著者インタビュー
新刊書籍の内容や発刊にまつわる面白エピソード、授業に取り入れるポイントなどを、著者に直撃インタビューします。
文学の授業をデザインする「問い」を生み出す離陸準備として
玉川大学教職大学院教授松本 修
2022/4/29 掲載

松本 修まつもと おさむ

玉川大学教職大学院教授。
栃木県宇都宮市生まれ。筑波大学人間学類を卒業後、栃木県立高等学校国語科教諭として13年あまり勤務。かたわら、宇都宮大学大学院修士課程、筑波大学大学院教育学研究科研究生として学ぶ。上越教育大学国語コース、学習臨床コース、教職大学院を経て現職。文学教材の教材研究、国語科授業における相互作用の臨床的研究を基盤にした読みの交流の研究、言語活動の成立条件に関する研究を中心に行っている。

―本書は、前著である『中学校・高等学校国語科 その問いは、文学の授業をデザインする』の続編となります。前作を踏まえ、今作はどのような方針のもとで編まれたのでしょうか。

 文学の授業は、問いとその問いによる読みの交流がすべてと言っても過言ではありません。その点では前の本と変わらないのですが、取り上げる教材が限られてしまったのが残念でしたので、さまざまな作品を教材とした授業を考えるヒントになればという思いで編集しました。

―「実践編」では、中高各8つの教材について、計16の「問い」を掲載しています。これらの実践を読む上で、また、「問い」を実際の授業で活用していく上でのアドバイスがありましたらお願いいたします。

 それぞれの問いは、読みの交流を促す問いの要件に照らして検討されています。ですから、そのまま授業でやってみても良いのですが、教室は生き物ですので、学習者の状況や、これまでの学習の履歴に合わせて、柔軟に問うポイントや問い方を工夫していくことが大事だと思います。どういう問い方が目の前の学習者に響くのかは、教科担任の先生が一番良く分かっているはずです。

―「理論編」では、「問い」を作り交流するための様々な着目点が示されています。こちらは、読者の教材研究や授業デザインにどのように生かせるでしょうか。

 限られた分量ですので、そういろんなことを書けているわけではありません。しかし、問いがどのような背景をもって編み出されているのかを知ると知らないとでは大きな違いがあります。本当は、こうした理論的背景を知った上で、それぞれの先生がみずから問いを作り出していく、あるいは学習者自身が問いを作り出していくのが理想です。そうした離陸の準備となるようなものをと思って書いています。ぜひ、「私なりの問い」を生み出してほしいと思います。

―高等学校ではいよいよ、今年度4月より新教育課程がスタートしました。本書も活用しつつ、現場の先生方には、新教育課程における文学の授業づくりにどのようにアプローチしてほしいとお考えでしょうか。

 文学の後退ばかりが喧伝された感じがありますが、そんなことはないし、あってはなりません。創作の重視とも言われますが、文学の創造力は、読むことそのものにもあるのです。文学を読む楽しみは、孤独な営みのようですが、教室のような他者との交流の中で、その技能的な側面も愉楽の側面もより高まるのだと思います。教室で文学を読んだ経験がその後の人生を豊かなものにするという確信をもって楽しい授業を作ってほしいと思います。

―最後に、全国の読者の先生方に一言メッセージをお願いいたします。

 変なセミナーばかりがはやっていますが、教師の本分は地味な教材研究にあると思います。この本をきっかけにして、教材研究を深めていただきたいと思います。教育の基礎学問は、実はすべての学問です。文学にも哲学にも社会学にも自然科学にも読書の幅を広げ、「この授業は自分しかできない」という授業を作っていきましょう。

(構成:大江)
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