書く力の基本を定着させる授業
書けない子を書けるようにする

書く力の基本を定着させる授業書けない子を書けるようにする

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授業案とワークシートで確実に書く力を定着させる

書けない子どもが書けるようになるためには、基本となる表現様式を確定し、その表現のプロセスに応じた能力を確実に育てることである。対象児童・教材・単元観・ワークシートを含めた授業過程に丁寧な解説を付けて、授業のイメージを分かりやすくした。


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ISBN:
978-4-18-379519-9
ジャンル:
国語
刊行:
3刷
対象:
小学校
仕様:
B5判 144頁
状態:
絶版
出荷:
復刊次第

目次

もくじの詳細表示

前書き
序 章 書く力の基本を育て,定着させる授業
1 書く力の育成課題
2 書く力の基本
3 書く力を育てるカリキュラムと授業改善
第T章 相手や目的に応じて考えよう
特定の人に伝えるために書く
ありがとうを手紙で伝えよう
来てくださいわたしたちのところへ
記事にするために書く
新聞で知らせよう学校のできごと
自分のために書く
エッセイスト誕生
第U章 取材を生かして書こう
問いかけから書く
わたしのお気に入りを説明します
文献(本)を読んで書く
わたしがすきなどうぶつbP
食べ物パワーを探そう
体験して書く
さつまいもほりのよろこびをつたえよう
インタビューして書く
いろいろなおしごと大はっけん!
デジタル資料を活用して書く
発見!デジタル活用術
第V章 効果を考えて組み立てよう
段落をつないで書く
言葉のリーフレット
主張を貫いて書く
賛成それとも反対,君はどちらですか?
構成を変えて書く
じゅんじょをかえたら,すてきにへんしん!
第W章 分かりやすくしよう
引用して書く
食べてみてわたしのおすすめの一品
例を挙げて書く
たとえば,こんな虫がいるよ
問いに応じて書く
宿泊体験学習をもり上げるQ&Aブック
時間に合わせて書く
新1年生に学校の一日を教えてあげよう
空間に合わせて書く
わたしを見つけて!
ガイドしながら書く
国語辞典の引き方教えます
第X章 伝わりやすいように整えよう
文を見直そう
まちがいさがしをしよう
的確に言葉を使おう
どんな意味かな点(,)でおもしろい
コラム:句読点の打ち方を考える
テンデンバラバラでいいの?

前書き

  文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官   /井上 一郎


 1 書く力の課題

 日本の子どもたちの,書く力が不十分であることが指摘されて久しい。国による調査で,私も携わった「2003年度教育課程実施状況調査」の結果を踏まえ,(1)自分の立場や考えを明確にする,(2)目的や相手に応じる,(3)決められた条件に応じる,(4)表現の方法や工夫を評価する,といった言語活動の充実を図るように改善案を示した。

 この2003年は,OECDのPISAが行われた年でもある。PISAの結果においても,文章や資料を読んで内容について自分の考えを書いたり,表現方法などに対して評価して書いたりする力が不十分であることが分かった。

 さらには,2004年度に行った「特定の課題に関する調査」では,長文記述の能力を調査した結果の改善案において,目的や表現様式,条件などに応じて自分の考えを記述することが苦手であることなど,同様な指摘を繰り返さざるを得なかった。日本の子どもたちが,書く力の基本能力を十分定着させておらず,改善も図られていないことが見て取れるのである。

 このような現状を改善するために,本書では〈書けない子を書けるようにする〉ために,「書く力の基本を定着させる授業」はどのようにすればよいのかという方針で編集した。

 2 書く力の指導の機会

 最近,国語力及び読解力向上に関する海外視察の機会を続けて得た。2005年のフィンランド,イギリスに加え,2007年にはアメリカで視察を行った。いずれも,OECDのPISAの結果を受けて,各国がどのような取組を行っているのか,教育課程の事情を視察するものであった。2000年・2003年ともに世界トップになったフィンランドでは,1994年及び2004年に行った学習指導要領の改訂の趣旨や,国全体における教育課程の内容や方法,小・中学校における授業展開の実際を学ぶことができた。イギリスやアメリカでは,それぞれの国の事情を抱えながら,学力保障を高めるために多くの具体的な取組を行っている。その多様な教育課程や,それらに基づく学校での指導の実態を調査することができた。

 これらの国々が私に与えた印象深い示唆は,現実社会において,各個人がいかにたっぷりと書く機会をもつかということであった。また同時に,それは同じようにいかに十分な読書をすべきかということでもある。当然,読書後は,各個人が自分の考えを明確に書き上げることも忘れない。読解力で世界一位になったフィンランドでは,「我が国は,読解リテラシーで世界一位になったが,各教科で書くことを重視していることが重要なのです」と,訪問する先々で書く力の重要性を強調していたのが印象的であった。

(写真省略)

 例えば,左の写真は,フィンランドの小学校の廊下に貼り付けられた読書カードである。作品の紹介とともに感想や評価が書き込まれているのが分かる。小学校1年生から感想や評価をさせる習慣を付けるようにしているのである。

 書くから読解力が高まる。至極当然のことである。そもそも,読解力は,自分の考えを書くことやそれを人に発表することを含んでいるのである。書かなければ何を解釈できたか確かめることもできない。また,目的に応じて活用することも不十分となり,その結果,読解力は高まらないだろう。

 実は,「読むために書く」ことと同様に,「話す・聞くために書く」ことが必要だ。課題設定や取材,さらにスピーチ原稿へと書くことによって高度な発表や話合いが成立するのである。結局,「書くために書く」を加えれば,書く力を高めるためには,各領域において,しかも,日常的に書き続ける機会をもつことが最も重要だということが分かるのである。

