中学校国語科 続・その問いは、文学の授業をデザインする

中学校国語科 続・その問いは、文学の授業をデザインする

新刊

インタビュー掲載中

8つの実践教材×確かな理論で再び迫る、これからの文学授業

多様な読みに開かれ、交流を促す「問い」とは?丁寧な作品分析から問いの意図、想定される交流や解釈例、問いを組み合わせた単元デザインまで、確かな理論でこれからの文学授業に迫る。第2弾となる本書では中学校8教材・16の「問い」による授業を新たに提案する。


紙版価格: 2,156円(税込)

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ISBN:
978-4-18-362229-7
ジャンル:
国語
刊行:
対象:
中学校
仕様:
B5判 128頁
状態:
在庫あり
出荷:
2022年5月18日
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目次

もくじの詳細表示

はじめに
凡例
第1章 実践編 中学校文学教材の「問い」と学習デザイン
教材1 「少年の日の思い出」(1年)
【問い1】「僕」が「ちょうを一つ一つ取り出し,指で粉々に押しつぶしてしまった。」のはなぜですか。またそれは,誰を語り手として読むとそう読めるのでしょうか。
【問い2】回想シーンで話が終わることについて,あなたはどう思いますか。また,回想部分は誰の声で語っているように聞こえますか。
教材2 「トロッコ」(1年)
【問い1】「竹藪の側を駈け抜けると,夕焼けのした日金山の空も,もう火照りが消えかかっていた。」は誰の声で聞こえますか。
【問い2】なぜ語り手は,大人の「良平」を語ろうと思ったのでしょうか。
教材3 「シンシュン」(1年)
【問い1】「気づいていたんだ。」という語りは,誰の声で聞こえますか。それはどうしてですか。作品の中の言葉を根拠に考えましょう。
【問い2】「シンタはまっすぐ僕を見た。僕もシンタをまっすぐに見た。僕たちはそっくりだった。」とあります。なぜ,語り手は終末部でも「そっくり」と語ったのでしょうか。
教材4 「盆土産」(2年)
【問い1】語り手が「そんなことを考えているうちに,なんとなく墓を上目でしか見られなくなった。」と語ったのはなぜでしょうか。
【問い2】「うっかり,「えんびフライ。」と言ってしまった。」とありますが,少年にとって「えんびフライ」とはどのような存在でしょうか。本文を根拠に説明しましょう。
教材5 「月夜の浜辺」(1・2年)
【問い1】「ボタン」は何を象徴しているでしょうか。またタイトルが「月夜の浜辺」になっているのはなぜだと思いますか。
【問い2】「どうしてそれが,捨てられようか?」は誰のいつの時点の声に聞こえますか。またこの言葉から読み取れる詩に込められたメッセージを考えましょう。
教材6 「枕草子」(2年)
【問い1】清少納言の季節感は当時の典型的な季節感と同じでしょうか。
【問い2】清少納言の表現にはどのような特徴があるでしょうか。
教材7 「握手」(3年)
【問い1】ルロイ修道士の人物像がわかる叙述として最も重要なものを選びましょう。また,その理由を説明しましょう。
【問い2】質問に答えたルロイ修道士に対して,「わかりましたと答える代わりに」と,「わたし」が指言葉や握手によって答えたことにはどのような意味があるでしょうか。また,これに対してルロイ修道士が「顔をしかめてみせた」ことには,どのような意味があるでしょうか。
教材8 「おくのほそ道」(3年)
【問い1】「草の戸『も』住替る代ぞひなの家」とありますが,草の戸だけでなく,他に何が「住替る」のでしょうか。
【問い2】「五月雨」はなぜ「光堂」に降り残したのでしょうか。
Column 小中高に共通する教材と問い
第2章 理論編 中学校文学の授業づくりのこれから
1節 新学習指導要領のもとでの文学教材の位置
1 新学習指導要領における読むこと
2 「内容」における「学習過程」をどう捉えるか
3 見方・考え方をどう捉えるか
4 文学の学習における評価
2節 「問い」を作り交流するための着目点
1 読みの交流の成立条件
2 描出表現
3 象徴
4 空所
5 情景描写
おわりに
引用・参考文献
執筆者一覧

はじめに

 この本は,『中学校・高等学校国語科 その問いは、文学の授業をデザインする』(明治図書 2020)の続編として編まれたものです。

 前著の「はじめに」においては,告示された新しい学習指導要領の内容を受けて,文学教育の危機を訴える言説をいくつかのメディアから拾いつつ,子どもたちから「問う力」が失われつつあるのではないか,「知性的であることの楽しさ」を学ぶべきなのではないか,という問題意識を出発点にして,文学の学習デザインを考えました。しかし,「問い」の具体例を示しつつ,なぜその「問い」が学習を楽しい知的な活動として活性化させるのか,そしてそれを支える学習のための着目点を示そうという意図は,提示することのできる教材が限られてしまったため,十分には果たせなかった憾みがあります。

 この本では,「実践編」で,8つの文学教材を取り上げ,改めて読みを深めるための「問い」を軸に,多様な読みに開かれ,交流を促す学習デザインを提示することにします。そして,「理論編」で,そのような「問い」を導くための考え方やヒントを示すことにします。

