「単元を貫く言語活動」ここが知りたいQ&A
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水戸部先生に聞く!「単元を貫く言語活動」Q&A(13)
学ぶ必要感や必然性を引き出す板書の工夫
文部科学省教科調査官水戸部 修治
2015/4/17 掲載

今年度も単元を貫く言語活動の授業に取り組んでいきたいと思いますが、板書の際にはどのようなことに気を付ければよいでしょうか。

まず、板書の機能を確かめてみましょう。大きくは、次のようなことが挙げられるでしょう。

  • 子供たちが学習のめあてや、1時間の展開を把握できるようにする。
  • 教師が指導のねらいに応じて、指導すべきことを明示する。
  • 子供の発言を取り上げ、交流や相互理解を促進する。

 つまり、教師が提示したい知識を板書するのみならず、子供が学習をよりよく進められるようにしたり、交流を促進したりするといった機能があります。
 続いて、具体的な板書内容として、基本的には次のようなことが考えられます。

  • 学習のめあて
  • 子供の発言や学習状況を取り上げた記述
  • 学習の振り返り

 学習のめあてと振り返りは、教師の指導のねらいに基づくとともに、単元を貫く言語活動と結び付くように示すことが大切です。まためあてと振り返りの2つがきちんと対応していることが重要です。子供の発言や学習状況を取り上げる際は、単に発言順に記述するだけではなく、指導のねらいに基づいて、子供の主体的・協働的な学習を促すため、構造的に板書することが大切になります。

板書のポイントがよく分かりました。では、もう少し具体的なことを教えて下さい。特に、単元を貫く言語活動の授業での単位時間のめあての示し方が形式的になってしまって、どう工夫したらよいか悩んでいます…。

これまでどのようにめあてを板書してきたのかを振り返ってみましょう。例えば、

3の場面の、○○の気持ちを読み取ろう

といっためあてになっていませんでしたか。これでは、子供にとっての学ぶ必然性もありませんし、指導のねらいから見ても漠然としすぎています。
 例えば、本時のねらいが、「『登場人物の性格』をつかむこと」であれば、それがめあてとしてはっきりと表れていることが望ましいでしょう。その際、単に指導事項をそのまま子供に下ろしてしまうのではなく、次の板書例のように、「登場人物の性格を友達にもちゃんと伝わるように説明したい」といった学ぶ必然性が生じるように提示することが重要です。

めあて 豆太のせいかくをせつ明しよう

2015年4月号図1

 また、次のような工夫もあります。

めあて 心に残った場面についてすいせん理由をはっきりさせて読もう

2015年4月号図2

 本時のめあてが、単元を貫く言語活動と結び付くのだということを明示していますね。「本を推薦する」という言語活動を明示することによって、単に心に残った場面を読み取るのではなく、推薦理由にふさわしい優れた叙述を手掛かりにして、自分の心に残る場面描写を見付ける学習をするのだということが意識できるようにしているのです。

学習のめあてについて、板書の工夫がよく分かりました。他にも優れた板書の工夫をたくさん教えて下さい。

はい、月刊誌『授業力&学級経営力』2015年4月号から、「授業力アップ! 学年別・今月の板書アイデア「単元を貫く言語活動」の国語授業・板書アイデア」のコーナーでは、次のように、具体的な板書モデルを示して、単元を貫く言語活動の授業の板書のポイントを解説しています。毎月小学校全学年の事例を掲載していますので、是非参考にしてみて下さい。

2015年4月号図3

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ここをチェック!言語環境改善のポイント

単元を貫く言語活動を位置付けた授業づくりに向けて、教室の言語環境をよりよいものにするためには、次のポイントに留意しましょう。

  1. 学習のめあては、単元を貫く言語活動と結び付くように板書されていますか。
  2. 教師の指導のねらいが、子供にとって必然性のある学習のめあてとなるように板書が工夫されていますか。
  3. 子供の発言を、指導のねらいに応じて整理して示した板書となっていますか。

水戸部 修治みとべ しゅうじShuji Mitobe

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官。小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、平成20年10月より現職。
 『「単元を貫く言語活動」を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』『単元を貫く言語活動のすべてが分かる!小学校国語科授業&評価パーフェクトガイド』『「単元を貫く言語活動」授業づくり徹底解説&実践事例24』『小学校国語科 言語活動パーフェクトガイド 1・2年/3・4年/5・6年(全3冊)』など、著書多数。

(構成:木山)
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • たなか
    • 2015/4/19 10:58:14
    板書は決して単独で存在するのではなく、指導者が作り上げた単元構想、指導計画の中にあるはずですよね。そのためにも、単元のねらい(どの指導事項に重点を置くのか)をはっきりさせる必要があります。この一単位時間の授業でそれをどこまでおさえるのかをデザインできていれば、おのずと板書のあり方も決まってくると思います。水戸部先生の御指導の通り、学びの必然性や目的意識、そして相手意識を常に子どもに感じてもらう板書を試行錯誤しながら目指したいですね。(つづく)
    • 2
    • たなか
    • 2015/4/19 11:15:41
    続きです。板書は基本はリアルタイムですよね。もちろん予め子どもの意見を想定していたり、板書計画はあります。でも子どもの思考・判断・表現、つまり「学び」と、指導者が導きたい方向が合致するように書くためには、やはり当日の子どものその場の息づかいを察知する必要もあります。その意味では、板書は入念に用意された「ライブ」ですね。ふと今思いつきましたが、そのライブ(板書)は子どもと指導者の「協働的な言語活動」と言えるかもしれません。素晴らしい板書が芸術を感じさせるのは、そのせいかな。いやあ、早くそんな境地に立ってみたいです。
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