堀江式 国語授業のワザ
国語授業のお悩みをズバッと解決!“ワザの堀江”先生が指南する、堀江式の大ワザ&小ワザが満載!
堀江式 国語授業のワザ(23)
「学びのベスト3」シートによる授業びらきをやってみよう!
―「身に付けた力」シートと「身に付けたい力」シートの活用―
兵庫教育大学大学院教授堀江 祐爾
2014/4/5 掲載

【「国語科授業びらき」のワザ】

新年度を迎えるにあたり、子どもが授業に意欲的に取り組む「国語科授業びらき」にするワザを教えて下さい。

ココがポイント!

「国語科授業びらき」の核となる「身に付けた力」シートと「身に付けたい力」シート

 「平成20年版小学校学習指導要領解説国語編」において「第4章指導計画の作成と内容の取扱い」の下の「1 指導計画作成上の留意点」の「弾力的な指導に関する事項」には、次のように記されています。

児童の言語能力が螺旋的に高まるよう,それぞれの学年の学習指導を孤立させず,児童の発達の段階を見通して目標の系統性を保ちながら柔軟でしかも弾力的な運用を図り,系統化した効果的な指導がなされるよう計画を立てていくことが大切である。

 つまり、弾力な指導を行うためには、次のようなことがらに留意する必要があります。

★児童の言語能力が螺旋的に高まるように
★それぞれの学年の学習指導を孤立させないように
★児童の発達の段階を見通す

○目標の系統性を保ちながら柔軟でしかも弾力的な運用を図る
○系統化した効果的な指導がなされるように

 上の★印に関係した「国語科授業びらき」における核となる工夫として、「身に付けた力」シートと「身に付けたい力」シートの例を示しましょう。
 三木惠子先生(兵庫県たつの市立小宅小学校)による「国語科授業びらき」(6年)の成果物です。

効果抜群! 堀江式 大ワザ&小ワザ

ワザ1 それまでの学年の国語学習において身に付けた「言葉の力」を書かせる

 最初の画像は「身に付けた力」シートです。6年生ですので、「5年生までの国語学習でこんな勉強をしたよ ベスト3」を書かせます。注目したいのは、「心に残っている学習を3つあげましょう(理由も)。」という指示だけでなく、「その学習活動で、どんな力を身に付けましたか。」ということが加えられているところです。
 この【それまでの学年の国語学習において身に付けた「言葉の力」を書かせる】ことが、このシートのねらいなのです。このシートが30数人分集まれば、この学級の子どもたちがそれまでにどのような「言葉の力」を身に付けてきたかを、教師が把握することができます。

例

 この学習者は、4年生のときに三木学級におり、「『ごんぎつね』3冊つなぎブックトーク学習活動」を行っています。そのときに「言葉の力」が伸びたことを実感したのでしょう。「ブックトークで話す力」「ブックトークで書く力」を身に付けたと書いています。
 また、5年生での学習についても、次のような「言葉の力」を身に付けたことを自覚できています。

「ニュース番組作りの現場から」
 ・ニュース番組を話す力。
 ・ニュース原こうを書く力。
 ・ほかのはんのニュースを聞く力。
「大造じいさんとガン」
 ・登場人物の気持ちを考えながら読む力。
 ・小見出しを考えて書く力。

 
 子どもたちのこうした記述を読むことにより、子どもたちがどのような「言葉の力」を身に付けてきているかを、教師はしっかりと把握することができるに違いありません。

ワザ2 この学年での国語学習において身に付けたい「言葉の力」を書かせる

 次の画像は「身に付けたい力」シートです。「6年生の国語学習わくわくベスト3 見通しシート」と名付けられています。そして、次のような作業手順が示されています。

☆6年生の国語の教科書全体に目を通してみましょう。どんな学習をするのでしょう。(教科書P.6、7にヒントが……) 
⇒教科教材をざっと読ませてどのような学習をするかの見通しをさせます。その際に、目次の後に掲げられている「学習の見通しをもとう」(光村図書の場合)を参照させるようにしています。

☆楽しみにしている学習を三つ選びましょう。選んだ理由も書きましょう。どんな「ことばの力」を身に付けたいですか。→話す・聞く、書く、読む(音読・読み取り、読書)領域から具体的に書きましょう。
⇒選んだ理由を書かせることにより、子どもたちがどんな学習を予想しているか、望んでいるかをある程度知ることができます。
⇒「どんな『ことばの力』を身に付けたいか」と問うことにより、国語の学習活動を通してしっかりと「言葉の力」を身に付けることが重要であることを、子どもたちに自覚させることができます。

