著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
『学び合い』入門段階を終え、次のステージに進むために
上越教育大学教職大学院教授西川 純
2016/7/22 掲載
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 今回は西川 純先生に、『学び合いの手引きシリーズ』として2冊が同時刊行された新刊『資質・能力を最大限に引き出す!『学び合い』の手引き ルーツ&考え方編』『資質・能力を最大限に引き出す!『学び合い』の手引き アクティブな授業づくり改革編』について伺いました。

―今回、『学び合い』の手引き書として、『ルーツ&考え方編』『アクティブな授業づくり改革編』のシリーズ2冊で同時刊行されました。まず、このシリーズのねらいと読み方について教えて下さい。

 教師向け実践書の圧倒的大多数は、「すぐに実践できる」というものです。また、関連した書籍を読んだことを前提にせず、その本の中で完結させたものです。これは忙しい学校現場の先生の実態に即したものです。これは私の本も例外ではありません。
 しかし、状況が変わりつつあります。『学び合い』の実践者の裾野が広がり、数多くの『学び合い』本を読み、一通りの『学び合い』実践を出来るようになった方が多くなってきています。そのような方々は、「実践できる」から「よりよく、自分に合った実践」を求めるようになりました。そのためには、「どのようにしたら」ではなく「なぜ?」ということを理解する必要があります。本シリーズは、そのような入門段階から次のステージに進みつつある先生方のために用意したものです。

―学校現場で『学び合い』が急速に広がっています。今、改めて注目されているのはなぜだと思われますか?

 今までは良くも悪くも今までの延長上の実践で大丈夫でした。ところが、この二十年前から、それが不可能になりました。
 第一に、保護者が学校に要求するようになりました。現状の授業は成績中もしくは中の下に合わせています。結果として、成績上位をふきこぼし、成績下位を落ちこぼれさせていました。その問題を意識する教師は少なくありませんが、仕方がないこととしていました。そして、保護者も仕方がないこととしていました。しかし、今の保護者は違います。我が子に合った授業を求めています。ところが、一人の教師が三十人の子どもを教えるという今の授業では、それは「絶対」不可能なことです。
 また保護者だけではなく、社会も「社会人の人材養成」を学校に求めるようになりました。ところが、現状の学校教育は、即戦力の社会人養成は自らの仕事ではないと考えています。結果として、卒業しても社会で生きられない人を大量養成してしまいます。そのため、社会はアクティブ・ラーニングを求めたのです。
 このようなことから、今までの延長上ではなく、そもそも学校教育とは何かを問い直す必要が生まれてきたのです。

―次期指導要領に向けた動きの中で注目されている言葉の一つに、「協働」という言葉があります。それに伴い、ペア学習やグループ学習など、学習形態にも注目が集まっていますが、「協働」を実現するポイントは何でしょうか。

 学校教育の目的が子どもを少し大人にすると考えるならば、ペア学習やグループ学習でもいいでしょう。しかし、学校が「社会人養成」を仕事とすると考えるならば、ペア学習やグループ学習ではダメであることは明白です。例えば、教師の職場である職員室でペア学習やグループ学習が有効でしょうか?
 我々教師が新規採用者として職場に入ってからどのような協働の中で成長したでしょうか?それが「本当の協働」です。

―これから求められる主体的・協働的な学びの中では、先生方の役割というものも変わってくる部分がありそうです。これまで以上に子どもの能動性を引き出す授業づくりが求められてくる中での「教師の立ち位置」「教師の役割」とはどのようなものでしょうか?

 職場に置き換えるならば、今までの教師の立ち位置は、新人教員と学年主任の立ち位置です。つまり、同じ平面に立ち、両者の違いは知識・経験の量です。しかし、一人の学年主任が三十人の新人教員を指導できるでしょうか?無理です。
 これからの教師の立ち位置は、校長です。管下の職員に同じ目標を与え、共感させ、評価する立場です。教諭とは違った次元に立ちます。それによって数多くの職員がやる気を持ち、パフォーマンスの高い集団を形成します。従って、これからの優れた教師の姿を知りたいならば、今まで仕えた校長を思い起こせば答えがあります。

―今回、同時に出される2冊はそれぞれ何をメインに書かれているのでしょうか?

 初心者の場合は学校観、子ども観には興味を持ちません。また、方法論・テクニックは、使えればいいのが初心者です。しかし、学校観、子ども観と方法論との関係を理解したいと考える人もいます。また、そのテクニックが有効であることは分かったとしても、なぜ、そんなテクニックを思いついたのか知りたいと思う人もいます。その疑問に答える本が『資質・能力を最大限に引き出す!『学び合い』の手引き ルーツ&考え方編』」です。
 また、『学び合い』と他のアクティブ・ラーニングとの違いをどのように説明したらいいのだろうか?という疑問を持つ方もいます。これを理解し、理論武装することは、今後の“アクティブ・ラーニング洪水”の中で生き残るには、必須なものです。これに応える本が『資質・能力を最大限に引き出す!『学び合い』の手引き アクティブな授業づくり改革編』です。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 『学び合い』は極めてシンプルな原理原則で作り上げられた理論であり、方法論です。私の本は、その最初の人が安全に確実に実践できるノウハウをまとめて提示しています。どのようなスポーツの入門段階は決まり切った基本動作の繰り返しをします。そのようなものです。
 しかし、『学び合い』はシンプルなので自由度は極めて高い。一人一人に合わせた実践が可能です。しかし、そのためには『学び合い』のコアはどこであり、枝葉末節なところはどこかを見極める必要があります。本書はそのための本です。この本を基に、あなたの『学び合い』実践を生み出して下さい。

(構成:及川)

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