 さて,学習指導要領が更新されると,教育界では次の話題は「評価」ということになります。そして,評価を巡っても様々な議論が行われてきました。しかし,国語教育の世界では,もっぱら「評価のやり方」が問題にされ,新しい学習指導要領が提示する「資質・能力」に対応するような力が具体的にどのようなものであり,評価はどうあるべきなのかという本質的な問いを避けて通るような「説明」がなされてきました。例えば,次のように評価規準がたてられると言うのです。中学校1年で言えば,たぶん,次のような形になります。

 ・心情を表す語句の量を増すとともに,読んだことを表現しつつ語感を磨き語彙を豊かにしている。(知識・技能ウ)

 ・場面の展開や登場人物の相互関係,心情の変化などについて,描写を基に捉えている。(思考・判断・表現 構造と内容の把握イ)

 ・場面と場面,場面と描写などを結び付けて,内容を解釈している。(精査・解釈ウ)

 ・文章の構成や展開,表現の効果について,根拠を明確にして考えている。(精査・解釈エ)

 ・文章を読んで理解したことに基づいて,自分の考えを確かなものとしている。(考えの形成,共有オ)

 いずれも学習指導要領の「内容」の一部の「〜すること」という文末を「〜している」に置き換えただけのものです。このような評価規準で評価をしようとすると,それぞれの項目に対応するような必然性のない学習課題が作られ,生徒は手順を追って,作業をこなしていくようなことになってしまいます。学習は手順に従う作業ではありません。

 実際の教室では,授業者が教材の特質を見極め,それぞれの教材に応じた学習目標・評価規準をたて,それに向かって有効に働く学習活動・言語活動をデザインするはずです。学習指導要領の「内容」などは大雑把過ぎて,具体的な言語活動に結び付くような目標・規準のヒントにはなりません。やはり国語科の学習指導要領では明示されることのなかった「言葉による見方・考え方」を教材に即して考えてみるというところから出発した方がいいかもしれません。

 学習指導要領の前提となった2016年12月の中央教育審議会答申においても,言語の機能に即して国語科特有の見方・考え方が把握できるということが示唆されていました。


 事物,経験,思い,考え等を言葉で理解したり表現したりする際には,対象と言葉,言葉と言葉の関係を,創造的・論理的思考,感性・情緒,他者とのコミュニケーションの側面から,言葉の意味,働き,使い方等に着目して捉え,その関係性を問い直して意味付けるといったことが行われており,そのことを通して,自分の思いや考えを形成し深めることが,国語科における重要な学びであると考えられる。


 文学領域では,「創造的思考(感性・情緒−物語的)」「創造的思考(感性・情緒−詩的)」という言語の機能に着目して,「この教材における言葉による見方・考え方」を見極め,それに対応する「資質・能力」を考え,そこから「学習すべき内容」を具体化しながら「問い」や言語活動を考えるべきなのです。これは,一見大変な作業に見えますが,実は,これを問い,交流すれば楽しい知的な活動になるだろうということを考えれば,自然にそうなるはずです。

 村上春樹は『村上さんのところ』(新潮文庫 2018 p.570)の「詩と小説の違い」についての質問への回答で,詩の根本原理を,「短いストレッチの中で行われる心の転換(風景の捻転)」だと述べています。この「風景の捻転」こそ,例えば三好達治の「土」に見ることができる「見方・考え方」です。地べたを動く蝶の羽が大海原のヨットへと捻転する瞬間がそこにあるのです。そこでの「問い」は,「土」という題名を伏せてそれを問うものであったり,「ヨットのやうだ」の「ヨット」を伏せてそれを問うものであったり,その2つの組み合わせであったりするでしょう。

 前著でも引いた内田樹の言葉をもう一度噛みしめたいと思います。(『すばる』第41巻7号,集英社)


 「テクストから引き出し得る愉悦の量を最大化できる能力」のことを「読解力」と言うべきじゃないかと思うんです。


 私たちも楽しみながら,学習者にとって愉しい文学の学習をデザインしていきましょう。


  令和4年2月   /松本 修

著者紹介

松本 修(まつもと おさむ)著書を検索»

玉川大学教職大学院教授。

栃木県宇都宮市生まれ。筑波大学人間学類を卒業後,栃木県立高等学校国語科教諭として13年あまり勤務。かたわら,宇都宮大学大学院修士課程,筑波大学大学院教育学研究科研究生として学ぶ。上越教育大学国語コース,学習臨床コース,教職大学院を経て現職。文学教材の教材研究,国語科授業における相互作用の臨床的研究を基盤にした読みの交流の研究,言語活動の成立条件に関する研究を中心に行っている。

佐藤 多佳子(さとう たかこ)著書を検索»

上越教育大学大学院教授。

新潟県見附市生まれ。新潟県公立小学校教諭として20年勤務。その間に,上越教育大学教職大学院,兵庫教育大学大学院博士課程(連合大学院)修了。言語活動を中核とした国語科学習デザインの実践研究を中心に行っている。

桃原 千英子(とうばる ちえこ)著書を検索»

沖縄国際大学准教授。

沖縄県那覇市生まれ。沖縄県公立中学校教諭として16年あまり勤務。かたわら,上越教育大学大学院学習臨床コースを修了。離島僻地校や中高一貫校勤務を経て現職。学習者の相互交流による作文教育や,読みの交流学習の研究を中心に行っている。

※この情報は、本書が刊行された当時の奥付の記載内容に基づいて作成されています。
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