板書王のとっておき算数授業
これまで数々の授業・板書記録を残し続けてきた板書王が教える、子どもたちが授業に食いつく、とっておきの板書・授業ポイントが満載!
板書王のとっておき算数授業(22)
二等辺三角形はどこまで太らせることができるの!?
3年「三角形と角」(5/10時間)
新潟県新潟市立上所小学校二瓶 亮
2022/3/10 掲載

本時のねらい

 二等辺三角形の底辺を伸ばしていくという活動を通して、二等辺三角形と正三角形の関係について理解するとともに、やがて二等辺三角形を作図することができなくなる(直線になる)ことを理解する。

板書

図1

板書のとっておきポイント

  • 二等辺三角形の底辺を1pずつ伸ばしていくという場面であり、視覚的に変化を感じ取りやすくするため黒板を横にワイドに使うことにした。どこまで二等辺三角形として成り立つかという線引きをする上でも、横にワイドに使うことが生きてくる。

授業の流れ

1問題場面の把握と課題の焦点化(20分)

この三角形(5cm/5cm/3cm)をノートに作図しましょう。なんという三角形かな?

二等辺三角形だね。

コンパスを使えば簡単。

全員かけたようですね。次は、これ(5cm/5cm/4cm)です。ちょっと難しいかもよ?かけるかな?

簡単だよ。さっきと同じじゃん。

そうだよ。下の辺が1cm伸びただけだよ。

ちょっと太った感じがするね。

では、下の辺をさらに1cm伸ばしてみよう。どうなるかな?

次は、二等辺三角形じゃなくなるよ。

正三角形だね。その次は、また二等辺三角形に戻るんじゃないかな。

ここまでで、正三角形が二等辺三角形の特殊な場合ということが感じられますか?

うん!二等辺三角形の等しい辺の数が2つから3つになったら正三角形という名前になるってことだね。

また二等辺三角形に戻るということを確かめてみましょう。下の辺をさらに1cm伸ばしますよ。

だんだん背が低くなって、太ってきているね。

図2

このまま太らせていったらどうなるのかな?

おもしろいことを考えている人がいますね。○○さんが言うように、この二等辺三角形をこのまま太らせていったらどうなるのかな?

いつかは平らになっちゃうんじゃない?

10cmまではいけるんじゃない?

11cmかな?いや、12cmかも。

(ここで、自分の考える長さに挙手させた。10cm:多数、11cm:1人、12cm:2人、13cm以上:2人)

では、ノートに作図して調べてみましょう。

(7分ほど調べる時間とした。個人で調べても良いし、近くの人と協力しても良いこととしている。)

2作図出来なくなる理由を考える(25分)

調べた結果を教えてください。

9cmまではできたよ。

10cmだと平らになっちゃった。

10cmのときは、ただの線になっちゃう。

11cmだと、1cmの隙間が空くね。交わらないから頂点ができない。

11cmのときは上側じゃなくて下側に頂点ができると思っていたけど、そもそも交わらないんだね。

と言うことは、9cmまでは二等辺三角形になるけど、10cmからは二等辺三角形にならないってことだね。

図3

あっ!分かった!どうして9cmまでしかできないのかが分かったよ。

え?どういうこと?

9cmまでしか二等辺三角形にできない理由が分かったという人がいるんだけど、どういうことだろう?

よく分からない…。

5+5=10でしょ?この10cmは9cmよりも大きいから大丈夫だけど、ぴったり10cmかそれよりも長いと二等辺三角形ができないんじゃないかな。

何か式が出てきたけど、5+5ってどこのことを言っているのかな?

5+5は斜めの2つ辺の長さのことだよ。

そっか!斜めの2つの辺の長さの合計が10cmだから、下の辺の長さが10cmだとちょうど平らになるのか。だから下の辺の上でちょうど交わって頂点ができるんだね。

そうそう。斜めの2つの辺の合計が10cmだから、下の辺が11cmのときは交わらないんだね。

3他の場合も考え、学習内容をまとめる(10分)

もし斜めの辺の長さが6cmだったらどうなるかな?

10cmでも11cmでも二等辺三角形になるってことだよね。

うん。今度は6+6=12で、斜めの辺の長さの合計は12cmだから、下の辺の長さが12cmのとき、ちょうど平らになるはずだよ。

そうそう。もし斜めの辺が7cmだったら14cmまでいけるね。

図4

では、まとめに入りましょう。二等辺三角形はどこまで太らせることができると言えるかな?それぞれがノートに自分なりにまとめてみましょう。

斜めの2つの辺の長さを足して、下の辺の長さより短ければいい。

斜めの2つの辺の長さを足して、下の辺の長さと同じになるまでは太らせることができる。

(全員が自分なりにまとめることができたところで、子どもの言葉を用いてまとめを板書する。)

これってもしかして一般三角形の作図のときとも関係しているんじゃないかな?

どういうこと?

前の授業で、コンパスを使って一般三角形を作図したでしょ?そのとき、2cm/3cm/7cmの三角形を作図しようとしたらできなかったんだけど、これも2cmと3cmを足したら5cmで、7cmより短いからできないんじゃないかなって思って…。

図5

そういうことね!もし7cmが5cmでもできなくて、4cmならできるってことか。

なるほど!おもしろいところに気付いたね。前の学習と繋げて考えているところが素晴らしいね!明日ちょっと考えてみようか。今日の自学でも調べてみるとおもしろいかもね!

図6

授業のとっておきポイント

 「問題場面の把握」から「課題の焦点化」、「試してみる」ということを丁寧に行うことを特に意識した。前半で、全員の学びをある程度揃えながら進めていった結果、後半の理由を考える場面でも、ほぼ全員を話合いの場に乗せることができた。抽象的な説明になった場合は、できるだけ具体に戻して解釈、理解させるよう心掛けた。
 この二等辺三角形を太らせていくという活動は、コンパスを用いた作図の仕組みを振り返ることにもつながると考えている。等しい長さの点(その集まりが円)を作図することができるというコンパスの仕組みを振り返り、三角形ができるということは、辺と辺が交わる(コンパスで引いた線と線が交わる)ということなのだということを、実感を伴いながら、楽しんで学んでいく子どもの姿が印象的だった。
 本時で二等辺三角形という特殊な形を扱い、次時で一般三角形へと拡げていこうと考えていたのだが、そこにも着目する子どもが出てきたことに大変驚いた。子どもの豊かな発想にはいつも驚かされる。

二瓶 亮にへい りょう

1989年新潟県生まれ。新潟市立上所小学校教諭。教員10年目。
子どもの思考に寄り添うことを大切にした算数授業を目指して日々研鑽中。
「フォレスタネット」(授業準備のための指導案・実践例共有サイト)に、板書写真を中心に、実践を多数投稿。「フォレスタグランプリ」の2018年11月大会にて「板書王」、2019年2月大会にて「ベストナイン(算数)」、2019年7月大会にて「月間MVP」を受賞。
共著に「フォレスタネットSelection Vol.3・Vol.4・Vol.5」((株)スプリックス)がある。

(構成:中野)
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