きょういくじん会議
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宗教を学ぶ重要性、高まる―トルコを例に
kyoikujin
2008/12/19 掲載
現代トルコの民主政治とイスラーム

 突然ですが、ムスタファ・ケマルという名前をご存知でしょうか? トルコ共和国建国の父と言われる人物で、初代大統領でもあります。彼は現代のトルコでは半ば神格化されていますが、12月13日の時事通信の記事によると、そんな彼の人間臭さ、実像を描き出そうとしている映画、「ムスタファ」が、今トルコ国内で大ヒットを記録しているそうです。11月7日のMilliyet紙によれば、対象が対象なだけに、賛否両論といった感じのようですが。

 ムスタファ・ケマルの大きな業績のひとつに、イスラム世界で初となる政教分離の実行があり、トルコ観光局によれば、国民のほぼ全てがイスラム教徒(ムスリム)でありながらも、それは今でも原則的に守られています。しかし近年はイスラム色の強い政党が与党であったり(07年7月23日のロイターより)、女性が宗教的スタイルであるスカーフをしたまま大学へ行くことに関して違憲合憲の争いとなるなど(2月10日のAFP通信より)、政教分離も困難な部分が出てきているように思えます。

 一方日本では、2月24日のきょういくじんでも少し触れましたが、中学社会科の新しい学習指導要領では、伝統や文化とあわせ、宗教に関する取り組みの強化が大きな柱として謳われています。少なくとも現行では、地理・歴史・公民の教科書をそれぞれ見てみると、一部の教科書会社で発展的に取り扱いがあるくらいで、ほとんど取り入れていないようです。

 トルコは世俗主義を唱えながらも、地理的歴史的要因から、前述したように宗教(特にイスラム教)の問題がしばしばクローズアップされ、それを考慮せずにこの国を捉える事は困難です。新指導要領では宗教について学ぶ意義として、

伝統や文化、宗教についての理解を通して、我が国の国土や歴史に対する愛情をはぐくみ、日本人としての自覚をもって国際社会で主体的に生きる

と書かれていますが、加えて他の国々や世界を理解していくためにも、ますます重要となっていくのではないでしょうか。これから具体的にどういった取組みがなされていくのか、注目していきたいと思います。

この記事は、『きょういくじん会議』の記事を移転して掲載しているため、文中に『きょういくじん会議』への掲載を前提とした表現が含まれている場合があります。あらかじめご了承ください。
コメントの一覧
2件あります。
    • 1
    • 名無しさん
    • 2008/12/22 11:41:42
    イスラムでは基本的に聖と俗を区別しません。
    区別しないということは、つまり、日常の全てに信仰が密接に関わっているということです。
    道徳も法律も政治も、全てコーランとハディースの教えをもとにしています。
    冠婚葬祭以外ではほとんど無宗教な日本人は政教分離を簡単で正しいことと考えてしまいがちですが、ムスリムにとっては非常に難しいことということを理解することが大事だと思います。
    • 2
    • 名無しさん
    • 2008/12/26 9:42:14
    >1
    モスクって教会みたいなものと思ってしまいますが、あれは直射日光と町の喧騒を避けて静かにお祈りするための施設なんですよね。偶像禁止なのでご聖体もないし。
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