- 著者インタビュー
- 算数・数学
例えば、ある問題に対してその解決方法が得られたとき、その解決方法を「もっと他の場面でも適用できるのではないか」と見ることです。
このような見方をすることで、解決方法の適用範囲が広がるとともに、適用できない場合も見えてきます。そうすると、適用できる場合とできない場合の境界はどこかが気になりだし、適用範囲を明確にする行為が引き出されます。「こういう場合はうまくいき、こういう場合はうまくいかない」といった具合に、適用範囲が明確化されたとき、それが1つの終着点になります。
しかし、ここでさらに「見方を変えることで、両方がうまくいくようにできないだろうか」と考えを進めてみます。常にうまくいくわけではありませんが、この経験が次回同様の見方を引き出す原動力になります。
教科書の問題は、ほとんどが理想化されています。そこで、日常場面が組み込まれている問題を眺め、現実場面をイメージしながら、「本当にこれが問題になるのだろうか」「むしろ、このように考える方が自然ではないか」といった視点から、批判的に分析してみることです。このような吟味の中で、解答の多様性が見えてくることがあります。条件を緩めたり、広げたりする中で、数学に広がりが見えてくるわけです。
数学の問題は、天から降ってくるわけではなく、自分自身の中に、ある見方や考え方があってこそ生まれてくるものです。そこで、まずは問題が生まれてくる一歩手前の状況を生徒と共有します。そのうえで、「先生は、この場面で疑問に思ったことがあるんだけど、何だと思う?」といったやりとりを通して、問題が生まれてくる状況を体験させます。「このように見ると、このような問題が生まれてくるのか」という体験する中で、徐々に「疑問の目」も育っていきます。
本書で取り上げた教材は、扱う学年や単元が違えば、また違ったアプローチができるものが少なくありません。指導の実態に応じて、24のストラテジーを駆使しながら、独自の教材研究やアレンジを試みていただければ幸いです。