- 著者インタビュー
- 特別支援教育
それは大きく三つの特徴があると思います。
1点目は、楽器がなくても演奏が可能なところです。通常の演奏活動では、楽器が必要ですが、ボディパーカッションは身体を使いますので、いつでもどこでも誰とでも、“楽器を使用しないで”一緒に演奏活動を行うことができます。
楽器演奏の場合は、楽器を準備したりしなければいけません。しかし、ボディパーカッションであれば、子どもたちが集まって活動できるスペースさえあれば“いつでもどこでも演奏を行う”ことができます。そして、自分の身体で小さい音(手のひらを軽く叩く)から大きな音(足踏みやジャンプ)まで自由に叩き分けることができます。
2点目は、楽譜が全く読めない子どもでも演奏できることです。本書では、たった三つのリズムパターンしか使いません。一度感覚的に身体でリズムパターン覚えたら、特別支援の子どもたちも簡単に楽しむことができます。
楽譜が読めなくても、誰もが参加できる大変楽しいリズム身体表現活動になります。
3点目は、歌が苦手でも、音が聞こえなくても(聴覚障害の子どもたちも含む)、みんなが一緒にできる演奏活動ということです。特別支援の子どもたちは、歌が苦手だったり、音程をとることが難しい場合があります。ボディパーカッションは、リズムを合わせるだけでみんなと心を一つにして合奏を楽しむことができます。この心を一つにする活動こそが、ボディパーカッションの最大の魅力です。
ボディパーカッション教育は「間違いが間違いにならない音楽」です。
特別支援の子どもたちは、正確に楽器を操作したり、楽譜を読みながら演奏したり、音程を正確に歌ったりすることが苦手な場合が多いと思います。ボディパーカッションは、音がずれても、それを装飾音符として捉えますので、音楽的には全く問題はありません。
私が指導の時に心がけていることは、「子どもたちが楽しく活動できている姿をすべて受け入れる」ことです。
小学生が楽譜をすらすらと読めることはほとんどありません。子どもたちにとって、楽譜を読むことは非日常的であり、難しい漢字の混じった文字を読む以上に難しいと思います。また、先生方の中にも、楽譜を読むことが苦手な方が多くいらっしゃるのではと思います。つまり、音楽は好きだけど楽譜が読めない人は意外に多いのです。(作詞作曲をしている、有名なプロのミュージシャンでも、楽譜を読めない人は結構います。)
そこで、曲の表記を、通常の五線楽譜ではなく簡単な文字表記の楽譜にすれば、誰でも読めるのではないかと考え、本書では、リズムをすべて文字楽譜で表しました。また、小学校1年生から簡単に読むことができるようにカタカナ表記にしました。それは特別支援の子どもたちも、できるだけ自分で読むことができるようにしたいと思ったからです。
本書では、ボディパーカッション教育は、「音を読む活動」ではなく、「音を楽しむ」活動として捉えていただければと願っています。
選曲のポイントは、構成が簡単な曲や、子どもたちがすぐ口ずさむことができる曲を選ぶことです。J-POPの曲などでも、本書で紹介しているリズムパターンがピッタリ合いますので、子どもたちも大変喜ぶのではないでしょうか。また、クラシック曲も、リズムがつけやすい曲がたくさんあります。
本書で紹介している以外のオススメ曲をあげてみましょう。
♪アニメ・童謡・J-POPなど
さんぽ、となりのトトロ、にんげんっていいな、1年生になったら、ドレミの歌、ジングルベル、ヘビーローテーション(AKB48)
♪クラシック曲(速いテンポ)
道化師より「ギャロップ」(カバレフスキー)、剣の舞(ハチャトゥリアン)
♪クラシック曲(ミディアムテンポ)
交響曲第40番(モーツァルト)、トルコ行進曲(モーツァルト)
♪クラシック曲(ゆっくりとしたテンポ)
新世界より「家路」(ドヴォルザーク)、ボレロ(ラベル)、ピアノソナタ8番「悲愴」(ベートーヴェン)
本書で使用しているリズムパターンは、基本的にどんな曲にもつけることができます。いろいろな曲にチャレンジしてボディパーカッションを楽しんでください。
「ボディパーカッション」という言葉だけを聞くと、難しいと思う方もおられますが、ボディパーカッション教育は、特別支援の子どもたちも含めて、みんなが心を一つにできる「コミュニケーション教材」として活用していただきたいと思います。
リズム身体表現活動ですので、音楽の授業以外でも、体育の体ほぐしの運動、学級レクリエーション、学年や学校行事で行うなど、様々な活用法があると思います。そして、特別支援の子どもたちも一緒に楽しめる教材として活用していただけます。
きっと「音譜が読めなくても、楽器ができなくても、歌が苦手でも」音楽が楽しめることを体感できると思います。
私が行ってきたボディパーカッション教育活動は20数年が経ちましたが、教育教材としては、まだまだ新しい分野の教材だと思います。教師になって間もない先生方もキャリアのある先生方も、今後、ぜひどんどんチャレンジしてもらいたいと思います。
子どもたちが目を輝かせて参加してくれることを願っています。あとは先生のパフォーマンス次第です。がんばってください!
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