著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
読み聞かせを、「さらに効果的に」かつ「幅をもたせて」行うための方法
プロジェクト・ワークショップ吉田 新一郎
2018/2/28 掲載
 今回は吉田新一郎先生に、新刊『読み聞かせは魔法!』について伺いました。

吉田 新一郎よしだ しんいちろう

プロジェクト・ワークショップ事務局。
1985〜1994年にファシリテーション型のワークショップを普及する過程で発見したことの一つが、日本の教育は「依存する教え手・学び手」を再生産する仕組みなんだということでした。1995年以降は「自立した読み手と書き手」を含む「自立した学び手・考え手」を育てる方法を探し続けています。その過程で見つけたことを2000年以降いろいろな領域で紹介しています。たとえば、読みの分野では本書の181〜184ページの図や表を知っているかいないかで、自分のすることはまったく違ったものになってしまいます。すでに存在するたくさんの価値ある情報を使いこなすことで、よりよい=より自立する学びの機会を子どもたちに提供していきましょう!

―本書は、今では多くの方に広まり、様々な形で行われている「読み聞かせ」について、日本と欧米の読み聞かせの違い、世界で行われている多様な読み聞かせを紹介しながら、子ども達の読書力を呼び起こし本好きにするポイントをまとめた「読み聞かせバイブル」とも言える書籍ですが、まず本書のねらいと読み方について教えて下さい。

 ねらいは、読み聞かせの選択肢を提供することです。日本でやられている読み聞かせがあまりにパターン化され過ぎているので。読み方としては、興味のもてそうなところから読み、そしてぜひ試してみていただきたいです。さらには、読んだものを自分なりに膨らませて、新しいやり方まで開発していただきたいです。

―日本と欧米では、読み聞かせの目的と方法がだいぶ違うようです。本書でも詳しく紹介されていますが、この点について教えて下さい。

 日本では、読み聞かせはうまく話し、そしておとなしく聞くことが大事にされている気がします。欧米の読み聞かせの特徴は何よりも、対話的と言えると思います。あるいは、聞いている者たちこそが主役と位置づけられて、あくまでも読むことが好きになり、読む力をつけることこそを目的に据えられている気がします。従って、読み聞かせはそれを実現するための手段という位置づけです。

―本書の第2章では、日本で主流の大人しく聞かせるタイプの従来の読み聞かせに比べて、はるかに参加度の高い「対話読み聞かせ」を紹介されています。成功するための教師(ナビゲーター)の心構え、準備、流れのポイントについて教えて下さい。

 読み聞かせをし始める前から勝負は決まっているようなところがあります。聞き手が発言したくなるような選書が最大のポイントだからです。何も言いたくないような本では、聞くだけが約束されていますから。あとは、それをどう引き出すかのタイミングや問い方などを事前にいくつか決めておくことでしょうか。最初のうちは、教師が見本を示すことも大切だと思います。

―第3章で紹介されている「考え聞かせ」は、読み手の頭の中で起こっていることを声に出して紹介するものですが、考え聞かせにはどのような効果があるでしょうか?

 読む時に、どんなふうに読んだらおもしろいのかのモデルを示せることです。たとえば、どう関連づけたらいいのか、どう質問や推測したらいいのか、どうイメージを膨らませたらいいのか、どう解釈したらいいのか、これまでの理解をどう修正したらいいのかなどの見本を示すことで。これらは、すべて優れた読み手は当たり前のようにしていることです。

―第4章で紹介されている「いっしょ読み」は、本の選択基準などが成功の鍵を握っていそうです。本書でも詳しく紹介されていますが、そのポイント、効果について教えて下さい。

 何よりも、聞き手たちが一緒に読んでみたいと思える本を選ぶことだと思います。それは、大人が何度読んでも飽きないストーリー性をもっていたり、発見があったりするような本かもしれません。子どもたちの方が、そういうものを見出す能力は高いかもしれませんから、子どもたちに教えてもらうようにしたらいいかもしれません。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 タイトルにあるように「読み聞かせは魔法」です。読むことを好きになり、かつ読む力をつけてもらうための出発点です。その際、本書で紹介している4つの方法を知っていて、これまでの読み聞かせと、うまく使い分けられると、さらに効果を上げるでしょう。そして、それらはすべて「一人読み」に向けての準備であり、年齢や対象によっては、さらにガイド読み、ペア読書、ブッククラブ、ブック・プロジェクトなど他の方法も活用/併用するとより効果的です(186ページの図を参照)。

(構成:及川)
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