きょういくじん会議
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無重力では出産率が低下―宇宙では子孫繁栄難しい?
kyoikujin
2009/9/12 掲載

 宇宙飛行士の若田光一さんが、約4ヶ月半に及ぶ国際宇宙ステーションの長期滞在から、7月31日に帰還したことはみなさんの記憶にも新しいと思います。

 地球を出て宇宙に4ヶ月半も暮らせるということは、将来宇宙飛行士でなくても、より多くの人たちが、宇宙に滞在できるということを予感させます。そう遠くない未来に地球以外の星や宇宙ステーションで生活することが、現実味を帯びてきたのではないでしょうか。

 しかし、それにはまだ課題が多く残っています。当然ながら、人が生活できる環境を宇宙空間に整えることが必要ですし、実際に暮らした上で人体にどのような影響があるかはまだ分からない部分があります。

宇宙では子孫を残しにくい?

 そんな中、宇宙ではほ乳類は子孫を残しにくいという研究結果が理化学研究所と広島大のチームによって発表されました。

 研究チームは、地上の1000分の1の微少重力環境を作り出す特殊な装置を使い、マウスの体外受精や出産に与える影響を調べました。 その結果、マウスの出産率は地上の半分程度になるということがわかったのです。これまでの研究で魚類や両生類は、宇宙空間でも子孫を残せることが分かっていましたが、ほ乳類は宇宙実験が難しく、重力の影響は分かっていませんでした。

 出産率が低下する原因としては「ほ乳類の特徴である胎盤の発育に重力が関係している」ということが考えられるそうですが、これでは人類が宇宙で暮らせるようになったとしても、宇宙で子孫繁栄することは難しそうです。

今後の展望は

 しかし、この結果を通して理研発生・再生科学総合研究センターの若山照彦チームリーダーは次のように述べています。

「人類が子孫を残せるかどうかは、永続的な宇宙活動を目指す場合の課題になる。今後は月(地球の重力の6分の1)や火星(同3分の1)のような弱い重力環境での影響も調べたい」

 私たちはまだ自分が宇宙にいけることさえも夢と思っていますが、宇宙の最先端の現場にいる人たちは、その先のことまで現実として見据えています。今後の研究によっては、宇宙で子孫を残すことも可能になるかもしれません。

 折りしも、9月8日に新たに宇宙飛行士候補として発表された金井宣茂さんは海上自衛隊の医官です。
 金井さんは潜水医学を学んだ際に、人体への影響が海中と宇宙とで共通点があることに興味がわいたそうです。ということは,彼が宇宙へ行った際にはこのことを中心とした研究がなされるのかもしれません。どのような研究結果がもたらされるのか、今から興味深いです。

12日は宇宙の日

 1992年9月12日、毛利衛宇宙飛行士がスペースシャトルで初めて宇宙へ飛び立ちました。この日にちなんで9月12日は、「宇宙の日」になっています。そして毎年この「宇宙の日」を含む1ヶ月は「『宇宙の日』ふれあい月間」とし、宇宙に関するイベントが各関係機関で開かれています。

 宇宙についての話題が豊富な今、この「宇宙の日」を機会に宇宙ついて学び、星空に想いを馳せてみませんか。
 もしかしたら私たちの子どもたちは宇宙で生まれ、宇宙で育っているのかもしれません。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
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