- 学級経営ガイドブック
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1 進めてますか?「カリキュラム・マネジメント」!
新しい学習指導要領には新しい考え方、進め方が導入されていますが、その一つに「カリキュラム・マネジメント」があります。「カリキュラム・マネジメント」ですべきことは、以下の3つです。*1
1.各教科等の教育内容を相互の関係で捉え、学校の教育目標を踏まえた教科横断的な視点で、その目標の達成に必要な教育の内容を組織的に配列していくこと。
2.教育内容の質の向上に向けて、子供たちの姿や地域の現状等に関する調査や各種データ等に基づき、教育課程を編成し、実施し、評価して改善を図る一連のPDCAサイクルを確立すること。
3.教育内容と、教育活動に必要な人的・物的資源等を、地域等の外部の資源も含めて活用しながら効果的に組み合わせること。
これを、田村学氏は簡潔に、(1)カリキュラム・デザインの側面、(2)PDCAサイクルの側面、(3)内外リソース活用の側面としています。*2「カリキュラム・マネジメント」という言葉そのものは、別段新しい言葉ではありません。今までは、学校のシステムを動かす役割である管理職等だけが考えるものと受け止められがちでした。しかし、これからは「学級担任」を含む全職員で考えていくべきものと強調されたことが新しいわけです。
「カリキュラム・マネジメント」への思惑は、大きく2つ考えることができそうです。
1つは学習内容の量の面です。「特別の教科 道徳」「小学校外国語」「プログラミング教育」……と学校教育で取り扱う量が増える中で、カリキュラム・マネジメントを上手に実施していかないと消化できなくなっていく実情があります。
2つは社会との関わりの面です。Society 5.0を取り出すまでもなく、一歩先が見えにくく複雑化している社会では「国語」「算数」……などのような学校で決められた単一の教科学習を進めるのではなく、教科を横断したり、融合したり、といった柔軟な発想が必要になってきます。
2 あるカリキュラム・マネジメントの一例
そんな中、カリキュラム・マネジメントを大切にする学校が少しずつ現れています。例えば最近、小学校を訪ねると職員室の前の廊下や研修室内の壁などに、縦軸を教科名、横軸を月にして学習内容をざっと書き出した後、関連する学習内容を線でつないだり、枠で囲んだりしている年間学習表を見ることが多くなっています。例えば、下のような図です(筆者作成)。
この作業を通して、特定の教科の時間の流れだけを見ていたものが、他教科とのつながりとが発見できるよさがあります。しかし……残念ながらそれだけで終わっている学校もあるようです。つながりを見つけることがゴールになってしまい、後は、どこか見えるところに掲示して、「わたしたちはちゃんとカリキュラム・マネジメントをやってます!」というアリバイ工作に使っているわけです。ちょっともったいないなぁ〜と思います。
本当は、この先にカリキュラム・マネジメントの面白さや醍醐味があります。ぜひ、「実」のあるカリキュラム・マネジメントをしましょう。
ここでは、「学級経営観を軸にしたカリキュラム・マネジメント」を提案します。
3 学級経営観を軸にしたカリキュラム・マネジメント
カリキュラム・マネジメントを進めていく際、教科と教科をつなぐだけでは不安定なので教科横断的に展開しやすい生活科や総合的な学習の時間を軸にもってくることが多いように感じます。
この生活科や総合的な学習の時間の代わりに学級経営観をカリキュラム・マネジメントの軸に持ってきます。例えば下のような図を描いてみます(筆者作成)。これは、「学級経営観を軸にしたカリキュラム・マネジメントシート」という意味で、「ケイエイ・カリマネシート」とわたしが名付けているものです。
大雑把に説明します。
@めざす学習集団像(学級経営観)を書き出します。学校目標や学級目標から下ろしてきたり、子どもたちと共につくったりして構わないと思いますが、子どもたちとしっかり共有していることが大切です。
Aめざす学習集団像に迫っていくために子どもたちの変化前と変化後がはっきりわかるような方法を採用して実態を書き出せるようにします。PDCAの視点です。上の例では、Q-Uを使っています。
BとC 目標に向かっていくために、適切な授業(B)と日常生活での取り組み(C)を組み合わせます。
たったこれだけですが、上のような感じに子どもたちと共有した学級経営感をいつも意識して授業や日常生活を進めるだけで、テスト学力のその先にある「生きる力」を育んでいける旅に出かけることができると思います。
【注】
*1 中央教育審議会初等中等教育分科会(第100回)論点整理「4.学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策」
*2 田村学編著『カリキュラム・マネジメント入門』東洋館出版社、2017年