著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
その子にあった日常生活の指導をつくろう!
東京都公立特別支援学校大高 正樹
2014/1/31 掲載

大高 正樹おおたか まさき

東京学芸大学障害児教育学科卒業。新任教師時代から障害児基礎教育研究会に参加。
現在,東京都公立特別支援学校教諭。
著書に、『知的障害のある子への<文字・数>前の指導と教材楽しく学べるシール貼りワーク&学習段階アセスメント表付き』(明治図書)がある。

―本書では子どもの発達段階にあわせて日常生活の指導を工夫するアイデアをまとめてくださっていますが、日常生活の指導で先生が最も大切とお考えになるポイントは何でしょうか?

 「日常生活の指導」というと、「生活年齢にあわせて」という方が一般的かもしれません。もちろん、それを否定しません。小学校一年生で入学してきた子どもが、毎日登校時と下校時に「着替え」を繰り返すことで、その子の発達では、難しいかな?と思えた「着替え」ができるようになったりもします。しかしながら、小学部高学年になって、何年間も毎日繰り返してきたのに、なかなか一人で着替えられるようにならない子も見てきました。そんな時「国語・算数」で行っている課題とリンクさせて「できること」を考え、「教具」を工夫することで、その子が「できるようになった」経験がとても印象に残っています。「着替え」に限らず、「日常生活の指導」は、「学習課題」との関連を意識しないと単なる「繰り返し」におちいってしまいます。
 私がもっとも大切と考えるポイントは、「生活年齢」+「発達年齢」=「日常生活の指導」という点でしょうか。

―子どもの発達段階はどのようにとらえていらっしゃいますか?

 本書では発達のチェックのためのアセスメントとして「MO教材アセスメント」を掲載しています。MOの「O」は大高、「M」は水口浚先生を指しています。
 私の発達段階のとらえ方は、師匠でもある水口浚先生から教わった発達段階を軸にしているのです。(水口浚先生は、障害児基礎教育研究会を作られた教材教具を通じた学習について実践を重ねられてきた先生です。)
 ですから、「発達」には運動面、言語面、認識面、社会性の側面等々、色々な側面がありますが、「授業で使う教材づくり」、その教材を通して、子どもの発達段階をとらえようと試みているのです。

―子どもの実態にあわせた指導をしていく中で一番嬉しかったエピソードがありましたらどうぞ教えてください。

 「休み時間」なのに子どもが私の作った教材を取り出してきて、何度も繰り返し学習している場面を見た時はうれしかったです。休み時間に「給食準備」も変な感じですけれど、それだけ「用意した教材が子どもに合っていて楽しかったんだな。」と思えた瞬間でしたから。

―CD-ROMに掲載されている絵カードでおススメのものをいくつか紹介してください。

 「給食」「掃除」関連のイラストは一般のカット集にあっても、「荷物整理」「着替え」のイラストはあまり見たことがないのでおススメです。一般のカット集で探せないので、絵が得意な知り合いの方にお願いして、書いてもらいました。「手紙をリュックから出そうとする絵」と「手紙を籠に入れようとする絵」の違いなどは特別支援学校ならではだと思います。

―最後に知的障害のある子の指導に力を入れていらっしゃる全国の先生方へメッセージをお願いします。

 私は、15年間教員を続けてきました。今でも、初任の時と変わらず、お子さんや同僚の先生方からたくさんのアイデアをいただいています。この本を手に取っていただいた先生方の、アイデアもぜひお聞きしたいです。お互いのアイデアを共有し合って、もっとたくさんのアイデアを自分のものにしませんか?

(構成:佐藤)

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