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スタートカリキュラム―幼・保・小の連携
教育zine編集部上甲
2017/4/30 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程

 小学校に入学した子どもたちが、幼稚園や保育所・認定こども園などでの遊びや生活から、小学校での学習や生活にスムーズに移行できるように、1年生では「スタートカリキュラム」が行われています。

 「スタートカリキュラム」とは、小学校での学習や生活に子供たちが慣れるようにするための、カリキュラム(教育課程)の工夫のことですが、この実施には、幼・保・小での密接な連携が必要です。

小1プロブレムの予防・解消

 近年、小学校1年生の児童が、幼児教育と小学校教育の段差を乗り越えられないことから問題行動を起こしてしまう、いわゆる「小1プロブレム」が問題視されてきました。
 「スタートカリキュラム」は、この予防や解消にも有効な取り組みとして行われており、幼児教育での活動や経験を小学校での学習につなぐことで、子どもたちが安心して学び、自信をもって成長できることを目指しています。

 新しい学習指導要領案(PDF)でも、「学校段階等間の接続」を図るうえで、以下のような配慮が求められています。

特に,小学校入学当初においては,幼児期において自発的な活動としての遊びを通して育まれてきたことが,各教科等における学習に円滑に接続されるよう,生活科を中心に,合科的・関連的な指導や弾力的な時間割の設定など,指導の工夫や指導計画の作成を行うこと。

 初めのうちは生活科を中心に、国語や音楽、図工など合科的な活動や指導を取り入れながら、少しずつ、教科ごとに授業を受けることに慣れさせるカリキュラムが求められています。

「スタートカリキュラム」実施にあたって

 教育課程研究センターは、スタートカリキュラムに関する指導資料として、「スタートカリキュラム スタートブック(教員向けパンフレット)」(平成27年1月)を作成し、この中で、「スタートカリキュラム編成の手順」を以下のように挙げています。

1 幼児期の子供を理解する
2 期待する成長の姿を共有する
3 スタートカリキュラムを編成する
  □ 成長の姿を週や月の単位で明らかにする
  □ 成長の姿に適合した単元(合科・関連など)を構成し配列する
  □ 単元計画に基づいた学習活動を週の計画として時間配分する

 特に1の「幼児期の子供を理解する」ことにおいて、幼稚園や保育所などを訪問して教職員と意見の交換を行ったり、要録(幼稚園幼児指導要録・保育所児童保育要録・認定こども園こども要録)を活用したりするなど、幼・保・小の連携が重要です。

保護者との連携

 最後に、「スタートカリキュラム」の実施には、保護者との連携も重要になってきます。小学校入学に際して、子どもたちと同じように、保護者も期待と不安を抱いています。現状、4月のカリキュラムを週単位で考えていく実践例が多いようですが、実際に小学校生活に慣れるには、子どもたちも保護者も、少なくとも夏休みぐらいまではかかるのではないでしょうか。

 「スタートカリキュラム」の趣旨や内容をきちんと説明して理解を得ることはもちろん大切ですが、取り組みを通じて、「この学校は子どもを温かい目で見てくれる」という実感を保護者がもつことが、何よりも学校への信頼につながります。

 スタートを大切にするということは、その後の子どもたちの学校生活と、やがて来るゴールも大切に考えているということでもあります。幼・保・小と保護者の連携の中心に、常に、子どもたちの健やかな成長があってほしいと感じます。

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