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「フレームリーディング」とは、文章を丸ごと読むための手法です。文章全体を丸ごと捉えることで、文章の構造はもちろん、説明文であれば筆者の主張を明らかにすることができますし、物語であれば作品の主題を考えることができます。
新学習指導要領では、文章(情報)を多面的・多角的に精査して構造化する力が求められています。フレームリーディングの手法で読むと、そうした力をつけることができると考えています。
文学編の総論に書きましたが、『ごんぎつね』を例にお話しします。従来の読み方では、場面ごとにごんの気持ちを想像するような授業が多く行われてきました。しかし、物語作品を場面ごとに区切ってしまうと、作品に散りばめられている「伏線」が分断されてしまうのです。『ごんぎつね』には、様々な「伏線」がはられていますが、その一つに、加助と兵十の関係があります。加助は兵十の親友で、兵十がごんを撃ってしまった後で、兵十の家に行くことになっています。兵十がごんを撃った話を加助にしないかぎり、この話は誰にも広まらず、時代を超えて茂平というおじいさんが知っているはずはないのです。
加助と兵十がどれほどの親友かが、4と5の場面に伏線としてしっかりと書かれています。場面ごとに読むのでは見つかりにくいこの伏線を、フレームリーディングなら見つけてつなぎ合わせることができるのです。
文学の一番大きなフレームは、A→A′です。物語では何かが大きく変わるというのが最も基本的なフレームなのです。そして、AからA′に変わるために「出来事」が起きます。この出来事を通して、何かが変わります。このフレームをまず捉えることが大切です。
その上で、必要に応じて詳細に読む箇所を見つけ出します。最後には、作品全体を再構築(リフレーミング)して、主題としてまとめます。
説明文の最も基本的なフレームは、Q→Aです。つまり、「問い」と「答え」です。何が問われていて、その答えとして何が説明されているかを捉えるのが説明文のフレームリーディングです。そして、この最も基本的なフレームに加えて、問いから答えを導くために具体的な「事例」が書かれます。このフレームをもとに、筆者の主張を要旨としてまとめ、それに対する読み手としての批評を表現するのが説明文のフレームリーディングになります。
どちらも、大まかな(基本的な)フレームをとらえ、必要に応じて詳しく読み、最後にもう一度まとめ直すという流れは共通ですが、物語、説明文それぞれの文章の特性に応じて、何をするかは異なるということになります。
フレームリーディングには、きまった授業の型があるわけではないので、先生方の創意工夫で、授業展開を工夫することができます。基本的に切り口には「数える」や「選ぶ」があります。まずは学習材をしっかりと教材研究し、何を数えると、何が見えてくるのか(文章構成なのか、筆者の主張なのか、あるいは中心人物なのか、場面展開なのか、等)をしっかりと把握した上で実践してみてください。
フレームリーディングで大切にするのは「思考のプロセス」です。丸ごと読むことで、文章を「俯瞰」することができたり、「対比」することができたりします。また「具体」や「抽象」などの関係も見えてくるかもしれません。フレームリーディングは、文章の型を見抜くことをしながら、実は読み手の「思考の型」も育てているのです。
新しい学習指導要領では、資質・能力の育成が大きなキーワードになっています。国語科で育てるべき「思考力・判断力・表現力等」の育成に、フレームリーディングの考え方はとても有効であると考えています。フレームリーディングの切り口をもとに、深い学びを成立させ、子ども達の言葉の力を伸ばしていきましょう。 そして、こんなふうに授業してみたら、子どもがこのような反応をしてくれた!という子どもの学びの姿をもとに、フレームリーディングの良さを実感していただければうれしいです。