著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級崩壊を防ぐ、ヒドゥンカリキュラムへの意識的なアプローチを始めよう!
追手門学院小学校講師多賀 一郎
2014/1/27 掲載
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  • 教師力・仕事術
 今回は多賀一郎先生に、新刊『ヒドゥンカリキュラム入門―学級崩壊を防ぐ見えない教育力―』について伺いました。

多賀 一郎たが いちろう

 神戸大学教育学部卒。附属住吉小学校を経て、私立甲南小学校に31年間勤める。現在、私立追手門学院小学校講師。元日本私立小学校連合国語部全国委員長。専門は国語教育。「親塾」を開催して、保護者の子育て支援を行ったり、若い教師の育成に尽力したりしている。また、公立私立での指導・講演、幼稚園やサークルなどで絵本の話をしている。
 著書に、『はじめての学級担任4 1から学べる!成功する授業づくり』『小学校国語科授業アシスト これであなたもマイスター!国語発問づくり10のルール』(明治図書)、『子どもの心をゆさぶる多賀一郎の国語の授業の作り方』『全員を聞く子どもにする教室の作り方』『今どきの子どもはこう受け止めるんやで!』『一冊の本が学級を変える』(黎明書房)など多数。
 現在、明治図書教育zine:指導技術の教科書にて、「多賀一郎の子どもと保護者の願いをよみとく教師塾」が大好評連載中!

―まず、本書のタイトルでもある「ヒドゥンカリキュラム」(かくれたカリキュラム)とはなんでしょうか?

 ヒドゥンカリキュラムとは、指導案にも授業計画にも発問計画にも書かれない潜在的教育効果のことです。全ての教師は、それぞれのヒドゥンカリキュラムを持っていて、プラスにもマイナスにも働いて、大きな結果に結びついてしまうことがあるのです。優れた教師は、ほとんどみな、このヒドゥンカリキュラムを意識して使っています。
 

―本書では、70個のヒドゥンカリキュラムが紹介されています。どれも大切な視点だと思うのですが、若手の先生が特に意識したいものがあれば教えてください。

 「Scene7 学級を崩しているのに気づかない 教師が発するマイナスのヒドゥンカリキュラム10」であげた、次の10のヒドゥンカリキュラムです。

  1. 不機嫌さを露骨に表す
  2. お願いしやすい子どもにばかり頼んでいる
  3. 冗談が独りよがりになっている
  4. ひとこと皮肉を言ってしまう
  5. 子どもをからかう
  6. ごまかしをする
  7. マイナス点にこだわる
  8. 人権意識がない
  9. しょっちゅう、ぶれる
  10. 物事への関心が薄い

 これらは、気づかずにしてしまうマイナスのことばかりです。たくさんの若手が、いや、若手じゃなくても、やっています。こういうことは、直した方がいいですね。子どもの信頼を日々、失いますから。

―初任者の8〜9割が、クラスの荒れを経験するといわれています。そのような荒れた状態に陥りつつあるときに、踏みとどまるための要となるヒドゥンカリキュラムはありますか。

 正直、そんな魔法はありません。崩れかけたら、何をしても裏目に出ます。
 それでも、学級にプラスの風を送らなければなりません。具体的にできることを、せめてしていくしかないのです。そういう意味では、

・怒鳴らず、落ち着いた声で話す
・教室をきれいにする
・掲示物には子どもの悪いことを書かない
・ロッカーを整理整頓する
・空気を入れ換える

の5つなら、荒れ始めてもできることですね。

―先生ご自身の経験を振り返って、このヒドゥンカリキュラムを意識していなかったために失敗した…というエピソードがあれば、教えていただけますか?

 先の「教師が発するマイナスのヒドゥンカリキュラム」であげた、「子どもをからかう」ですね。
 初任で帰国子女学級を担任しました。4年生の6人の担任。野球をして一緒に遊んでいたときに、一人の子どもがなかなか打席でバットを振らないので、「はやく打てよ。ほらほら。」というように笑いました。すると、彼は泣きだしてしまったので、「自分が打てないから泣くのはずるいぞ。」と言いました。そのとき、彼は「そうじゃない。泣いたのは、先生が笑ったから。」と言いました。公立の学校へ一度入って、言葉などでからかわれて、ぼろぼろの気持ちでやってきた子どものことを、僕はからかったのですね。
 今でも、痛い痛い思い出です。

―最後に、読者の先生方に向けてメッセージをお願いいたします。

 学級がしんどい、なんだかうまくいかない、学校へ行くのがつらくなる…。毎年のように、こんな先生方の悩みを聞きます。今の時代、一度や二度、学級が崩れたって、どうってことはありません。その子どもたちには申し訳ないけれども、その失敗を背負って、次の自分を目指してほしいと思います。少しずつ、自分の力をつけて、積み重ねていくのです。大切なのは、自分に気づくと言うことなのです。そのためにこの本が少しでも役立てば、うれしいですね。

(構成:林)
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