例

 この学習者の「選んだ理由」を読むと、子どもなりにどのような言語活動を展開するのかを想定できていることが分かります。30数人分の記述を読むことにより、教師にとって、どのような言語活動を行うかについて考える際の大きなヒントになるに違いありません。

「生き物はつながりの中に」

  • 身の回りに動物がたくさんいるので、体験と引き寄せて考えたいからです。

「ようこそ、わたしたちの町へ」

  • 図などを書いて表現などで話す力を身に付けたいからです。

「海の命」

  • 物語などで文章を引用する力をのばしたいからです。

 この「身に付けた力」シートと「身に付けたい力」シートにより、先に述べた「小学校学習指導要領解説国語編」が求める次のことがらを満足することができます。

★児童の言語能力が螺旋的に高まるように
⇒螺旋的に高めるためには、子どもたちがそれまでにどのような「言葉の力」を身に付けてきたかを教師が把握することが重要です。
★それぞれの学年の学習指導を孤立させないように
⇒これまでの学年の学習指導とこの学年の学習指導をつなぐという意味を持っています。
★児童の発達の段階を見通す
⇒子どもそれぞれの発達の具合をある程度把握できます。

 新年度における「国語科授業びらき」の際の参考になれば幸いです。

堀江 祐爾ほりえ ゆうじ

兵庫教育大学大学院教授、元中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会国語専門部会委員、平成20年版中学校学習指導要領(国語)作成協力者、「国語教育の実践と研究をつなぐ会」世話役代表。
主な著書に『「国語力」向上の授業改革1 国語科授業再生のための5つのポイント』『小学校新国語科 言語活動の展開がよくわかるシリーズ1 書く力がぐんぐん伸びる!「言葉のワザ」活用ワーク』、などがある。最新刊『小学校国語科授業アシスト 実物資料でよくわかる!教材別ノートモデル40』が好評発売中!

(構成:林)
コメントの一覧
4件あります。
    • 1
    • 2014/4/5 13:10:18
    子どもたち一人一人が「この学習でこの力を身に付けた」と言語化できることがすばらしいです。子どもたちにとってこの学習活動は、次の学習へのイメージをもつことにもつながるように思います。「堀江式」では、子どもたちが身に付けた力を、常に子どもたち自身の言葉で振り返らせることを大切にしておられます。これまでの連載においても、「堀江式」の連載においては、それをどのようにすれば教室で実際に展開できるのかを具体的に示してくださっていることが、いつもありがたいと思っています。明後日は始業式です。今回示してくださった方法を、ぜひ、自分の教室で取り入れたいと思います。ありがとうございました。
    • 2
    • nekoneko
    • 2014/4/12 10:47:27
    まず、自分で自分が身に付けた力を意識するというところを見習いたいと思います。さらにそれを目に見える形で言語化することで、さらに意識が高まると思います。その際に、自分が印象に残った具体的な教材を思い浮かべるところも参考にしたいと思います。何となく、ではなく、常に証拠を示しながら、考えをまとめていくのですね。さらに、これから身に付けたい力を考えさせる際の根拠とするために、これから学ぶ教材に目を通させ、学習内容とそこで身に付けたい力の見通しをさせるというのは具体的なイメージができて、学習意欲につながるのではないかと思います。
    • 3
    • がんばろう、教師!
    • 2014/4/13 13:24:39
    新しい学年での授業が始まりました。子ども達に「どんな力を付けてきたのか」書かせてみると、「力って何のことですか?」尋ねる子どもが必ずたくさんいる。学習指導要領が改訂になって5年。それに沿った教科書を使い始めて四年目になるというのに「ことばの力」を付けるという意識がない教師が多いことに気づかされる。教材を教えるのにせいいっぱいで、いろいろな研究会に行ったり本を読んだりして、授業改善や「付けたい力から単元を創る」ことなど学んでいない教師が多いのではないかと寂しくなる。堀江先生が書かれているような「自身が身に付けたい力」「身に付けたい力」を意識した授業を行うことが、子ども達自身がはっきりとした目標を持ち自主的に意欲的に取り組む国語教室を創ることになると思います。
    • 4
    • がま
    • 2015/2/5 18:33:33
    なるほど!「これまでに身に付けた力シート」は、ただ単に、子どもたちに今までの学習を振り返らせて、これからどんな力をつけるかを書かせるためだけでなく、教師自身も子どもたちが学習してきたことを把握できるんですね。国語における学習も、他教科同様、系統性を持たせて学習指導を行っていきたいものです。
コメントの受付は終了しました。