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理科の授業は、自然の事物・現象を対象とします。ですから、アクティブ・ラーニングの3つの視点である、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」のどの視点における授業でも、自然を対象とすることが必須です。本書では、例えば、「主体的な学び」に位置づく授業場面では「自然の事物・現象から問題を自ら見いだすこと」、「対話的な学び」に位置づく授業場面では、「観察・実験の結果について意見交換する」など、自然を対象とする中でアクティブ・ラーニングが展開されています。
第5学年「人や動物の誕生」の単元を紹介しましょう。「子メダカのおなかのふくらみは何か」について、子どもは「栄養説」と「体の一部説」の意見に分かれました。それぞれの説には理由があり、自分たちの仮説が正しければこうなると筋道立てて討論し合います。産まれたばかりの子メダカを全員で観察しながら、最終的に、観察事実から合意形成を図っていきます。最後には、一人一人が学習の初めに考えた2つの仮説からどのように自分の考えが変容したか、一枚絵本を作成し学びを振り返ります。この過程がまさに理科におけるアクティブ・ラーニングそのものです。本書はこのような実践事例が満載です。
本書では、評価場面を3つの学習過程から紹介しています。1つめが「問題把握の場面」です。ここでの評価のポイントは、「子ども自らが問題を見いだしているか」を見取ることです。2つめが「問題の追究場面」です。ここでの評価のポイントは、「子ども自身が見通しをもっているか」を見取ることです。3つめが「問題の解決場面」です。ここでの評価のポイントは、「得られた結果から妥当な考えを表現しているか」を見取ることです。それぞれの場面の評価のポイント、注意点を具体的な子どもの姿から解説しています。
今後、新しい理科授業づくりにおいて「深い学び」を実現させるには,理科における「見方・考え方」を働かせることがポイントとなります。小学校理科では、身近な自然の事物・現象を、質的・量的な関係や時間的・空間的な関係などの科学的な視点で捉え、比較したり、関係付けたりするなど、問題解決の方法を用いて考えることが大切です。これまで理科においては、「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な目標として位置付け、資質・能力を包括するものとして示してきましたが、今回の改訂では、資質・能力をより具体的なものとして示し、「見方・考え方」は資質・能力を育成する「視点や思考の枠組み」として示されました。
子どもが夢中になったとき、教師は、子どもに寄り添い、子どもなりの論理を受け入れることがまずもって、小学校理科の授業づくりにおいて大切なことではないでしょうか。
こうした教師の子ども理解の深さが、今回の学習指導要領の改訂に求められていると感じております。指示と命令の言葉では子どもは動きません。教師の愛情と信頼関係に裏打ちされた言葉ではじめて動くのです。アクティブ・ラーニングは、まさに子ども理解を可能にします。そして、子ども一人一人が輝き出番のある授業へと変革することを可能にします。子どもとともに不思議を共感し、アクティブ・ラーニングを先生方も楽しみましょう。本書が少しでもお役に立てば幸いです。