子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ
学校生活でも授業でも、教師と「話すこと」は切っても切れない関係。話術、言葉の選び方、コミュニケーション力、コーチング等、教師に必要な言葉のワザを伝授します。
子どもの心をグッとつかむ言葉のワザ(23)
論理的思考力を鍛える「証拠書き出し」作戦
パラグアイ ニホンガッコウ大学学長補佐西野 宏明
2021/4/15 掲載

事例発問に対してサッと書き始められる子どもの2つのタイプ

 前回の連載「だれでも意見が書けるようになる「結論+理由」の型」では、発問に対してサッと書き始められる子と、なかなか書き進められない子がおり、なかなか書き進められない子どもにおすすめの「結論+理由」の型をご紹介しました。
 今回は、サッと書き始められる子どもに関してです。

 サッと書き始められる子どもは、2通りに分かれます。

  1. 「結論」+「1つか2つの理由」を書く子。
  2. 「結論」+「2つか3つの理由」+「論拠をもとにした思考、分析」を書く子。

 1のタイプの子どもを2のレベルに高める指導をご紹介しましょう。

挿絵

解説

1のタイプの子たちの書き方の特徴

 「私はBは違うと考えます。なぜなら〜からです。Cも違うと考えます。なぜなら〜からです。Aが正しいと考えます。なぜなら〜からです」
 1のタイプの子は、このように、結論+理由1個、結論+理由1個…の繰り返しになってしまっています。
 自分の意見を支える根拠があまりにも少ないのです。
 これでは、説得力が低いため、話し合いの際に活躍することはできません。どの子も自分の意見を発表できる喜びを味わうとともに、しかも友達と議論できる2のグループのレベルまで高めてあげたいものです。

2のレベルに高める考えの深め方

 次のように説明と指示をします。
 「考えを深めたり、鋭い考えをもったりするためには、まずすべきことがあります。それは『だからその意見は違っている』という証拠をたくさん教科書から探しだすことです」
 自分が選ばなかった方の選択肢の盲点を探す作業です。
 「次に『だから自分の意見の方が正しいんだ』という証拠をたくさん集めます。証拠、根拠は多いほど自分の考えが正しいということを証明できます。どんどん探して書き出して、自分の論理を固めてみてください」
 自分が選んだ選択肢を肯定する材料をたくさん見つけ出す作業です。

考えを深めるとは?

 証拠となる言葉が見つかりました。そうしたら、その言葉に対する自分の考えを深めていきます。考えを深めるというのは、「だからここが正しい」という一つの証拠について、しつこく、長く、詳しく書くことです。「あぁ、だからこっちが正しいんだな」と、誰が読んでも納得できる文章を書けたらすごいのです。

考えを深めるためのキーワード集 〜思考・分析の力を高めるつなぎ言葉〜

 「書く内容はなんとなくあるけど、書き方がわからない」という子には、「次の言葉をうまく使うと書きやすいかもしれません」と言って下記の表を紹介します。この中から今書きたい言葉と言葉をつなぐのに、ピッタリくるものを選ばせます。

「結論」+「理由」+「キーワード」+「分析」「解釈」

 この書き方をマスターすれば、あるいはマスターする過程で、かなり論理的思考が鍛えられます。練習すればだれでも書けるようになります。

考えを深めるキーワード

・〜ということは、〜ことですよね。
・〜と書いてあるので、〜ということになりますよね?
・もしも〜なら〜ではありませんか(〜はずです)。 
・でも〜。
・例えば〜。
・〜を比べてみると〜。    
・しかも〜。
・要するに〜。
・だから〜。

ここがポイント!

  • 「結論」+「理由」+「キーワード」+「分析」「解釈」このセットが一つの型!今月の「言葉のワザ」
  • セットで書けている子の文章を読み上げたり、コピー配布したりして紹介して広げていく!
  • 書くことができる子どもを議論できるレベルまで高める!

西野 宏明にしの ひろあき

東京都の公立小学校を10年間勤めたのち、2019年7月よりパラグアイの私立ニホンガッコウで学校顧問(教育コンサルタント、学長補佐)に就任。
初任時代の初めての授業で挫折し、教師修行を始める。
日本各地の教育イベント、セミナー、サークルに参加。自分自身でも若手教師向けのサークルやセミナーを主宰した。毎月5万円以上は読書やセミナー参加費に費やし、自己研鑽に励んだ。その集大成として3冊の単著『子どもがパッと集中する授業のワザ74』『子どもがサッと動く統率のワザ68』『熱中授業をつくる!打率10割の型とシカケ―そのまま追試できる「大造じいさんとガン」』を上梓。
2017年よりJICA青年海外協力隊員としてパラグアイへ派遣され、2年間、現地の教育力向上に努める。2019年3月に公立小学校を退職し、現職。

(構成:木村)

コメントの受付は終了しました。