著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもが伸びる!目からウロコの一〇〇マス作文
鳥取市立富桑小学校教諭三谷 祐児
2007/10/12 掲載
 今回のインタビューは三谷祐児先生に新刊『書く力を高める小学校「一〇〇マス作文」入門』について伺いました。一〇〇マス作文とは、3分間で100字を目標に、汚い字・誤字・ひらがなだけなども認めて、とにかく「書くこと」の基礎体力をつけよう、という実践です。

三谷 祐児みたに ゆうじ

1957年鳥取市生まれ。1979年立命館大学文学部卒。山口県小学校、鳥取県中学校国語科教諭等を経て、現在鳥取市立富桑小学校勤務。その間、兵庫教育大学大学院修了。
平成14年度鳥取県小学校国語教育研究会より峰地新人賞を受賞。平成16年度第20回東書教育賞にて優秀賞を受賞。

―「一〇〇マス作文」は大変ユニークなご実践だと思いました。着想の原点とどのような実践なのかを併せて簡単にご紹介ください。

 現行の「書く」指導のみでは、子どもたちの瑞々しい感性あふれた作品は生まれにくい。どうしたら魅力ある作品が生まれてくるのだろうか?それには「書くこと」に対する抵抗をなくし、題材を選ぶ力、つまり生活の中から書くことを見つける目を育てることがまず大事なのではないか。構想や記述は後でもいい。まず、子どもが書きたいと思っていることを書かせてみよう。でも時間が…。このような思いから、書くことへの抵抗感を徹底的に排除し、3分間で100字程度の作文を書く「今は書けなくてもいいし間違えてもいい」一〇〇マス作文を考えました。

―これまでの国語科教育で行われてきた「書く力」を高める実践との違いがあるとしたら、それはどういう点でしょうか?

 大きな違いは二つあります。一つは「取材」です。作文の指導過程は「取材−構想−記述−推敲−評価」の流れが一般的で、今までの指導は「構想」や「記述」の過程を重視してきたと言って良いでしょう。一〇〇マス作文では、書くことを見つける指導、つまり「取材」に力点を置いています。もう一つは、わずかな時間を利用した継続実践です。45分ではなく、15分程度の指導を毎週1回粘り強く積み上げていくのです。ただ、これまでの指導を否定しているわけではありません。それもまた大切な指導です。

―いろいろな学力調査の結果から「書く力」が再びクローズアップされているようですが、なぜ今「一〇〇マス作文」なのでしょうか?子どもの現状も踏まえてお教えください。

 「書く力」の低下は「自分の思いをまとめる力」の低下だと考えられます。作文嫌いな子どもは多いです。その一番の理由は「書くことがない」です。「自分の思い」がないのです。構想や記述の前にこれを何とかしなくてはなりません。一〇〇マス作文を続けていきますと、多くの子どもたちが「書きたいことがすぐに見つかるようになった」「構想がすぐに浮かぶようになった」「書くことが苦にならなくなってきた」と言っています。このように、一〇〇マス作文の継続実践は、「自分の思い(ものの見方)」を鍛え「書く」力を確実に育てていきます。

―実際に子どもたちに指導される中で一番ご苦労された点、また工夫された点はどういったところでしょうか?

 苦労した点は、私が担任をしていないという点です。今回の実践は、私が教務主任として数クラスに出て行った実践ですので、担任としての実践は未知数なのです。タイムリーに子どもを褒めたり指導を行ったりしたくてもできません。担任であればそれが可能になります。担任をしている皆さんには、本に書きました以上に色んな可能性が見えてくると思います。是非挑戦してほしいと思います。また、この実践が第三者、例えば同僚や保護者、また地域等に認められるためにはコンクールへ入賞させるのが近道です。工夫といえばそこを工夫しました。

―最後に、これから試してみようと思われる先生方に、指導のポイントとメッセージを一言でお願いいたします。

 教育実践は楽しみながらやるものです。私たち教師にとって子どもの変容が教師冥利です。一人でやるよりも二人の方が良いですし全校でやれるともっといいですね。半信半疑で始めても確信に変わったら必ず成功します。ポイントは、「共通実践」「継続実践」「肯定実践」です。

(構成:佐保)

コメントの受付は終了しました。