著者インタビュー
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ICT&1人1台端末で言語活動をアップデート!
京都女子大学教授水戸部 修治
2021/7/30 掲載

水戸部 修治みとべ しゅうじ

京都女子大学教授。
小学校教諭、県教育庁指導主事、山形大学地域教育文化学部准教授等を経て、文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官、国立教育政策研究所教育課程研究センター総括研究官・教育課程調査官・学力調査官、平成29年4月より現職。専門は国語科教育学。平成10・20年版『小学校学習指導要領解説国語編』作成協力者。

―本書では、「ICT&1人1台端末を活用した言語活動」の理論とともに事例が多数紹介されています。具体的にどのようなICTが活用されているのか、簡単にご紹介ください。

 本書で取り上げたICTを大きく分類すると、大型モニターなどの提示装置、iPadChromebookなどの1人1台端末、それらにインストールして用いるロイロノート・スクールミライシードなどの学習支援ソフト及びGoogle Meet等の会議システムが挙げられます。いずれも代表的なICTツールを活用した事例を取り上げました。

―学校現場では1人1台端末の導入が急速に進んでいますが、1人1台端末の活用によって、教師側・子供側それぞれに、どのようなメリットがあるでしょうか。

 教師側にとっては、子供個々の状況が把握しやすくなることが挙げられます。個人差がはっきり見えるので、個に応じた指導がしやすくなります。子供の側から見れば、一斉学習場面ではうまくつかめなかったポイントをタブレット上でもう一度確認するなど、自分が必要な時に必要な学びを進められる点が最大の魅力です。

―本質的な国語科の授業づくりに生かすために、1人1台端末はどのような場面で活用することができますか? 本書のChapter2でも詳しくご紹介いただいていますが、ポイントとなる活用場面を教えてください。

 従来は誰と交流するかを子供が判断する学習は容易ではありませんでした。しかし、学習支援ソフト等の活用で、クラスの誰がどんな考えなのかが子供同士でも一目瞭然になります。指導のねらいが「一人一人の感じ方の違いに気付く」ことならば、それを促すことで、自分と違う考えの人と交流してみようといった、子供自身の目的を明確にした交流が実現できるようになります。

―Chapter3ではICT&1人1台端末を活用した言語活動アイデアが紹介されています。小学校の国語科でのICT活用の際、注意したい点はどのようなことでしょうか。

 授業づくりは常に付けたい力の明確化が基点です。指導のねらいに合った活用が大原則となります。そしてもう一点、子供たちが課題の解決に向かって言語活動を行う中で、ICTの活用を必要だと実感できるタイミングで活用できるようにすることが大切です。子供が必要性を感じたとき必要な機能を使えるようにすることが魅力であり留意点でもあります。

―最後に全国の読者の先生方に一言メッセージをお願いいたします。

 本書の最大の特徴は、言語活動を通して国語の資質・能力の育成を目指すという国語科の本来的な授業づくりに軸足を置き、かつ、ICTの導入でより日常的に、あるいは手軽に授業改善を進めていただけるよう、基本的な考え方と具体的事例を提示している点にあります。ICT活用に取り組み始めた先生方、そして国語科の授業改善に取り組もうとする先生方に、ぜひ手に取っていただき、子供たちの学びを一層充実したものにするために役立てていただければ幸いです。

(構成:木山)
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