著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
学級崩壊は学級経営力向上のための最良の教科書
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2021/3/12 掲載
 今回は赤坂真二先生に、新刊『アドラー心理学で考える学級経営 学級崩壊と荒れに向き合う』について伺いました。

赤坂 真二あかさか しんじ

 1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院教授。学校心理士。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、即戦力となる若手教師の育成、主に小中学校現職教師の再教育にかかわりながら、講演や執筆を行う。
主な著書に、『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』『学級経営大全』『資質・能力を育てる問題解決型学級経営』『最高の学級づくり パーフェクトガイド』『スペシャリスト直伝! 主体性とやる気を引き出す学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 成功する自治的集団を育てる学級づくりの極意』『スペシャリスト直伝! 学級を最高のチームにする極意』『スペシャリスト直伝! 学級づくり成功の極意』『クラス会議入門』(以上、明治図書)などがある。その他編著書多数。

―質問1 本書は大好評をいただいております『アドラー心理学で変わる学級経営 勇気づけのクラスづくり』の続編として、学級崩壊と荒れをテーマにおまとめいただいています。本書の読み方・おすすめポイントを教えて下さい。

 学級崩壊は長く教師の力量不足や特定の子どもの不適切な行動の連続などと個人的な要因とされてきました。しかし、その後の研究から社会の変化による構造的な要因が指摘されるようになってきました。
 こうした社会的な要因は、小手先のテクニックでは改善しません。それで解決するならばとっくに過去の問題になっているはずです。学級崩壊に対応するためには教師の考え方から見直していく必要があります。
 本書は学級崩壊を克服するためにどうしたらいいかを示す前に、かなりのページ数を割いてどのように考えたらいいかを丁寧に示しました。また、考え方においても「アドラー心理学ありき」ではなく、なぜ、アドラー心理学がこの問題に対して有効なのかも丁寧に述べました。そうすることでアドラー心理学のもつ力を引き出すことが可能となるからです。解決策は、なぜそれが有効なのか理解されたときに、もっとも効果を発揮することでしょう。
 

―質問2 第1章では、ここ数年の学級崩壊の事例を挙げていただきながら、学級崩壊の解決を難しくしている構造についてご紹介いただいています。その中で挙げられている、学級が荒れる学校は、学級の荒れを繰り返しているという「学級崩壊再生産サイクル」について、教えて下さい。

 健康診断で何らかの不具合が見つかったら、普通、人はその再発防止のために何らかの手を打つはずです。しかし、学級経営上の問題は、教師の個人的な問題として片付けられたり、領域そのものが専門性として認知されていなかったりして、教師にとって「学ぶべきもの」となっていないことがあります。学級が荒れたり崩壊したような事例があったならば、いや、そうでなくても今の時代に安全な学級などないという認識に立っていれば、学級が荒れないために何らかの手を打つはずです。しかし、上記のような理由等で学級の荒れに対して無防備な状態が散見されます。そうした学校では、学級崩壊や荒れを反復するサイクルが回ってしまっていると考えられます。

―質問3 第2章では、「学級崩壊とアドラー心理学」として、具体的なエピソードを挙げていただきながら、担任の先生がどのように問題に向き合っていけばよいかについて、まとめていただいています。赤坂先生が手立ての一つとして挙げられている、「学級内のネットワークを正常に機能させる」には、どのようなことが大切でしょうか。

 学級崩壊が起こっているクラスは、適切な行動のスルーと不適切な行動の強化が、あちこちで起こっているのです。つまり問題の本質は、個別の子どもの問題行動ではなく、不適切な行動を誘発し強化するネットワークのあり方です。学級の機能を回復するには、適切な行動の正の強化による増加と不適切な行動への負の強化による減少の積み重ねによって、学級内のネットワークを正常化する必要があります。

―質問4 第3章では、「学級崩壊に向き合う」として、クラスをいい方向に導く具体的な手立てについて、キーワードと共に、様々な角度からご紹介いただいています。「何でも言い合える関係」「取り組みを見守り勇気づけること」など、キーワードだけでもヒントになりそうですが、これらの取り組みに通底している想い(考え方)はどのようなものでしょうか。

 学級内のネットワークの機能不全のほとんどは、コミュニケーション不全から来ていると考えています。あちこちで配線が断ち切れているような状態です。何でも言い合える関係とは、子ども同士のつながりを回復し、情報の流通をスムーズにすることです。 配線が断ち切れていたり、配線そのものが細いと学級という組織は免疫力が弱くなり、すぐに荒れに負けてしまいます。何でも言い合える関係がつくられているクラスは免疫力が高く荒れに強くなります。取り組みの見守りと勇気づけは、体の免疫を上げるための栄養や休養や適度な運動のようなものです。

―質問5 最後に読者の先生方へ、メッセージをお願い致します。

 学級崩壊というと複雑に問題が絡み合った解決困難な課題に思われるかもしれません。確かに、一旦こじれてしまったらその回復は容易いとは言い難いです。しかし、なぜ荒れるかというメカニズムはシンプルなものです。荒れのメカニズムを理解し適切な手を打てば回復不能な問題とはならないでしょう。学級崩壊の問題は「学級経営の教科書」と呼ぶべき、学級経営力の向上にたくさんの示唆を含む問題でもあります。たくさんの方に手にとっていただけると嬉しいです。

(構成:及川)

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