教育目的でも著作権侵害―谷川俊太郎さんら塾を提訴
21日の時事通信の記事によると、進学塾経営の「希学園」と「SAPIX」が発行している受験教材に勝手に作品を載せられ、著作権を侵害されたとして、谷川俊太郎さんやなだいなださんら計27人が21日、同学園とSAPIXの経営法人「ジーニアスエデュケーション」などを相手に、東京地裁に出版差し止めの仮処分を申し立てたそうだ。
著作権法では、例外的に、著作権者等に許諾を得ずに、著作物を自由に利用できる場合を定めている。以下に、教育目的に関係する条項を引用する。(文化庁ホームページ「著作物が自由に使える場合」より)
- 教科用図書等への掲載(第33条)
- 学校教育の目的上必要と認められる限度で教科書に掲載することができる。ただし,著作者への通知と著作権者への一定の補償金の支払いが必要となる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
- 学校教育番組の放送等(第34条)
- 学校教育の目的上必要と認められる限度で学校教育番組において著作物を放送することができる。また,学校教育番組用の教材に著作物を掲載することができる。ただし,いずれの場合にも著作者への通知と著作権者への補償金の支払いが必要となる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
- 教育機関における複製(第35条)
- 教育を担任する者は,授業の過程で使用するために著作物を複製することができる。ただし,ドリル,ワークブックの複製や,授業の目的を超えた放送番組のライブラリー化など,著作権者に経済的不利益を与えるおそれがある場合には許諾が必要となる。複製が認められる範囲であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
- 試験問題としての複製(第36条)
- 入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製できる。ただし,営利目的の模擬試験などのための複製の場合には,著作権者への補償金の支払いが必要となる。同様の目的であれば,翻訳もできる。
今回の「希学園」と「SAPIX」による著作物の無断転載は、教育目的であっても、受験教材の出版・販売の用途であるため、これらの条項のどれにも当たらないと見られる。そのため、著作権者の許諾や、補償金の支払いが必要となる。
教育目的だからと無頓着にしていると、このような大事に発展する場合も起こりうる。そんなことになる前に、文化庁が教育現場向けに分かり易くまとめた資料「学校における教育活動と著作権(PDF)」を一読してはいかがだろうか。また、この他にも文化庁のホームページには著作権Q&Aなどのコンテンツが用意されている。
この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
第35条についていえば、平成15年の改正前の条文による
古い資料のようですね。
今は、「教育を担任する者及び授業を受ける者」が
授業の中で、複製できると変わっています。