- はじめに
- 第1章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校理科の授業づくり
- 1 アクティブ・ラーニングとは何か
- 2 小学校理科におけるアクティブ・ラーニングの位置づけ
- 3 本書におけるアクティブ・ラーニングのとらえ
- 第2章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校理科の授業プラン
- 種類によって重さは変わるか? 自分の言葉で説明しよう
- (3年/物と重さ)
- 風のエネルギーを効率よく伝えるのは,大きい帆か小さい帆か考えよう
- (3年/風やゴムの働き)
- 比べる物をはっきりさせて実験しよう
- (3年/光の性質)
- どんな物が磁石に引き付くのか実験しよう
- (3年/磁石の性質)
- 導線1本で豆電球に明かりをつけてみよう
- (3年/電気の通り道)
- カブトムシの体のつくりを考えよう
- (3年/昆虫の成長と体のつくり)
- 理科の目で植物を観察しよう
- (3年/身近な自然の観察)
- とじ込めた空気をおしたらどうなるか考えよう
- (4年/空気と水の性質)
- 結果まで見通した実験計画を比べ,適切な実験を選ぼう
- (4年/金属,水,空気と温度)
- メリーゴーラウンドが回転する速さを変えられるか考えよう
- (4年/電気の働き)
- 関節は曲がり方によってつくりも違うのか考えよう
- (4年/人の体のつくりと運動)
- 山の紅葉は,なぜ早いか気温と関係づけて説明しよう
- (4年/季節と生物(秋))
- 集めた多くのデータから天気と気温の関係について調べよう
- (4年/天気と気温)
- 炭酸入浴剤を溶かすと,水溶液の重さはどうなるか考えよう
- (5年/物の溶け方)
- 振り子の1往復する時間が2秒になる振り子の長さを考えよう
- (5年/振り子の運動)
- 導線にからみ付くマグチップの付き方の意味を考えよう
- (5年/電流の働き)
- たくさん収穫するにはどこに植えればよいか考えよう
- (5年/植物の発芽,成長,結実)
- めざせ! メダカマイスター 子メダカのふしぎを考えよう
- (5年/人や動物の誕生)
- 洪水を防ぐ工夫を考え説明しよう
- (5年/流水の働き)
- 晴れている日の雲と雨の日の雲の色はどうして違うか考えよう
- (5年/天気の変化)
- 物が燃えるためには何の気体が関係しているのか考えよう
- (6年/燃焼の仕組み)
- 炭酸水から出てくる泡は何か考えよう
- (6年/水溶液の性質)
- てこの規則性で学びを深めよう
- (6年/てこの規則性)
- コンデンサーから流れる電流の量と動作する時間を関係づけよう
- (6年/電気の利用)
- 吸う空気とはき出す空気の違いは何か考えよう
- (6年/人の体のつくりと働き)
- 根から取り込まれた水は,どこに行くか確かめよう
- (6年/植物の養分と水の通り道)
- 月の形が日によって変わって見えるのはどうしてなのか,半月から考えよう
- (6年/月と太陽)
- 第3章 アクティブ・ラーニングを位置づけた小学校理科の授業の評価
- 1 アクティブ・ラーニングの指導と評価
- 2 小学校理科の全国学力・学習状況調査から見たアクティブ・ラーニングの指導と評価
- おわりに
はじめに
「みんなの比べると,パン粉軽すぎでしょ。他と全然違うじゃない」
「でも,自分たちの予想は違うよ。帆は大きいほうが進むと思うな」
「こうやって,日光が重なったところを測ればよいと思います」
「じゃあ,金属の中にも磁石に引き付かない物もあるんだね」
「本当だ。全部丸く輪みたいだ」
「でも,頭から脚が出ているというのはやはりおかしいと思うよ」
「ハートの形がある仲間はどう? 私のは葉の形がハートだよ」
「空気に色をつけられないかな?」
「風が吹くと,煙が反対方向に行くじゃないですか…」
「だったら,1分間で何回ぐらい回ったかも数えてみようよ」
「反対に曲がったら怖いよね。関節はどのような仕組みになっているのかな」
「じゃあ,吾妻山も北海道も,同じぐらいの気温なんだね」
「天気が変わってない? 後半は,雨の日のグラフの特徴と似ているよね」
「泡の気体が外に出ていったからじゃない」
「やっぱり100pが一番近いね」
「本当だ。導線を斜めにしたら,マグチップがずれていった」
「駐車場だと,北校舎で日光がさえぎられて陰になるからだめです」
「体の一部説ならば,どのメダカもえさを食べるはずだね」
「やっぱり,外側が崩れている」
「黒く見えるのは,雲が重なっているからでしょ」
「僕は,二酸化炭素が75%もあるから,すぐに火は消えると思うな」
「もし二酸化炭素が水に溶けたら,その水をリトマス紙で調べようよ」
「それはないでしょ。でもやってみようか」
「同じ電気をつかっているものだから,きまりが当てはまるのではないか」
「どうして吸う空気よりもはき出した空気のほうが二酸化炭素が多いんだろう」
「じゃあ,葉をとったホウセンカにビニル袋をかぶせても,水滴がつくんだよね」
「なんで。どうやって光を当てたら半月になるの」
これらは,本書で紹介されている授業プランでの子どもの言葉です。
子どもが発した言葉のワンフレーズしか掲載していませんが,どの言葉からも,子どもの姿が浮かんできます。いや,その言葉を発した子どもの周りにいる多くの子どもたちの姿も浮かんできます。
「主体的・対話的で深い学び」というアクティブ・ラーニングの視点を基に,日々の授業を改善していくことで,子どもたちの学びの質を高め,資質・能力を育成するために,まずは教師が,子どもの姿を基に授業を語ることから始めましょう。
子どもの姿にこそ,理科で育成を目指す資質・能力の高まりが見られるのです。
子どもの姿にこそ,授業改善の視点があるのです。
子どもの姿にこそ,教師自身が成長できるきっかけがあるのです。
日々の授業で見せる子どもの姿こそ,教師が最も大切にしなければならないのです。
本書は,学習指導要領改訂という大きな教育のうねりの中で,「主体的・対話的で深い学び」といったアクティブ・ラーニングの視点を基に考えられた授業プランをまとめた1冊です。子どもの姿を大切にしながら,授業づくりのポイントが明確に示されています。ぜひ,子どもや教師の対話を読みながら,その様子を想像し,ご自分の実践に役立てていただきたいと思います。
なお,「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」はそれぞれ関連していて,けっして分断して考えるものではありません。各授業プランには,実践が類型化されて示されていますが,「主体的・対話的で深い学び」というアクティブ・ラーニングの視点を通して,みなさんの日々の実践を振り返る上での一つの指標としてとらえていただければ幸いです。
未来を拓く子どもたちのために,共にがんばりましょう。
最後になりましたが,本書の出版にあたり,明治図書の茅野現氏には,大変なご尽力と大きな励ましをいただきました。ここに改めて厚く御礼申し上げます。
2017年2月 /鳴川 哲也
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- 明治図書