著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
パフォーマンス評価で「深い学び」の実現を!
京都大学大学院教育学研究科准教授西岡 加名恵
2016/9/23 掲載

西岡 加名恵にしおか かなえ

京都大学大学院教育学研究科准教授。バーミンガム大学にてPh.D.(Ed.)を取得。鳴門教育大学講師を経て、現職。専門は教育方法学(カリキュラム論、教育評価論)。日本教育方法学会常任理事、日本カリキュラム学会理事、文部科学省「育成すべき資質・能力を踏まえた教育目標・内容と評価の在り方に関する検討会」委員など。
主な著書に、『教科と総合学習のカリキュラム設計』(単著、図書文化、2016年)、『新しい教育評価入門』(共編著、有斐閣、2015年)、『「逆向き設計」で確かな学力を保障する』(編著、明治図書、2008年)などがある。

―本書は、アクティブ・ラーニングを導入するにあたって、多く聞かれる「評価をどのように改善すればいいのか」という声に応えるものですが、まず本書のねらいと読み方について教えてください。

 本書では、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を両立させるために、具体的にどのような評価方法を用いることができるのか、また評価を生かして、どのように指導を改善することができるのかを提案したい、と考えました。第1章でパフォーマンス評価の基本的な進め方を説明したのち、第2章では各教科、第3章では探究的な学習と協働的な学習に焦点を合わせています。

―先生は本書の中で、「評価についてよく見られる3つの誤解がある」と述べられています。この点について教えてください。

 第一の誤解は、「評価とは、評価方法と評価規準で完結するものだ」というものです。しかし、「目標に準拠した評価」なのですから、まずは目標を吟味することが大切です。
 第二の誤解は、「評価とは成績づけであり、指導の後で考えればよい」というものです。それだけではなく、評価を生かして指導を改善することが求められます。
 第三の誤解は、「評価は教師だけが行うものだ」というものです。実際には、学習に取り組む子どもたちに、的確に自己評価をする力を身につけさせることも重要です。

―ずばり、アクティブ・ラーニング時代の評価で大切なことは何でしょうか? “はいまわるアクティブ・ラーニング”とならないよう、「主体的な学び」「対話的な学び」と「深い学び」を両立させるポイントがあれば教えてください。

 教科に関しては、「パフォーマンス課題」を用いることをお勧めしています。パフォーマンス課題とは、知識やスキルを総合的に使いこなすことを求めるような課題で、具体的にはレポート、プレゼンテーションなどです。
 探究的な学習については、「ポートフォリオ」を用いて子どもたちの学習の足跡を丁寧にとらえること、「ルーブリック」を開発して、長期的な見通しを持ちつつ指導することをお勧めします。

―本書では、パフォーマンス評価の具体像として、「逆向き設計」論に基づくパフォーマンス課題を用いた授業&評価モデルが、各教科について豊富に収録されています。教師には効果的で魅力的な「パフォーマンス課題」を設定することが求められますが、そのポイントは何でしょうか。

 「逆向き設計」論では、教科の中核に位置するような「本質的な問い」を明確にした上で、その問いを子ども自身が問わざるを得なくなるような状況設定をしてパフォーマンス課題を作ることが提案されています。本書では、国語、社会、算数・数学、理科、音楽、美術、技術・家庭、体育、英語の各教科について、「本質的な問い」やパフォーマンス課題の実践例を紹介していますので、それらの事例を参照しつつ、パフォーマンス課題づくりに取り組んでいただければ幸いです。

―今回、改めて「探究的な学習」にスポットがあたっています。以前より指導の難しさが指摘されており、「教科指導とは質の異なる指導」が教師に求められていると言われますが、その指導と活動のとらえのポイントについて教えてください。

 「探究的な学習」においては、子ども自身が設定している課題そのものの質、それからその課題を探究するために必要な資料収集力と論理的思考力に注目して、学習の実態をとらえる必要があります。ポートフォリオに蓄積された資料を見ながら子どもと対話する検討会において、教師と子どもが共に次の手立てを考えるといった指導が求められると思います。

―最後に、読者の先生方へメッセージをお願いいたします。

 本書で紹介している事例の多くは、執筆者たちが様々な学校現場の先生方と共同研究をしながら開発してきたものです。本書が、各地の先生方の実践づくりのご参考になれば、これに勝る喜びはありません。
 また、京都大学大学院教育学研究科E.FORUMでは、実践交流会などの教員研修を提供しています。本書でパフォーマンス評価に関心を持ってくださった方は、機会があれば、そちらにも足を運んでいただければ幸いです。

(構成:及川)

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