著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
伝え合う力のカギは質問力にあった!
スピーチコミュニケーション教育研究所主宰村松 賢一
2011/4/8 掲載

村松 賢一むらまつ けんいち

スピーチコミュニケーション教育研究所主宰
1941年、神奈川県に生まれる。一橋大学卒業。NHKアナウンサー、お茶の水女子大学教授をへて、2003年よりスピーチコミュニケーション教育研究所を主宰。現在は、「児童・生徒のコミュニケーション能力育成」をテーマに、全国の小・中学校で「話すこと・聞くこと」の授業作りのアドバイザーを務める傍ら、日本教育大学院大学で教員養成にも携わっている。小中学校の国語教科書編集委員。NHK高校講座「国語表現T」講師。

―「質問力を意識すると国語の授業が変わる」ということですが、ズバリ、本書で提案する「質問力」とはどういう学力でしょうか。

 今、「伝え合う力」の育成が叫ばれていますが、「質問力」はその中核をなす力です。というのも、相手の言葉をよく聴いて、自分の考えと照合し、不明な点や疑問を質し合っていく中ではじめて、伝え合いが深め合いや合意形成につながるからです。

―なぜ、今、子どもの「質問力」を育てる本を出そうと思われたのでしょうか。低・中・高学年の3分冊にされたご意図も併せて教えてください。

 伝え合う力は、相手の話を「受けて返す」力がポイントです。とは言え、その形は文脈によって非常に多様で、何から教えたらよいか分からないという声を聞きます。その点、質問は本質的であって、かつ形や機能を整理しやすい。つまり、教えやすいのです。系統立ててトレーニングすれば誰でも一定の力を身に付けることができます。

―本書の中心であるワークの特長と授業での効果的な活用法を簡単にご紹介ください。

 質問を大きく、WHAT系(確かめる)、HOW系(詳細を聞き出す)、WHY系(理由を質す)と分類した上で、活動をモデル型(質問文をなぞる)、ドリル型(習得させたい質問を集中的に練習)、活動型(目的を明確にした意味あるタスク)に類型化して掛け合わせることで、バリエーションに富んだワークが開発できました。短時間で楽しんでできるのも大きな特長ですので、朝の時間等で活用してほしいですね。

―「質問力」を生かすと、子どもたちの学びはどのように変わっていくでしょうか。「質問力」を生かす際の留意点などがあれば併せて教えてください。

 学ぶ力は結局「問う」力ですから、授業で質問力を心がけることは、子どもたちの主体的に学ぶ姿勢を作る上で大変有効です。具体的には、さまざまな言語活動(読解をめぐる話し合いなど)がぐんと充実するはずです。指導者に求められるのは、多様な意見が出る(色々な人の考えを聴・訊いてみたくなる)、考え甲斐のある学習課題をいかに開発するかです。よく練られた課題は、話し合う力だけでなく思考力をも伸ばすのです。

―最後に、読者の先生方へのメッセージをお願いします。

 「ジャングルブック」の著者、キプリングは、「私は人生の全てを次の6人の友人、すなわち、What、Why、When、How、そして、Where、Whoから教わった」と言っています。目的に応じ、状況に合わせて的確に質問する力を身に付ければ、豊かな人生を送る上で大切な知識や考え方のほとんどは得られるものだというのです。全ての子どもに、これら6人の賢者に出会わせてほしいと願っています。

(構成:佐保)

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