著者インタビュー
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気になる子を伸ばす学級は、一人残らず伸ばす学級を実現する
上越教育大学教職大学院教授赤坂 真二
2015/9/11 掲載

赤坂 真二あかさか しんじ

1965年新潟県生まれ。上越教育大学教職大学院准教授。学校心理士。「現場の教師を元気にしたい」と願い、年間約100回の講演を実施して全国行脚。19年間の小学校勤務では、アドラー心理学的アプローチの学級経営に取り組み、子どものやる気と自信を高める学級づくりについて実証的な研究を進めてきた。2008年4月から、より多くの子どもたちがやる気と元気を持てるようにと、情熱と意欲あふれる教員を育てるために現職に就任する。主な著書に『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル 小学校編』『いじめに強いクラスづくり 予防と治療マニュアル 中学校編』『思春期の子どもとつながる学級集団づくり』『自ら向上する子どもを育てる学級づくり 成功する自治的集団へのアプローチ』『クラス会議入門』『スペシャリスト直伝!学級を最高のチームにする極意』『一人残らず笑顔にする学級開き 小学校〜中学校の完全シナリオ』『最高のチームを育てる学級目標 作成マニュアル&活用アイデア』『スペシャリスト直伝!学級づくり成功の極意』『赤坂真二―エピソードで語る教師力の極意』(以上、明治図書)などがある。

―本書は「学級を最高のチームにする極意」シリーズの第6弾として、テーマは「気になる子を伸ばす指導」です。本書のねらいと読み方について、教えて下さい。

 子どもたちは、居心地のいい環境で力を伸ばします。気になる子は、その他の子よりも教室の居心地のよさに敏感です。気になる子にとって居心地のいい学級は、他の子にとっても居心地がいいはずです。
 本書は気になる子という切り口を通して、一人残らず居心地のいい教室をつくるためにはどのような考えで、どのようにしたらいいかを多様な事例を通して示す、とても実用的な書に仕上がっています。

―本書のテーマになっている“気になる子”には暴力的である、突発的に予想外の行動をする、不登校傾向にある、無感情である、など色々な意味が含まれると思います。そのケースによって対応は異なると思いますが、それらの子を排除するのではなく、“居場所をつくり、輝かせる”には、まずどのような考え方・アプローチが必要なのでしょうか。

 もし、仮に気になる子どもたちが、暴力的であったり、衝動的であったり、不登校傾向であったりしても、いつもそうしているわけではないし、ありのままの彼らに向き合ってみたら、気になる行動をしている時間はほんのわずかです。その行動が、他の子どもたちと比べて少し印象的だったり、頻度が高かったりするだけです。
 つまり適切な行動もしています。しかし、それが注目されていないのです。気になる子どもたちの、気になる行動ばかりに注目するのではなく、それ以外の行動にも関心を向け、そこを強化していきます。

―先生は本書の中で、「学級崩壊」や「授業崩壊」は“気になる子”が直接の原因ではなく、「教師の指導力の解体」であると述べられています。学級はどのようなことが原因で荒れてしまうのでしょうか。本書でも詳しく述べられていますが、「学級の荒れのプロセス」について、教えて下さい。

 学級の荒れは、不適切な言動への教師の過剰な注目によって進行していきます。適切な行動で、居場所が見出しにくい子どもたちは、不適切な行動をして注意されたりして教師の関心を引くことで、居場所を見出そうとします。そうして教師が、そうした子どもたちに関心を向け続けることで、他の子どもたちの居心地が悪くなってきます。
 最初は、不適切な行動をする子どもたちは、割合で言ったら少数です。しかし、不適切な行動に教師が過剰に注目することで、教師が他の子どもたちの信頼を失うことで学級は荒れるのです。

―先生は「気になる子」に共通のものとして「人間関係に問題がある」ことを挙げられています。学校現場においては、教師と子ども、または子どもと子どもの関係性において、「関係性が崩れてしまっている」ところからのスタートになるケースもあると思いますが、「立て直し」が求められる際に、まず大切なことは何でしょうか。

 Q3で示したように、子ども同士の信頼関係の崩れの前提として、教師と子どもたちの信頼関係の崩れがあります。信頼されていない教師が、子ども同士の関係をつくろうといくらはたらきかけても、効果は出ません。だから、まず、教師が子どもたちと個人的信頼関係をしっかりと構築することから始めます。

―「気になる子」が変わるには、教師の働きかけだけでなく、本人の努力も必要になります。勇気づけ、やる気を高めるには、どのような働きかけが有効でしょうか?

 「この子が変わらなきゃ」と思っている教師の指導はうまくいかないと思います。その子が適切な行動をしようとする勇気をもつのは居場所ができたときです。
 まずはその子の居場所をつくることです。そのためには、まずその子を本気で信頼し尊敬することです。そして、そのためには、どれだけ教師や他の子どもたちを困らせても、その子の良さを見つけよう、見続けようと決意できるかです。

―「気になる子」については、家庭面での保護者の役割も重要です。「思春期」と言われるような時期には、元来はおとなしかった子どもが変化することもあり、戸惑いを覚える場合も少なくありません。保護者とのかかわり方について、教えて下さい。

 保護者と連携するには、普段から保護者と連絡し合うことが大事です。
 授業参観、懇談会、連絡帳など様々な機会を捉えて一対一の信頼関係を築くようにします。問題が起こったときだけ保護者と連絡をとっていては、いつも話題がその子のネガティブなものになってしまいがちです。
 普段からその子の良さを伝え、保護者には自分の息子、娘をあたたかく見ている教師であることを示しておきます。子どもたちの変化に「どうするか」ではなく、何があっても連携できる関係を構築しておくことが大事なのです。

―最後に、読者の先生方にメッセージをお願いします。

 気になる子が居場所を見いだせるような学級は、一人残らず居心地のいい学級になるはずです。一人一人と向き合い、一人残らず居心地のいい学級づくりを志向してきた教師たちの考え方と技術がぎっしり詰まった一冊です。 
 本書が、皆さんの一人残らず伸ばす学級づくりの一助となることを願ってやみません。

(構成:及川)

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