著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
子どもたちの心に火をつける生徒指導を
北海道公立中学校山下 幸
2018/1/12 掲載
  • 著者インタビュー
  • 生活・生徒・進路指導
 今回は山下 幸先生に、新刊『中学校 生徒指導すきまスキル72』について伺いました。

山下 幸やました みゆき

1970年北海道苫前町生。北海道教育大学岩見沢校卒。1992年北海道空知管内小学校教員として採用。1995年「研究集団ことのは」に入会。
『中学校 学級経営すきまスキル70』も好評発売中。

―本書は、「すきまスキル」シリーズの生活指導・生徒指導編として、小学校低学年、高学年、中学校の3冊構成でご提案いただいています。山下先生には「中学校編」をおまとめいただいておりますが、本書のねらいと読み方について、教えてください。

 中学校の生徒指導はここ数年、反社会傾向から非社会傾向へとシフトしてきました。本シリーズはハード編とソフト編に書き分けられていますが、前者は反社会傾向に対する指導として機能するでしょうし、後者は非社会傾向に対する指導として機能するでしょう。ただし、どちらかに偏るのではなく、ハード編とソフト編の両方を読んでいただくことで、バランスの取れた生徒指導のスキルが身につくはずです。

―小学校と中学校では、発達段階の違いもあり、生活指導・生徒指導にかかわる対応も変わってくる部分があると思いますが、中学校ならではのことがあれば教えてください。

 反抗期まっただ中の中学生は、束縛されることを好まない傾向にあります。しかし、なぜ、なんのために、どのようにといった根本理念を教えることにより、集団をよりよく向上させる方法を理解し、納得し、実行しようとする姿勢が多く見られます。目の前の子どもたちを大人へと自立させるにあたって、私たち教師は、欠けている要素を指導することを決して怖れてはいけません。ただし、子どもたちの日常生活を機能させるためには、ほんの少しの工夫が必要と言えます。

―次期学習指導要領においては、「主体的」という言葉にも注目が集まっています。生徒指導においては、強制的にしつける部分と、手を放して自主性に委ねる部分の見極めが難しいともいわれますが、どのようなポイントがあるでしょうか。

 子どもたちにとって毎日の学校生活が居心地のよいものであることに越したことはありません。ただし、力の強い特定の者だけが好き勝手をして居心地がよいように見える反面、居心地が悪いと感じる生徒も実はたくさんいるクラスと、誰もがほんの少しずつ我慢して、毎日全員が小さな満足を感じ合えるクラスの、どちらがよいでしょうか。その答えは明確です。現実ばかりを直視するのではなく、あるべき理想の姿を追求させるために、子どもたちの心に火をつける指導を心がけたいものです。

―先生はあとがきの中で、「ヒドゥンカリキュラム」の機能の仕方(良い方向に働く場合と、悪い方向に働く場合)についても述べられています。この点について教えてください。

 中学校はいまだに生徒指導畑の教師が空気をつくる傾向にあります。それももちろん必要な要素ではありますが、子どもたちにとって、マイナスに作用することも少なくありません。恐い先生の前では静かにしておこうとか、黙っていればバレずにやり過ごせるとか、見つかったら反省しているフリをしようとか……。逆に、この先生なら信じてついていこうと思わせることも可能でしょう。教師には子どもたちを感化する力が必要と言えるわけです。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 反社会型・脱社会型生徒の指導と非社会型生徒の指導に加え、本書の第3章には「集会・行事指導に関する指導スキル20」を盛り込みました。年度末・年度初めには不可欠なすきま指導スキルと言えます。一度お読みいただけると、そこから汎用可能なスキルを生み出せるに違いありません。自分なりのすきまスキルを、ぜひ生み出してほしいと思っています。

(構成:及川)

コメントの受付は終了しました。