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先行実施から2年、中学校での統計指導の現状と課題
教育zine編集部矢口
2011/5/27 掲載

 新しい学習指導要領において、中学校数学科では、新領域「資料の活用」が設けられ、およそ10年ぶりに「統計」に関する学習内容が復活した。学習指導要領の完全実施に先行するかたちで、すでに1、3学年において指導が行われている。
 中学校数学科の新しい目玉の一つとも言える統計だが、先行実施から2年が経過し、指導にかかわる課題もみえてきた。

統計の指導経験がない教師が45%超

 小、中学校現場では、この10年以内に大幅な世代交代が進み、都市部などでは、教科の最年長者が20〜30代という中学校も珍しくない。そのため、前回の学習指導要領改訂で中学校数学科の学習内容から削除された統計については、指導経験の乏しい教師が多い。
 静岡大学の松元新一郎准教授の調査によると、1学年の学習内容である度数分布表やヒストグラムについて、過去に指導した経験をもたない教師は全体の45.5%に上り、10回以上の指導経験をもつ教師は10%にも満たなかった。
 このような現状について、松元准教授は、生徒が高等学校で学ぶ程度の統計の内容を教師が学ぶ機会を設ける必要があると指摘する。

進まないコンピュータの活用

 新しい学習指導要領では、その本文の中で、統計の指導においてコンピュータを用いたりすることなどが明記されている。
 中学校の統計においては、ヒストグラムの作成など様々なコンピュータの活用場面が考えられるが、上記の調査では、平成21年度の1学年の統計の指導において、コンピュータを授業で使用した時数が「0時間」と答えた教師が全体の73.9%に上った。
 統計指導の主旨が資料の“活用”であることや、指導に配当できる時数が1、3年とも実質数時間程度ずつであることを考えると、コンピュータの活用は不可欠であり、今後の大きな課題であると言えるだろう。

授業研究会や研修会の積極的な活用を

 このような現状に鑑み、各地域や学会等では、統計指導に関する様々な授業研究会や研修会を実施している。
 グラフ関数電卓活用研究会では、6月に東京大阪で「グラフ関数電卓の授業活用を考える会」を開催し、統計でのグラフ関数電卓の活用方法などが発表される予定だ。参加者には、研究用として最新モデルのグラフ関数電卓も提供される。
 学校におけるコンピュータ等の環境は大きく様変わりしており、統計の指導経験が乏しい教師はもちろんのこと、指導経験の豊富な教師にも、このような機会の積極的な活用が望まれる。

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