著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
答申のコンセプトを捉え、読み解きの鍵を解説する
国立教育政策研究所 初等中等教育研究部長大杉 昭英
2017/3/3 掲載
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  • 学習指導要領・教育課程
 今回は国立教育政策研究所・初等中等教育研究部長の大杉昭英先生に、新刊『平成28年版 中央教育審議会答申 全文と読み解き解説』について伺いました。

大杉 昭英おおすぎ あきひで

1953年広島県生まれ。文部省初等中等教育局中学校課・高等学校課調査官、文部科学省初等中等教育局視学官、岐阜大学教育学部教授を経て、現在、国立教育政策研究所初等中等教育研究部長。
主な著書に、『アクティブ・ラーニング 授業改革のマスターキー』『中学校学習指導要領の展開 総則編(平成20年版)』『平成20年版中学校学習指導要領 全文と改訂のピンポイント解説』『平成21年版高等学校学習指導要領 改訂のピンポイント解説』(以上、明治図書)などがある。

―本書は発表された「中央教育審議会答申」の全文&全資料と、その読み解きポイントに加え、「カリキュラム・マネジメント」「主体的・対話的で深い学び」「見方・考え方」など、25に及ぶキーワード解説を入れて、まとめていただいています。本書のねらいと読み方について教えて下さい。

 中央教育審議会答申を見た先生方から、分量が多いのでどこをどう見ればよいのか分からないという声をよく聞きます。本書は、答申を読み解くために、何が基本コンセプトになっているかを明らかにし、それを枠組み(見方や考え方)として解説したものです。そのため、冒頭に記載した枠組みとキーワードを使って読み解いていただきたいと思います。

―本書のまえがきで大杉先生も触れられていますが、今回の学習指導要領改訂では、基本コンセプトを従来型のコンテンツベースのカリキュラム編成、つまり「身に付けさせるべき内容を先に設定しそれに対応した能力の育成を考えるカリキュラム」から、育成すべき能力を先に設定しそのために必要な内容を選択・配置する、言わば「能力主導のカリキュラム」へ、という大きな変化がありました。なぜこのような転換が求められたのですか。

 人工知能(AI)などを活用した第4次産業革命が進み、これからどのような社会が到来するのか予測困難な時代に生きるためには、知識を獲得したり、それを活用して直面する課題を解決する能力の育成が必要だと考えます。そのために、「実際に能力を発揮するための学習活動」が展開できるカリキュラムが求められているのです。

―1月に発刊の『アクティブ・ラーニング 授業改革のマスターキー』では、授業改革の鍵についてまとめていただいておりますが、改訂のキーワードの一つとされる「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニングの視点)を実現するために、どのような準備が必要でしょうか。

 アクティブ・ラーニングの視点による授業改善のポイントは、能力育成は能力を発揮する活動、例えば、思考力は子どもに考えさせてはじめて育成できるという考え方が根底にあります。また、これに加えて、どのように考えるのかその方向性や質の高い知識を活用させることで、教科等の本質をとらえる思考力が育成できます。そのため、どのような知識を獲得させるかを明確にし、それを活用してどのような学習課題を追究させるかという単元レベルでの指導計画の作成が必要です。

―今回の改訂にあたっては、評価の観点においても、「知識・技能」、「思考・判断・表現」、「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点に再編されるという大きな変化がありました。評価については、不安を感じていらっしゃる先生も少なからずいらっしゃると思いますが、どのようにとらえていけばよいでしょうか?

「目標に照らしてその実現状況を評価する」という考え方はこれまでと同じであり、「観点別評価やそれを総括して評定を行う」ことも変わりないので不安を感じる必要はないと思います。ただし、これまで以上に、知識を活用して考え、判断し、その結果や過程を説明するなどの能力を評価する方法を開発することが求められます。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願い致します。

 次の社会を形成する子どもたちには、コンテンツ(知識)を使いこなすコンピテンシー(能力)が必要です。それを実現するのは先生方だと思います。存分に指導力を発揮していただきたいと思います。

(構成:及川)

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