著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
アクティブ・ラーニングでしか道徳の授業は出来ません
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2016/4/11 掲載
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  • 道徳
 今回は西川 純先生に、新刊『アクティブ・ラーニングを実現する!『学び合い』道徳授業プラン』について伺いました。

西川 純にしかわ じゅん

1959年東京生まれ。筑波大学生物学類卒業、同大学院(理科教育学)修了。博士(学校教育学)。臨床教科教育学会会長。上越教育大学教職大学院教授。『学び合い』(二重括弧の学び合い)を提唱。
主な著書に、『アクティブ・ラーニング時代の教室ルールづくり入門』『サバイバル・アクティブ・ラーニング入門』『アクティブ・ラーニング入門』『クラスと学校が幸せになる『学び合い』入門』『気になる子への言葉がけ入門』『子どもたちのことが奥の奥までわかる見取り入門』『子どもが夢中になる課題づくり入門』『簡単で確実に伸びる学力向上テクニック入門』『子どもによる子どものためのICT活用入門』(以上、明治図書)などがある。

―本書のテーマは、次期学習指導要領のキーワードとして注目されている「アクティブ・ラーニング」を実現する『学び合い』道徳授業です。まず、本書のねらいと読み方について教えて下さい。

 道徳の思い出とはどんなものでしょう。
 おそらく、先生が副読本を読みながら発問し、最後にある結論に至る授業です。
 しかし、クラスの中には、その章のタイトルを読んだだけで、何を言うべきかを予想できる子はいます。その子にとっては、退屈な時間です。逆に、最後まで教師の言っていることがチンプンカンプンな子もいます。その子にとっても退屈な時間です。後者の子どもが理解するのに必要なのは膨大な対話なのです。そして、前者の子どもが対話を許されたら退屈から解放されます。さらに、後者の子どもとの対話を通して新たな発見があります。
 アクティブ・ラーニングによって、道徳は新たな展開が生まれます。

―先生が本書の中で述べられていますように、通常の教科学習でのアクティブ・ラーニングに比べて、道徳では「教科内容を通して」という縛りが比較的弱く、教科を横断して求められる「汎用的能力」を直接的に育成出来るとも言えるかもしれません。通常の教科学習と併用・相乗的な効果を目指す取り組みが求められると思いますが、そのためにはまず何が大切でしょうか。

 道徳、また、各教科の実践を専門的に深めている方はおられます。その場合は、その視野は「その教科の学習」ではないでしょうか? しかし、我々が本当に目指すべきは、子どもが30年後、40年後、50年後に幸せであることだと思います。そのときに何が一番大事なのでしょうか? 私は、それは仲間だと思います。その視点で考えれば道徳と各教科は有機的に繋がることが出来ます。一方、「その教科の学習」のレベルでは繋がることは不可能だと思います。

―これまでの道徳授業では、正しいとされる道徳的な価値を子どもたちの心に内面化させる「価値の内面化」の授業と、子どもたち自身が何が正しいかを価値づける、モラルジレンマに代表される授業の、主に2つの枠組みがありました。(4章で触れられています) これからの道徳授業では、「主体性」「協働」というキーワードから、価値の押し付けなどではなく、これまで以上に子どもの能動性を引き出す授業づくりが求められてきますが、どのような授業づくりが大切でしょうか。

 授業によって「価値の内面化」や「モラルジレンマ」をする前から、友情は大事であること、いじめはいけないことを子どもは十分に「分かって」います。しかし、それが行動に必ずしも表れません。行動に表れる規範は個人の中にあるのではなく、集団の中にあるという発想の転換が必要です。
 もしも、集団の中にあると考えるならば、協働は必須要件です。従って、「道徳はアクティブ・ラーニングでも出来ます」ではなく、「道徳はアクティブ・ラーニングでしか出来ません」というのが正しいのです。

―本書では小学校・中学校の魅力的な授業づくりが収録されていますが、アクティブな授業づくりを実現するには、「題材探し」「課題づくり」が重要なポイントになってきます。子どもたちのやる気を引き出す課題づくりには、何が大切でしょうか。

 そのように考えるのが普通です。しかし、「題材探し」「課題づくり」は本当はそれほど重要ではありません。
 と言われると、「え?」と思われると思います。しかし、誰にとっての「題材探し」「課題づくり」でしょうか? 「子ども」と言いたいところですが、子どもという子どもは一人もいません。一人一人が違います。従って、その子に合った「題材探し」「課題づくり」をしなければなりません。だから、2つのことが大事です。
 第一に、子どもが自分なりの「題材探し」「課題づくり」が出来る、自由度が高い「題材探し」「課題づくり」であることです。
 しかし、すべての子どもがそのレベルのことを出来るとは限りません。反対に、そのレベルのことが出来る子ども「も」います。だから第二に必要なのは、「一人も見捨てずに全員達成する」ことを求め、その意味を語れるか否かなのです。

―通常の教科学習では客観的な評価が可能ですが、道徳、さらにアクティブな授業づくりでは、子どもたちの成長の見取りも課題となってくると思います。そのポイントについて教えて下さい。

 3つのことが大事です。
一つは、その課題は誰を対象としたものであるかを明確にすることです。
二つは、何を達成することを目的にするかを明確にすることです。
最後に、それを評価し、フィードバックすることです。
 例えば、挨拶運動を想定しましょう。その場合は、「誰を対象」とするかは「学校の全員」です。「何を達成」するかは「朝の挨拶をする」というものが考えられます。そして、毎週「学校の全員が朝の挨拶が出来たか」を「子どもたち」が評価します。その結果をもとに「子どもたち」が改善策を考えるのです。
(なお、詳細は『子どもが夢中になる課題づくり入門』に詳しく書きました。)

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 子どもたちがこれから社会人として生きる世界は厳しい世界です。少なくない人が最低限の生活を強いられます。そして、安定した職に就いている人も、いつ職を失うかもしれない時代です(詳細は『サバイバル・アクティブ・ラーニング入門』をご覧下さい)。その中で生き残れる子どもを学校教育で育てなければならないのです。そのような教育の中で、道徳教育はキーとなります。

(構成:西浦)

特集 「特別の教科 道徳」
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