 なお,領域を越え〈日常的に書く〉ために注意することがある。それは,それぞれの領域に有効な能力だけを指導しようとするのでは不十分だということである。それでは,際限なく書く機会を多くしなければならなくなり,いくら時間を確保してもきりがない。しかも,単元ごとに領域を交替させながら指導するので能力が定着しない。一つの単元がいくら丁寧であっても,反復して習得する機会が当分先になるのでは定着しない。各領域に共通する書く力の基本の能力を強くイメージしなければならない。例えば,観察報告文を書くことが,観察や体験の報告を発表する話す力となり,観察報告文を読む力につながるのである。

 さらには,学校生活における日常的な書く機会の確保のためにも,各教科等でも有効なものでなければならないだろう。国語科での観察報告文は,理科にも役立つものでなければならない。

 3 書く力の基本

 では,日常的に何を書けばよいのだろうか。書けない子が書けるようになるには,書くことの基本として何を取り上げればよいのか。その解答が,本書の目次構成からも感じ取っていただけるだろう。

  第T章 相手や目的に応じて考えよう

   1 特定の人に伝えるために書く

   2 記事にするために書く

   3 自分のために書く

  第U章 取材を生かして書こう

   1 問いかけから書く

   2 文献(本)を読んで書く

   3 体験して書く

   4 インタビューして書く

   5 デジタル資料を活用して書く

  第V章 効果を考えて組み立てよう

   1 段落をつないで書く

   2 主張を貫いて書く

   3 構成を変えて書く

  第W章 分かりやすくしよう

   1 引用して書く

   2 例を挙げて書く

   3 問いに応じて書く

   4 時間に合わせて書く

   5 空間に合わせて書く

   6 ガイドしながら書く

  第X章 伝わりやすいように整えよう

   1 文を見直そう

   2 的確に言葉を使おう

   3 コラム:句読点の打ち方を考える

 これらは,実際の生活や社会で必要なものである。すなわち,本書は,基本となる表現様式を確定し,その表現過程に応じた能力を確実に育成することに重点を置いて構成している。

  (1) 目的や相手に応じて書くべき内容を決定づける表現様式のテキストの意識化を図る。

     手紙,紹介文,説明文,体験報告文,新聞記事,エッセイ,評論文,など様々な表現様式を取り上げている。

  (2) それぞれの表現様式に応じて書く過程に応じた基礎的な能力を取り立てる。

     特定の目的や相手に応じる力,文献を読んだり体験したりインタビューしたりする取材力,段落の相互関係や主張を一貫して書く文章構成力,引用したり事例を挙げたり時間の順序に合わせたりする記述力,文型を整えたり句読点の使い方を工夫する表記力,などの基礎を確実に定着させる。

     このように,取り上げるべき内容と書く過程に必要な基本が見えてくるように本書を構想した。これらを教育課程に位置づけ,自覚的で日常的な指導を行うことによって書く力を確実に定着させることができるのである。授業実践については,対象児童,教材,単元観,ワークシートを含めた授業過程など,丁寧な解説を付け,授業のイメージがよく分かるように工夫した。


 本書は,「関東国語教育カンファランス」の会員とともに行った共同研究の成果である。文部科学省教科調査官として就任し,生活の変化にとまどい,寂しく厳しい東京暮らしを始めた頃,既に他の地域で主宰してきた「国語教育カンファランス」の趣旨に賛同し,「関東国語教育カンファランス」を発足させてくれた会員。共に実践や研究に励み,支えてくれた人たちが本書の執筆者である。実践と執筆に不慣れなことがあっても,研究会で学ぶことが日常の子どもたちの喜びにつながる実感を大切にし,頑張ってくれた人たちである。研究会員とともに,刊行を喜びたい。本書が活用され,子どもたちに書く力の基本が確実に定着することを願ってやまない。書けないことが苦手だったり,上手に書けずに苦しむことがなくなることをひたすら願うばかりである。

 最後になったが,本書刊行に当たっては,明治図書の石塚嘉典氏,松本幸子氏にお世話になった。表現は簡潔だが,深い謝意とともにここに記しておきたい。


  2007年7月

著者紹介

井上 一郎(いのうえ いちろう)著書を検索»

 文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育政策研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官・学力調査官。国語教育学者。随筆家(ペンネーム・高橋信一)。奈良教育大学助教授・神戸大学教授を経て,2001年4月から現職。現在は,自主学習力・自己表現力の育成を基軸に教科を貫く総合的な視野に立った言語能力の体系化・系統化を目指す。各種の作文・読書感想文コンクールの審査委員を務める。研究会「国語教育カンファランス」や自主的な公開セミナーを各地で主宰。文学や絵画の原風景の探訪や視察調査のために,イギリス・フランス・イタリア・ドイツ・スイス・オーストリア・オランダ・ベルギー・スペイン・フィンランド・カナダ・アメリカ・オーストラリア・ポルトガル・ニュ−ジーランドなどを歴訪。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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      明治図書
    •  本著は,子どもたちに「書く力」をつけたいと考えられている方にとっては必読書となるでしょう。井上一郎先生と関東カンファランスとの共同研究の成果は,私たち小学校教員が明日からでも学ばせていただきたいものです。
       書くことの表現過程と指導のポイントが明確に示され,実践研究としての成果が明快に報告されています。学年や表現様式に応じた実践研究は,私たちの日々の実践に役立てることができます。
       「自分のためにエッセイを書く」実践研究は,子どもたち一人一人の自己表現力を高め,さらに表現力を伸ばそうとする工夫が見られます。授業過程は勿論ですが単元の評価規準は,示唆を与えてくださる内容です。
      2007/8/28れんじ

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