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本書では、「主体的な学び」「対話的な学び」と「深い学び」を両立させるために、具体的にどのような評価方法を用いることができるのか、また評価を生かして、どのように指導を改善することができるのかを提案したい、と考えました。第1章でパフォーマンス評価の基本的な進め方を説明したのち、第2章では各教科、第3章では探究的な学習と協働的な学習に焦点を合わせています。
第一の誤解は、「評価とは、評価方法と評価規準で完結するものだ」というものです。しかし、「目標に準拠した評価」なのですから、まずは目標を吟味することが大切です。
第二の誤解は、「評価とは成績づけであり、指導の後で考えればよい」というものです。それだけではなく、評価を生かして指導を改善することが求められます。
第三の誤解は、「評価は教師だけが行うものだ」というものです。実際には、学習に取り組む子どもたちに、的確に自己評価をする力を身につけさせることも重要です。
教科に関しては、「パフォーマンス課題」を用いることをお勧めしています。パフォーマンス課題とは、知識やスキルを総合的に使いこなすことを求めるような課題で、具体的にはレポート、プレゼンテーションなどです。
探究的な学習については、「ポートフォリオ」を用いて子どもたちの学習の足跡を丁寧にとらえること、「ルーブリック」を開発して、長期的な見通しを持ちつつ指導することをお勧めします。
「逆向き設計」論では、教科の中核に位置するような「本質的な問い」を明確にした上で、その問いを子ども自身が問わざるを得なくなるような状況設定をしてパフォーマンス課題を作ることが提案されています。本書では、国語、社会、算数・数学、理科、音楽、美術、技術・家庭、体育、英語の各教科について、「本質的な問い」やパフォーマンス課題の実践例を紹介していますので、それらの事例を参照しつつ、パフォーマンス課題づくりに取り組んでいただければ幸いです。
「探究的な学習」においては、子ども自身が設定している課題そのものの質、それからその課題を探究するために必要な資料収集力と論理的思考力に注目して、学習の実態をとらえる必要があります。ポートフォリオに蓄積された資料を見ながら子どもと対話する検討会において、教師と子どもが共に次の手立てを考えるといった指導が求められると思います。
本書で紹介している事例の多くは、執筆者たちが様々な学校現場の先生方と共同研究をしながら開発してきたものです。本書が、各地の先生方の実践づくりのご参考になれば、これに勝る喜びはありません。
また、京都大学大学院教育学研究科E.FORUMでは、実践交流会などの教員研修を提供しています。本書でパフォーマンス評価に関心を持ってくださった方は、機会があれば、そちらにも足を運んでいただければ幸いです。