上條プロデュース 学びのしかけをつくる!「学習ゲーム」アイデア
笑顔の絶えない「学習ゲーム」には、学びのしかけが満載! 「お笑い教師同盟」代表の上條先生がプロデュースします!
上條プロデュース「学習ゲーム」アイデア(8)
楽しくて体験的、でも学べる!―「ぼくのタイトル世界一!」
東北福祉大学准教授上條 晴夫
2013/2/15 掲載

「楽しく体験的」でも学べる!

 大学では「国語科教育」に関する講義科目を担当しています。
 学生には小学校・中学校の時に体験した「フツーの授業」ではない「オルタナティブ系」授業をできるだけ紹介するようにしています。
 オルタナティブ系の教育方法の多くは、主流・伝統的な教育とは異なる哲学に基づいて発展したものです。そうした「哲学」の異なる教育方法を学ぶことによって、学生たちの「教育観」を鍛えることになると考えるからです。(ちなみに「フツーの授業」が間違いで「オルタナティブ系」が正しい、ということではありません。)
 学習ゲームも「オルタナティブ系」の一つです。
 その学習ゲームの体験をして学生が言うことの一つ。
 「小学校で学習ゲームを体験した。その時は学習ゲームを『子どもだまし』の方法であると考えていた。しかし大学生として学習ゲームを体験してみると、楽しくて体験的なのにちゃんと学びにもなっているのに驚いた。もちろん授業目標の設定は明確にしなくちゃならないのだけれども…」。

学習ゲームアイデア「ぼくのタイトル世界一!」

 「読書へのアニマシオン」はスペインのモンセラット・サルト他が遊びをもとに開発をした読書教育の方法です。わたしは学生にその中の一つ「僕のタイトル世界一!」をよく紹介しています。教師が「正しい」と信じるものを子どもたちに伝える「読み聞かせ」「ブックトーク」などの伝統的な方法とは異なります。

  1. 黒板前に集まって読み聞かせを聞きます。(例:スイミー)
  2. もともとのタイトルよりもふさわしいと思う本のタイトルを10分間考えます。各自できるだけたくさんのタイトル候補をノートに書き出し、その中から自分のベスト1を決めます。
  3. できあがったタイトルを板書します。机列ごとのチョークリレーで、次々とタイトルを書いていきます。黒板が学習者の書いたタイトルでいっぱいになります。
  4. よいと思うタイトルに投票します。一人1票。一度目の投票で投票数の多かったものを選び出して、再度投票を行います。一等賞のタイトルを決めます。
  5. 一等となったタイトルを考えた学生にインタビューします。「なぜそのタイトルを考えついたのか」「工夫した点は何か」です。

 一見すると無駄な時間が多い「遊びっぽい」活動ですが、この活動の中で、学生たちはたくさんの「学び」に遭遇します。たとえば「黒板に次々と書かれるタイトル候補の中でどれが一番よいのだろうかと自分なりにあれこれ考える」というような学びです。

フツーの授業の「学びのしかけ」

 初め、学生たちは学習ゲームのような「楽しくて体験的」なものは「学び」にならないと考える者が多いです。それは学生の学習者としての体験を土台に「(勉強とは)厳しくて座学的」なものであるという「こだわり(哲学)」があるからのようです。
 「学習ゲーム」を身につけるにはこの哲学の見直しも必要です。
 たとえば、子どもを「黙らせ、座らせ、説明する」授業。
 こんな「フツーの授業」にも「学びのしかけ」があります。「黙らせ、座らせ」という当たり前に見える学習規律も調べてみると、学習規律を子どもたちに納得させるための試行錯誤の実践史があります。それを正当化する実践哲学の工夫もあります。
 そういう「正当化」の哲学と「学習ゲーム」はぶつかります。
 スペインまでサルトさんとそのグループの研修を受けに行ったことがあります。その研究でいまでも強く印象に残っていることは、この方法には自由が必要だという非常に強いメッセージでした。「子どもを従属者にする授業では使うな」と言っていました。
 学習ゲームの実践には過去の実践哲学の見直しも必要だと思います。

上條 晴夫かみじょう はるお

東北福祉大学准教授。小学校教師(10年)の後、jrノンフィクション作家、教育ライターを経て、現職。NPO法人「授業づくりネットワーク」理事長。お笑い教師同盟代表。専門は教育方法学・表現教育。現在は「教師教育学」「インクルーシブ教育」の質的研究に邁進中。学習ゲーム関連の主な著書に『「学習嫌い」をなくす学習ゲーム入門』『授業で使える漢字遊びベスト50』『5分間でできる学習ゲーム遊びベスト50』『目的別スグでき!学級あそびベスト100』など。

(構成:杉浦)
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