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「記述力」という表現を重視するのは、現在多くの学力調査で課題となっている記述力の不十分さに対応した指導法を提唱するという理論及び実践上の意図があるからです。記述力は、文章様式に対応して記述すること、一つの文章内において多様な表現法を駆使しして記述すること、読解及び表現のプロセスにおいて記述すること、各教科等で記述すること、条件に応じて記述すること、長文にも短文にも対応して記述することなど様々な力を含んでいます。多様な書く力を統合する表現として「記述力」を書名にしました。
書くことは、決して簡単なことではありません。しかし、書くことの方法を分析的にとらえ、手順を明確に筋道付けることによって必ず書けるようになります。本書でも「100字ワーク」を紹介しておりますが、まずは、100字程度の短文を多く書くように習慣付け、文章様式や各教科等の目的に応じて書くようにする手順やカリキュラムを構想してください。
文章様式には、目的も、文章全体及び表現法の記述力も凝縮しています。それらを習得するためには、モデルとなるものを多く読み、かつ分析的に特徴に気付くようにする必要があります。本書でのモデル例を契機に、さらにモデル例を増やしながら児童と一緒に分析する授業を行ってください。
目的や課題、条件などを細かく分析した上で、それらに対応するように書く訓練が必要です。しかも、各教科等には、説明や回答に多くの注文、すなわち特質がありますので、それらのモデルを提示して分析して見せます。その後、先に児童が書いたものとの違いを比較しながら問題点や注意点をまとるようにします。さらに類題を説明したり、回答したりするとよいでしょう。
書くことは、決して国語科の表現領域の一つにとどまる課題とは違います。書くことによって、各教科等で必要な自らの考えをまとめ、他者にコミュニケートする重要な機会を得ることになるのです。また、表現しなければ、読解力は向上しません。フィンランドの視察においても、「読解力で世界一になったが、私たちは書くことを重視してきたのですよ」と多くの教師が回答しておられたことを忘れないようにしたいものです。
面倒がらないで、とにかくねらいを明確にし、また、自己評価や他者評価を活用しながら、児童自身によって評価させることで負担を軽減しながら、記述する機会を多くしてください。本書が新しい記述力の向上につながる一助となることを願ってやみません。