしょうか。

(構成:木村)
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