特別支援学級と通常学級の交流学習の題材設定が難しい、という悩みをよく耳にします。特別支援学級は地域の小学校内に併設されており、通常学級の児童と日常的に顔を合わせます。交流及び共同学習を充実させていくことは、毎日の学校生活を豊かにする上でも重要な意味をもつのです。
特別支援学級担任の視点から、小学校段階における交流及び共同学習の題材としてユニバーサルスポーツの活用をご紹介いたします。
特別支援学級において、スポーツを題材とした調べ学習・体験学習を実施する
交流及び共同学習を充実させるポイントとして、事前学習を丁寧に行うことが大切です。突然「今日は○年○組と一緒に学習します。」と伝えても、特別支援学級の児童は活動の見通しがもちづらく、安心した交流には結びつきにくいです。しかし、交流及び共同学習のために多くの時間を使うことは難しい現実もあります。なので、他教科・領域の学習とつながりをもたせ、単元のゴールに交流及び共同学習を設定しました。
今回は、特別支援学級の総合的な学習の時間において、スポーツをじっくりと「知る」「する」学習を行いました。はじめは教員主導で様々なスポーツを動画や写真にて紹介し、中でも特別支援学級の児童が取り組みやすいユニバーサルスポーツ(パラスポーツ)にスポットを当てていきます。児童からは「楽しそう!」「やってみたい!」と前向きな声が聞かれました。その後、興味をもったスポーツを一人一つ選び、GIGA端末を活用してGoogle Jamboardにまとめる学習を行いました(図参照)。自分で調べたスポーツのルールや使う道具、魅力を簡単に入力していきます。キーボード入力が難しい児童は、音声入力・手書き入力で調べたことをまとめることが可能です。作成したスライドは学級内で共有・発表し、ユニバーサルスポーツの魅力を紹介し合うことができました。
調べ学習後、実際に授業にてユニバーサルスポーツを体験しました。いろいろなスポーツを検討した上で、おすすめは「ボッチャ」「フライングディスク」「風船シッティングバレー」の3つです。ルールも簡単ですし、学校にある用具で代用することができます。広いスペースも必要ないので、教室でも取り組むことができました。まずは特別支援学級にてスポーツのルールや面白さを知り、「もっとやりたい!」という思いをもつことが大切です。
ボッチャ
白いボールに、赤・青のカラーボールを近づけるボールゲームです。はじめはボッチャのボールを使ってボウリングゲームをすると盛り上がります。ボールを転がす動作に慣れてきたら、実際の試合ルールに近付けていくとよいでしょう。
フライングディスク
児童の実態に合わせて、的を大きいフラフープにしたり、フラフープではなくペットボトルを倒すに変更したり、用具を工夫することができます。的との距離も含め、児童が楽しみやすいルールに調整しやすいです。
風船シッティングバレーボール
バレーボールではなく風船を使用することで、ボールの扱いが易しくなり誰もが楽しみやすくなります。まずは児童同士、向かい合って風船ラリーを続けるゲームがおすすめです。ある程度ラリーが続くようになったら、試合をしてみましょう。児童の実態に合わせて、コートの広さやネットの高さを変えたり、タッチの回数を増やしたり、楽しみやすいルールを工夫してみてください。
通常学級の児童と一緒にやってみよう
今回は、学校名をもじり「○○ピック」というスポーツ大会を、平日の放課後に開催することにしました。3年生以上の参加者をGoogle フォームで募り、希望制にしたことがポイントです。交流及び共同学習はタイミングが大変重要で、児童・保護者の思いに寄り添って計画することが望ましいです。今回は希望者のみ交流できる形にすることで、多様なニーズに考慮しました。スポーツ大会の告知ポスターは特別支援学級の児童が作成し、国語の学習と関連付けています。
結果、通常学級より18名、特別支援学級より7名の申込みがあり、学級・学年を混ぜた6チームを編成しました。当日は「ボッチャ」「フライングディスク」「風船シッティングバレー」の3競技を行い、仲間で協力し合いながらプレーする姿が印象的でした。今後も、このような大会を定期的に開催することで、障害の有無にかかわらず一緒にスポーツを楽しむ機会の提供が期待できます。
学校で学んだことを、学校外へ生かす
学校内にてユニバーサルスポーツに取り組むことで、スポーツの面白さ・人と関わることの楽しさに気付き、学校活動以外でも取り組みたい、という要望が増えました。ユニバーサルスポーツを体験できる場は限られていることから、昨年11月に足立区を拠点にユニバーサルスポーツクラブ「ゆにすぽキッズ」を立ち上げました。今では、地域のボッチャ大会に出場して入賞したり、友達と一緒にスポーツの体験会に参加したり、子供たちの活躍の場が広がっています。
その場限りの交流及び共同学習ではなく、児童の生活経験が豊かになるように計画立てていきたいですね。
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